あらゆるスキャンダルやセンセーショナルな事件を、社会の陰に隠れて解決してきたフィクサー、“フクロウ”こと⼤神⿓太郎。彼は、⼤神家と親交の深かった次期総理候補の息⼦が謎の死を遂げたことをきっかけに、政界に潜む巨悪の正体に近づいていくが…。
-大神龍太郎の重厚な存在感に圧倒される第1話から物語にグッと引き込まれます。田中さんの初主演作ということですが、出演の経緯を教えてください。
ディズニープラスさんがサービスを開始するに当たり、大人のお客さんが楽しめる、普段、映画ではあまり扱わないような社会派の作品を探していたんだそうです。
-演じる大神龍太郎という人物について教えてください。
世間には一切姿を見せず、その存在を知るのは社会を動かすごく一部の人間だけ。“フクロウ”と呼ばれる大神龍太郎は、そういう世界にいて、世の中を陰で操ってきたフィクサーです。一般的には「悪人」と呼ばれるような人物かもしれません。でもその裏には、「日本という国はこうあるべきだ」というある種の正義感のようなものがある。その点は、僕も共感するところがあったので、違和感なく演じられました。その一方で、彼が生きる上流社会は、僕とは無縁の世界なので、振る舞いなどにはやや苦労しました。
-龍太郎はフィクサーとして暗躍するだけでなく、妻・杏⼦(萬⽥久⼦)、⻑男・⼀郎(安藤政信)、次男・龍(新田真剣佑)、⻑⼥・影⼭⼸⼦(⻑⾕川京⼦)、次⼥・理沙⼦(中⽥⻘渚)らがそろう家族の中で、父親としての一面も描かれていますね。
龍太郎は周囲を恐れさせるフィクサーでありながら、その反面、父親としては意外なほど普通の男です。ただ、彼はこれまで、自分の子どもの事はあまり考えてこなかったんでしょうね。娘の理沙⼦と久しぶりに喫茶店で話をしようと思っても、何を話せばいいのかわからない、といった場面もありますし。そこに龍太郎自身も焦りを感じて、プレゼントを贈ろうと、デパートへ行ってみるんだけど、今度は店員とどう話をすればいいのかわからない。そんな龍太郎のように、子どもとの関係に悩む親は世の中に多いと思います。
-その中で、次男の龍だけは龍太郎に反発し、父親と対照的な人生を歩もうとします。龍を演じる新田さんの印象は?
僕も海外でいろんな経験をしてきましたが、彼も俳優になるまでは、世界中を旅した経験を持つ青年なので、その懐の広さは通じ合う部分があるような気がします。正義感を持って社会と向き合う龍という役も、彼にぴったりではないでしょうか。
-演出に『宇宙兄弟』(12)の森義隆監督、『月』(23)の⽯井裕也監督、『Winny』(23)の松本優作監督という3名がそろった豪華な布陣も注目のポイントです。
日本映画界の第一線で活躍される皆さんが、よく引き受けてくれたと思います。
-完成した作品は世界配信されますが、どんな期待を持っていますか。
世界配信というお話には驚きました。
-というと?
実は脚本を書いたのは、日本人ではなく、エグゼクティブ・プロデューサーを務めるデビッド・シンという外国の方です。でも、日本でのビジネス経験があり、日本を心から愛する彼が書いた脚本は、まるで日本人が書いたのではないかと思うほど、違和感のない出来栄え。それどころか、日本人が気付かなかった、あるいは見過ごしてきたことを指摘するような視点の鋭さもある。特に、政治家の扱いはかなり辛辣(しんらつ)で、「こんな政治家いるな」と思わされます。最近のおかしな日本の政治に対する僕自身の憤りに通じる部分も多かったので、納得感もあり、躊躇(ちゅうちょ)なく演じることができました。
-それでは最後に、本作にかける意気込みをお聞かせください。
今回、全10話のドラマということで、今までにないほど長い間、大神龍太郎について考える時間があり、僕にとって新鮮な体験でした。とはいえ、まだまだ彼に対する興味は尽きず、さらに掘り下げてみたい人物です。また、龍太郎だけでなく、彼の家族にもさまざまなドラマが待ち受けているはずなので、ぜひシーズン2,3と続けていければと思っています。皆さんにも楽しんでいただけたら幸いです。
(取材・文・写真/井上健一)
『フクロウと呼ばれた男』
配信:ディズニープラス「スター」で 独占配信中
出演:田中泯 新田真剣佑
安藤政信 ⻑谷川京子 中田⻘渚 / 萬田久子
二階堂智 ハイディ・バーガー 池田良 結城貴史 柳英里紗 あこ
大坊健太 尚玄 淵上泰史 忍成修吾 土屋キュウ 久藤今日子 浦浜アリサ 大⻄信満
野村祐人 片山萌美 川瀬陽太 吉澤健 / 中野英雄 / 木村多江 / ⻑塚京三
エグゼクティブ・プロデューサー&脚本:デビッド・シン
演出:森義隆、石井裕也、松本優作