木村和久の「新・お気楽ゴルフ」
連載◆第36回

 迎える4月、自分のホームコースとなる扶桑カントリー倶楽部(茨城県)に「行きたい」というリクエストが多く、3組を招待することになりました。だったら、その人たちを一気に集めて、ミニコンペでもやればいいじゃん――そういった意見もあります。

 でも、招待するのはそれぞれ違う友人ですから、ミニコンペだと一緒に回れない人も出てきてしまうため、親睦が深められないんですよね。

 それにしても、メンバーになる当時は、こんなにたくさんホームコースを利用することになるとは思っていませんでした。というわけで、今回はホームコースを持った有難みや、メンバーシップコースの変化について、綴っていきたいと思います。

 私が扶桑CCのメンバーになったのは、2年前。入会金と会員権を合わせて、24万円ポッキリでした(今は33万円)。

 なんでこんなに安いのか? その背景には、団塊世代のリタイヤによるメンバーの減少があるからです。

 従来、メンバーのお父さんが引退すれば、子どもに会員権を譲るのが一般的でした。それが今は、少子化で子どもの数が少なく、子どもがいてもその子がゴルフをするとは限らないですしね。

 じゃあ、会員権を売るか、となっても、大衆コースは値段が安く、手数料を引かれると、いくらにもならない。ならば、単に退会届けを出したほうがいい、となるんですね。

 昔のゴルフ倶楽部の適正メンバー数は、18ホールのコースなら正会員が1200人ほどでした。ところが、団塊世代がかなりやめてしまったので、現在はメンバーがどんどん減っています。

扶桑CCでも27ホールあるのに、正会員は1000人いませんからね。

 でも、コースは常に大入り状態。それは、インターネットを使ってのビジターの予約が多いからです。

 メンバー不足をビジターで補えれば、倶楽部としてはそれでいいだろうと思いますよね。でも実は、そう簡単に済む問題じゃないのです。

 会員を補充していかないと、ゆくゆくはメンバーシップ制度の崩壊となり、セミパブリック化、あるいはパブリックコース化する恐れがあるのです。

だから、多くの倶楽部が新たに格安の会員権を売り出したのです。

 それでは、ゴルフ倶楽部がメンバーシップ制を維持したがる理由はどこにあるのか? 考察してみたいと思います。

(1)名称と格式の問題
 メンバーシップコースとしては、やはり「カントリークラブ」「ゴルフ倶楽部」という名称を使いたいんですよね。パブリックでもカントリークラブと名乗るコースも一部ありますが、通常パブリックの場合は「○○ゴルフ場」や「○○ゴルフコース」という名前になります。そうなると、格落ち感は否めません。

 所属する組織も、メンバーコースなら「○○ゴルフ連盟」なる組織に入り、他のメンバーコースとの交流はもちろん、倶楽部対抗戦をはじめ、数々の競技に団体や個人で参加できます。

 パブリックコースでもそういう組織はありますが、やや慎ましいですかね。

 そもそもメンバーコースでは、メンバーの愛着度が違います。だって、メンバーは「ホームコース」って言うじゃないですか。自分がお金を払って買った"我が家"みたいなものなんですよ。

(2)メンバーによる運営の魅力
 倶楽部運営は、理事長を理事や委員のなかから選び、その下に各種委員会を置きます。そうして、コースのメンテナンスから、クラブ競技、レストランのメニュー選びまで、倶楽部が自主運営します。

それゆえ、何億円というお金が動きます。

 それは、マンションの管理組合と少し似ていますかね。数千万円かけた大規模な修繕工事とか、あるでしょ。その予算規模、業者の選定などを理事会で決めるわけです。

 以前、名門倶楽部のコース委員会に話を聞いたことがあるのですが、「何億円をかけて、自分たちが好きなようにコースを改造できるのはすばらしい。メンバーに対して責任がある一方で、それは非常に楽しい作業でもある」と言っていました。

 そもそもメンバーはみんな、ゴルフが趣味なわけでしょ。各委員はそれらの意見をまとめつつも、好きなようにコースを改造したり、新しいカートを導入したり、レストランで食べたいメニューを加えたりと、自分たちの社交場を変えられる。これぞ、メンバーシップ倶楽部の醍醐味じゃないでしょうか。

【木村和久連載】変化しつつあるメンバーコース 団塊世代の引退...の画像はこちら >>

(3)クラブ競技、イベントの維持
 倶楽部はメンバーの社交の場ですから、クラブチャンピオン杯や理事長杯、月例杯などのクラブ競技を実施します。こういった競技の参加者はだいたいメンバーの約1~2割ぐらいと言われているので、メンバーが極端に少ないと、競技が成立しなくなる恐れがあります。そうなると、倶楽部に活気がなくなってしまいます。

 そこで、メンバーを新たに増やし、メンバーシップコースを維持しようと、どこの倶楽部も頑張っているのです。

 一方、メンバーの競技離れの傾向があるのも事実です。昔の高度成長時代は「いつかはシングル」とメンバーは競技に参加して、シングルを目指すのが当たり前でしたが、今はそういう上昇志向のメンバーが減りつつあります。

 ですから、どの倶楽部もレギュラーティー競技や新ペリアで行なう懇親競技を増やし、メンバーたちが切磋琢磨することから、メンバー同士の親睦を深めることのほうに注力しています。

(4)メンバーの特権がなくなる!?
 メンバーは休日にふらりとコースに行っても、フリーで来ているメンバーさんとの組み合わせでラウンドができる。それが、メンバーコースの特権と言われてきました。

 それも、メンバー数の減少で、フリーで来ても組み合わせが成立しない場合があります。おかげで、「ひとりで来てもいいですが、前日に連絡してください」というコースが結構多くなっていますね。

 以前、ゴルフ会員権を買う時に、土日にひとりでコースに来場した場合、組み合わせでラウンドができるかどうか、聞いて回りました。すると、多くはその保証はできない、と。フリーのメンバーがいる時もあれば、いない時もある、とのことでした。

 もしひとりでコースに来たいなら、「提携している『ひとり予約システム』を利用してくれ」と言われたこともあります。じゃあ、メンバーでなくてもいいじゃん、ビジターのままでいいじゃん、と思ったものです。

 そういえば、以前『ひとり予約』でプレーした時、そのコースのメンバーさんが紛れていました。その人はメンバーなのに、「メンバーと回るのは苦手だ」って言っていました。あれは、おかしかったなぁ~。

 そんなわけで、メンバーが少ないと、いろいろと弊害が出てくるので、倶楽部側はなるべくメンバーが減らないように努力しているのです。

 他に、倶楽部の経営サイドがどういう努力をしているかというと、たとえば東急系のリゾートコースでは、老後の倶楽部ライフを支援するために、10年間の期間限定会員を募集しています。

 定年を過ぎてゴルフをやっても、あと10年ぐらいか。だったら、割安な10年会員でいいや――そんなリクエストに応えてのものですね。もちろん、期間限定でも正会員と同じ待遇です。

 競技には出ないし、倶楽部運営側にも行かない。そういう人たちに対して、ビジターよりも勝るサービスがあれば、「まだメンバーでいたい」って思う人もいますしね。

 今、自分がメンバーでよかったと思うのは、専用ロッカーにキャディバッグを置きっぱなしにできること。だから、宅配便を使わずに手ぶらでゴルフ場に行ける。電車派としては、ものすごく助かっています。

 今のコースが"終の棲家"になるのか? 自分でも今後どうなるか、楽しみにしています。