6月13日から公開となった『きさらぎ駅 Re:』は、2022年にスマッシュヒットを飛ばした『きさらぎ駅』待望の新作続編だ。前作『きさらぎ駅』は、2004年1月8日、“はすみ”と名乗る女性がこの世に存在しない“きさらぎ駅”という異世界駅にたどり着いたという人気のネットミームを基にしたホラー。
本作では、一度は脱出したはずの“きさらぎ駅”に再び足を踏み入れた宮崎明日香(本田望結)が、前作で取り残された堤春奈と共に“きさらぎ駅”からの脱出に挑む。前作に続いて堤春奈を演じるのは、「今際の国のアリス(シーズン2)」や「ガンニバル(シーズン2)」などの話題作で活躍する恒松祐里。公開を前に、作品の舞台裏や本作の現場を経て増したクリエーティブに対する意欲などを語ってくれた。
-前作『きさらぎ駅』から3年ぶりの続編となりましたが、製作が決まったときのお気持ちはいかがでしたか。
マネジャーさんから「続編をやるそうです」と聞いたときは、うれしかったのと同時に、思わず「えっ!?」と声が出るくらい驚きました。実は前作のとき、みんなと冗談半分で「続編もできるよね」と話していたんです。でも、本当に実現するとは思っていなくて。ただ、個人的にも大好きな作品だったので、多くの方にご覧いただいたおかげで新作続編が決まったことは、本当にうれしかったです。しかも、台本を読んでみたら、「永江(二朗)監督は、ここまで完成度を高めるために、何度書き直したんだろう?」と思うくらい面白くて。「早く完成した映画を見たい!」という気持ちで、現場に臨みました。
-正統派のホラー映画だった前作から趣を変え、今回はクリアするまで終わらないゲームのような物語になりました。演じる上で難しさはありましたか。
私はゲームが大好きなので、「絶対面白くなる!」という確信がありましたが、撮影は想像以上に大変でした。同じロケ地で少しずつ異なるお芝居を何通りもする必要があったり、足場の悪い線路で、ケガに気を付けながら一日中撮影したり…。その上、撮影を秋に行った前作と違い、今回は夏だったので、ヒルにも悩まされて。みんな薄着だったため、ヒルに血を吸われて衣装が汚れると画がつながらなくなってしまうので、ヒルを追い払うのも一苦労でした(苦笑)。
-似たシチュエーションで少しずつ異なるお芝居をするに当たって、どのようなことを心掛けましたか。
ロケ地は同じでも、少しずつ異なる場面が多かったので、事前に台本に「ここはこうしよう」などとメモをして、頭の中で整理してから撮影に臨みました。現場では、そのメモを基に監督と「何周目なので、ここはこうした方が…」と相談しながら進めました。例えば、明日香と春奈が一緒に怪物を倒した後のハイタッチや、運転初心者だった明日香が、自動車を何度も運転するうちに上達した結果、助手席の春奈が安心しきって寝てしまうのも、望結ちゃんと相談した上で監督に提案し、採用いただいたものです。
-俳優は基本的に役を演じることが仕事ですが、今回はそういう枠を超え、クリエーティブな面白さも味わえた感じでしょうか。
とてもクリエーティブな現場で、楽しかったです。カメラマンの方や録音部の方なども含め、スタッフ、キャストが一丸となってアイデアを出し合い、作っていきましたから。スタッフの方々が前作とほぼ同じだったおかげで、チームワークもよく、アットホームな現場でしたし。
-恒松さんはXなどSNSの発信も積極的にされていて、クリエーティブへの関心は高そうですね。
コメディーに出演する場合など、現場で「これをやってみよう」と、あれこれ試してみることは大好きです。元々私はものづくりが好きで、時間がある時は、プライベートでもいろんなものを作っているんです。最近は、編み物や陶芸にハマっていますが、そんなふうに「何を作ろう?」と考えて実行する時間が好きなので、クリエーティブなことには昔から関心がある方だと思います。
-SNSでの発信にはどんな思いがありますか。
俳優業だけでは、私自身を皆さんに知っていただく機会が少ないので、SNSでは自分の好きなことを発信していこうと思い、“可愛いものアルバム”を作るような感覚で楽しんでいます。ご覧になった方から「一緒にお仕事しませんか?」とお声掛けいただくこともあるので、いろんな可能性を広げたいという思いもあって。といっても、仕事というよりは、好きなことをしている感覚の方が強いです。
-実際にSNSがきっかけでお仕事につながったこともあるのでしょうか。
以前はInstagramもやっていませんでしたし、SNSでの発信にはそれほど積極的ではありませんでした。
-将来的には俳優業にとどまらず、より幅広くクリエーティブなことに挑戦してみたいという思いもお持ちでしょうか。
いつか自分のブランドを立ち上げて、雑貨の販売やプロデュースをするのが夢です。
-そういうクリエーティブなことへの意識がさらに増した現場だったということですね。それでは最後に、本作の公開を待つお客さんへのお言葉をお願いします。
前作を気に入ってくださった方だけでなく、怖いものが苦手な方にも十分楽しんでいただける作品になったと思います。前作では春奈が1人で無双ぶりを発揮していましたが、今回はさらに強くなった春奈が、明日香とバディを組み、“きさらぎ駅”からの脱出に挑みます。大好きなアクションも前作以上に満載で、望結ちゃんと息を合わせるアクションシーンも、すごく気持ちよくできました。ぜひ楽しみにしていてください。
(取材・文・写真/井上健一)