専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第247回

 プロゴルファーになったはいいが、なかなか食べていけない選手がたくさんいます。一方で、一時期のタイガー・ウッズのように、CMなどのスポンサー契約だけで、何十億円と稼ぐ選手もいます。



 今回は、プロゴルファーの収入、稼ぎについて考察してみたいと思います。ピンキリの世界をちょっと覗いてみましょう。

 男女ともに、日本のトッププロが目指すのは、賞金1億円突破の世界じゃないですか。通常、シーズンで3~4勝すると、その世界に突入すると言われています。決して簡単なことではありませんが、ほんと、とんでもない稼ぎになりますよね。

 トッププロであれば、俗に「1億円稼いだら、その2倍ぐらいは副収入がある」と言われていますから、獲得賞金1億円イコール、年収は3億円くらいになる算段です。


 プロゴルファーの世界で、歴代ナンバーワンの稼ぎを生み出したのは、なんといってもタイガー・ウッズ。全盛期、2007年~2010年までの4年間は、毎年1億ドル(約100億円)を突破していますから、アンビリーバブルです。

 日本でも、石川遼選手が大ブレイクを果たした時には、「(年収)30億円超え」という都市伝説があります。おそらくですが、それぐらいは稼いでいたんじゃないかなぁ~。

 てっぺんの話はこれぐらいにして、今度はツアーにおける各トーナメントで、予選をギリギリ通過できる選手たちのお話をしましょう。

 通常4日間のトーナメント(女子は3日間トーナメントもあり)で、2日間の予選ラウンドを突破すると、賞金がもらえます。


 最下位でも、20~40万円程度の収入があります。これは、賞金総額から順位ごとに分配されるので、試合ごとにその金額は違ってきます。

 けど、30万円前後の賞金を得ても、1週間の滞在費、交通費、人件費、食費などを考えると、むしろ赤字です。専属の帯同キャディーを雇うにしても、ギャラが発生しますからね。

 だから、予算が少ない、あるいはキャディーが誰だろうとさほど気にしない人は、トーナメントコースのハウスキャディーを連れてラウンドします。微笑ましく見えますが、そういう選手のほとんどは、マジで台所事情が苦しいのです。



 でも、トーナメントに出場して、予選を通過できる選手は、まだ恵まれているほうです。

 プロテストに受かったけど、トーナメントに出場できない、もしくは試合には出場しているけど、予選落ち続きで賞金をもらえない、というプロはたくさんいます。

 日本のプロ選手の数は、男女合わせてざっと4000人弱と言われています。そのうち、それなりに賞金を稼げるプロは、シニアを足しても200人程度。経済的に潤って、我々が羨むような、プロゴルファーらしい生活をしているのは、50人ぐらいじゃないですか。

 あとは、一時でも活躍して名を上げれば、スポンサーがついたり、営業活動やレッスンをしたり、解説者となったりして、稼げます。
けど、ほかの多くのプロは、どこぞのコースや練習場に所属しながら、素人相手に教えている――それが、現状だと思います。

 こういう厳しい世界だから、ゴルフ場で研修生をやりながら、プロ入りを目指す選手は激減しました。それは、アマチュア時代に苦労していて、プロになったら、さらに困窮するのが目に見えているからです。

 そもそも所属コースで、キャディーや運営の仕事などのバイトをしていては、腕前をアップさせる時間がありません。ゆえに、研修生ではなかなかプロになれないのです。

 今の時代は、ジュニアで活躍し、立派な施設が整った強豪ゴルフ部のある高校や大学に入学。

そこで寮生活をして、365日ゴルフ漬けの日々を送って、技量をアップさせます。そうして、そのままプロデビューしちゃえばいい、といった具合なんですな。

 つまり、将来スターになれるのは、学生時代に脚光を浴びた選手、ということ。野球やサッカーのようで、わかりやすいっちゃ、わかりやすいですけど……。ジュニア、学生時代に無名の選手がプロで活躍するのは、本当に稀なことなんです。

