【さらに写真を見る】the HIATUS、結成10周年の一夜限りのスペシャルライブを開催
ザ・ハイエイタスの10周年記念、初の東京国際フォーラム公演。今までやってきたこと、手にしてきたものすべてを網羅するセットリストの中、後半はチェリストの徳澤青弦が招かれる。

今さらだが、それは圧倒的な名曲だった。竜巻のように舞い上がり、天から降り注いでくるようなメロディ。この曲に関してはロック云々をさておき、珠玉のバラード、と言い切っていいだろう。柔らかな生楽器の音が、細美の生声の強さを凛と引き立てている。そしてふと思う。なぜこの人はソロ・アーティストの道を選ばなかったのだろう。エルレガーデンの活動休止から一年、2009年にスタートしたハイエイタスは、最初からバンドを名乗っていたわけではない。細美がいちシンガーとしての作業に集中したければ、その道も十分にあり得たはずだ。
ファーストの一曲目「Ghost In The Rain」から始まったライヴ。二曲目もファーストから「The Flare」、次がセカンドの一曲目「The Ivy」なのだから、10周年総括のテーマははっきりと伝わってくる。

4、5曲目に新曲「Hunger」と「Servant」。ハンドマイクで歌う細美の表情は柔らかくなり、masasucks、ウエノコウジもふっと笑顔を見せる。ライト、と書くのは違うけれど、最新作『Our Secret Spot』の楽曲にあるのは確かな平穏だ。激しく火花を散らさなくても、すでに消えない灯火があるというムード。互いにぶつかりあうアレンジがなく、空間の心地よさが最優先されている。
観客の包容力もバンドを後押ししたはずだ。軽やかなアコギから始まりつつ、後半からポストロックの迷宮に入っていく「Deerhounds」、伊澤一葉の指使いに見惚れてしまう究極のマスロック・ナンバー「Bonfire」。中盤の楽曲はどれも一筋縄ではいかないが、置いてきぼりになることはない。むしろ5000人の観客が終始笑顔を浮かべ、ときには手拍子で一体感を作っているのが印象的だった。特定のジャンルに収まらないものでOK、常に進化していくこのアンサンブルが好きだ。そんなふうにバンドをまるごと受け入れているよう。そのあと「スペシャルゲスト……いや、現ハイエイタス」という触れ込みで一瀬正和が登場し、柏倉隆史とのツインドラムで久々の「Antibiotic」が披露されたのも見せ場のひとつ。常にフレキシブルに変われるスタイルは、いまやハイエイタスの武器なのだ。

一瀬と共に柏倉、ウエノ、masasucksが退出。ここからが冒頭に書いた徳澤青弦とのセッションだ。最初に凄まじい歌唱力を見せつけた細美は、次にメンバーを呼び戻し、ストリングス導入バージョンで数曲を披露。

バンドを求めていたのは細美ひとりではない。「ハイエイタスは僕の大事な居場所になりました」と柏倉が語り、「ここにいたら間違いないな、曲がっていかないなと思う」と伊澤が素直に告白。
(文:石井恵梨子)
the HIATUS 10th Anniversary Show at Tokyo International Forum
2019/10/01(火) 18:00 Open/19:00 Start
東京国際フォーラム ホールA
01.Ghost In the Rain
02.The Flare
03.The Ivy
04.Hunger
05.Servant
06.Thirst
07.Unhurt
08.Deerhounds
09.Horse Riding
10.Bonfire
11.Time is Running Out
12.西門の昧爽
13.Antibiotic
14.Waiting for the sun
15.Little Odyssey
16.Tree Rings
17.Regrets
18.Insomnia
19.Storm Racers
20.Lone Train Running
21.紺碧の夜に
~ENC~
22.Twisted Maple Trees
23.Firefly / Life In Technicolor
~WENC~
24.Moonlight