中島翔哉のポルト入団のニュースは、ポルトガルにおいてもとても大きく扱われた。ポルトガル三大クラブであるポルト、ベンフィカ、スポルティングのうち、ポルトとベンフィカが獲得にあたり激しく競争したということからも、中島がポルトガルにおいてとても高く評価されていたことがわかる。



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ポルトガル現地で高い評価を受けている中島翔哉 photo by AFLO

 いずれの選手もおそらく、ポルトガルの中小クラブでの成功を足がかりにして、ビッグクラブへの移籍を目指すような意図を持っていたのではないか。しかし中島の前の3人の中では金崎夢生と亀倉龍輝の2選手のみが、レギュラーとして登録されプレーするのを許された。

※注)昨シーズンは、長島滉大と権田修一がプレー。来季は安西幸輝が加入する。

 しかもこの2選手が加わった2013-14年シーズン、ポルティモネンセは2部に所属するクラブだった。金崎はブンデスリーガのニュルンベルクからやってきて38試合に出場。
亀倉はブラジル人代理人のテオ氏を父親に持つ選手で、これまで86試合に出場している。

 このような前例があったので、中島翔哉がポルティモネンセにやってくると発表された時も、『また日本人選手が夢を追いかけるためにやってきたのだろう』といった程度にしか受け止められず、ほとんどのメディアも彼がポルトガルの1部チームにおいて活躍するとは予想していなかった。

 ところが中島はチームに加わってすぐにメディアを黙らせる大活躍をやってのけたのだ。3試合目の出場となるフェイレンセ戦、中島の2ゴールで、ポルティモネンセは2-1で勝利。さらに翌週、ポルトの本拠地ドラゴン・スタジアムで行なわれたポルト戦は2-5で敗れたものの、中島がまたしても2ゴールを決めている。この時点で、中島はメディアから「シーズン最大の注目選手のひとり」に挙げられた。

 中島はわずか数カ月間で、それまで田中順也が持っていたポルトガルリーグ日本人最多得点記録を破った。田中順也は2014-15年シーズンから1年半、スポルティングでプレーして、35試合に出場して7得点を決めている。

 ポルティモネンセ1年目にすばらしい活躍を見せた中島翔哉には、当然ながら多数のオファーが寄せられた。クラブはなんとかそれらのオファーを断り、中島を留まらせることができた。

 2シーズン目、中島はさらに大きなことをやってのけた。

 2018年10月、ポルティモネンセは強豪スポルティングを相手に4-2で勝利するが、そのうちの2得点が中島によるものだった。

このことはポルトガルでは大ニュースとなり、『ショウヤ・ナカジマはスポルティングのジョゼ・ペゼイロ監督の死刑執行人のひとりとなった』とまで表現された。実際、その翌月、ジョゼ・ペゼイロ監督は解任されている。

 さらにその数カ月後、再びナカジマの名が新聞紙面トップに踊ることになる。ポルティモネンセが何とベンフィカを相手に2-0で勝利するというサプライズを起こしたからだ。中島は得点を決めてはいないものの、2点目に決定的な役割を果たしたことで、高い評価を受けた。翌日、ベンフィカのルイ・ヴィトリア監督は更迭されている。


 興味深いことに、この試合が中島にとってポルティモネンセ最後の試合となる。2019年2月中島はカタールのアル・ドゥハイルに移籍するが、それに関しては、同クラブ監督である、ジョゼ・モウリーニョの元アシスタントであった、ルイ・ファリア監督の強い要望があったとされる。

 しかしまもなく、カタールリーグのレベルの低さなどを不満に感じていた中島のもとに、ポルトガルリーグからのオファーが届く。しかも、今回のオファーはポルトとベンフィカというビッグクラブからのものだった。

 2019年7月5日、ポルトの入団が発表された。その入団会見の席上、ピント・ダ・コスタ会長は次のように話している。


「中島を奪おうとしていたワシ(ベンフィカの愛称)の存在があった。しかし中島自身のここでやりたいという気持ちが、最終的に決定する要因となった」

 中島自身はポルトファンに対して次のようなメッセージを送った。

「セルジオ・コンセイソン監督が仕事に対してとても要求が高いことは知っている。攻撃のコーディネーションにおいて僕は全力を尽くして、ポルトのファンに喜びを与えられるよう、トロフィーの獲得に努めるつもりです」

 これまでのポルトの攻撃陣において、左ウィングとして最も重要な役割を担ってきたヤシン・ブラヒミが抜け、同ポジションを担う中島に対しては、当然ながら、ファンも大きな期待を寄せることになるし、またビッグクラブである以上、ファンの要求も必然的に高くなる。

 中島がポルティモネンセに所属していた2017-18シーズンの監督だったヴィトール・オリヴェイラは次のように話している。

「彼はとても野心を持った選手だ。

いかなる挑戦も恐れていない。したがってプレッシャーにも必ず打ち勝つはずだ。ショウヤと共にやれたことを私はとても喜んでいる。ショウヤは高い資質を持った選手であり、しかもとても練習熱心であり、適応能力も高かった。ディフェンダーとの1対1にも強い。両足で簡単にシュートを打てる。その武器を持って、ショウヤはポルトでも必ず成功を収めることができるはずだ」

 7月10日、ポルトは2部に所属するヴァルジンと練習試合を行ない、4-0でポルトが勝利するが、中島は45分間プレーし2点目を決めている。

 この試合において中島は左ウィングとしてプレーするが、ワントップのチキーニョ・ソアーレスのセカンドトップとしても試されている。中島の役割として期待されているのは、まさにブラヒミが左ウィングでやっていたことであり、中島としてもこのポジションを得意としている。

またセルジオ・コンセイソン監督の戦術において、時々相手チームによっては4-4-2を使うものの、4-3-3を基調としていることも中島にとっては好都合であるといえる。

 資質の高い中島のような選手はどこのチームにおいても主役を担えるだろうし、ビッグクラブであるポルトとはいえその例外ではないはずだ。