 こうして、早くから注目された選手でスポンサーがつきやすいのは、やはり女子選手です。
先頃、NECと所属契約した安田祐香選手(19歳)などがいい例です。

 日本女子アマチュアゴルフ選手権(2017年)で優勝。以降、アマチュアながらプロのトーナメントでも好成績を出し続け、昨年のニトリレディスでは4位という結果を残しました。そして、プロテストにも一発合格。QTでも2位通過を果たし、今季ツアー前半戦の出場権を得ました。

 そうした実績が買われ、すでに大スター扱いです。もちろん、実力的にも今季早々に活躍してもおかしくない選手であります。

 アイドル並みのルックスで、見た目は「ゴルフを知っているの? オジさんが教えてあげようか」といった雰囲気なんですが、いざボールを打つと、ものすごいショットを連発。このギャップが、オヤジたちにはたまらないんでしょうな。それで、無性に応援したくなってしまうわけです。

 結果、フィギュアスケートの浅田真央選手のことを「自分の娘のようだ」と言って応援していたオヤジ連中が、今度は安田選手のことを「自分の孫のようだ」と言って、激しくプッシュするのでありました……と。

 それはともかく、安田選手の所属契約は将来性を買われてのものですが、成績次第ではさらなるオプションがついて、億万長者になることも夢ではないです。すでに、ほかにも多数のスポンサーが名乗りを上げていますからね。いろいろなところで露出していくでしょうし、ツアーでの活躍が楽しみです。

 女子プロがちやほやされるのは世の常とわかっておりますが、反面、厳しいのは男子プロの世界です。

 誰でも知っている有名な企業がスポンサーになってくれるならバンザイですが、実際は「聞いたことがない会社のロゴを貼っている」という男子プロは結構います。

 レギュラーツアーでそこそこがんばっていると、後援会みたいな組織ができて、その中の世話好きな人が、どこぞの会社の社長にかけあって、「スポンサーになってくれ」と懇願するんですね。

 そこで、気前のいい社長がいると「よしわかった」と、ポロシャツの肩や胸などに企業名ロゴを貼ってくれます。実際の広告宣伝効果は未知数ですが、それはまあ「応援しているから、がんばれ」みたいな意味を込めたもので、社長さんがウン百万円ぐらいポンと出している、そんな感じです。

 さほど稼いでいないプロは、どの世界にもいます。野球でも、サッカーでも、それは同じじゃないですか。ラグビー選手も一気に有名になったけど、ついこの間まで、ほとんどの選手が会社に所属して、働きながらやっていたわけですから(※現在もすべての選手がプロ契約しているわけではない)。

 最後に、厳しいながらも、オイシイ話を少々。

 プロゴルファーは、1回プロになったら、よっぽどのことがない限り、ずっとプロでいられます。しかも、シニアやグランドシニアの世界まである。そこで、遅咲き選手として花開く可能性もあるのです。


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「プロ」と言っても、誰もが容易に稼げるわけではないんですよね...

 現役期間が非常に長いのが、ゴルフの特徴です。しかも、レッスン関連の仕事は結構あります。お金を取って、堂々とレッスンできるのは、ゴルフぐらいですから。

 要するに、長い人生、プロゴルファーはプロの称号によって、その肩書きでいかようにも稼げるのです。

 私の知り合いに美人女子プロゴルファーがいます。その人は一応プロですが、試合にはほとんど出ていません。でも、最近人気が出て、日本中で”営業ゴルフ”をしています。やっぱり、美人は得ですなぁ~。

 たぶん、トーナメントの下のほうにいる選手よりも稼いでいるんじゃないですか。やり方によっては、十分に仕事になるってことですね。

 ゴルフ界は今や、右肩下がりの業界になりました。みなさん、いろいろと工夫して、がんばって生き延びていきましょう!