大坂なおみがオーストラリアンオープン(全豪オープン)準々決勝で見せた66分間のプレーは、彼女の成長を世界中に伝えるには十分すぎるほど圧巻だった――。
無観客の中で、第3シードの大坂なおみ(WTAランキング3位、2月8日づけ/以下同)は、シェイ・スーウェイ(71位、台湾)を6-2、6-2で破って2年ぶり2度目のベスト4進出を決めた。
作り上げてきた自分のテニスで順調に勝ち進んでいる大坂なおみ
大坂とシェイの対戦成績は大坂の4勝1敗だが、フルセットになるタフな試合が多い。例えば、2019年の全豪オープン3回戦で戦った時は、第1セットを5-7で落とした大坂がラケットを投げて警告を受け、第2セットも1−4と追い詰められた。だが、そこから持ち直した大坂は5ゲームを連取すると一気に逆転勝ちを収めた。
当時、大坂のツアーコーチだったアレクサンダー・バインコーチは、「大坂の精神的な成長が見られた」と誇らしげに語っていた。
また、同年3月のマイアミオープン3回戦で対戦した時は、バインコーチと離れて1カ月半ほど経ったころで、大坂のメンタルが不安定な時期だった。
2019年は、シェイが大坂を大いに苦しめたが、今回はランキングどおりの実力差を大坂が見せつける形になり、サービスエース7本を含む24本のウィナーを打ち込んだ。
今大会では時速190km台をたたき出す大坂のビッグサーブは大きな武器のひとつになっているが、昨年のオフシーズンからウィム・フィセッテコーチと取り組んでいるリターンの向上も、大坂の勝利に大きく貢献している。
準々決勝でも、大坂のリターンからのプレーがポイントになった。大坂のリターンの返球率は、第1セットでは77%(23/30)、第2セットでは 79%(19/24)、試合全体では78%で非常に高かった。
「リターンの返球率が高いことは、大切なことです。リターンを返す場所もまた大切で、私がやんわりとリターンを返してしまうと、彼女はウィナーを打ち込んできますから」
こう話す大坂は、リターンを打ち返す場所、コース、深さ、スピード、角度、ボールの回転などを、状況によって使い分け、リターンからゲームの主導権を握っていった。
「ここ数年を振り返って、なおみがベストサーバーの1人であることは、皆さんご存知のとおりで、対戦相手に大きなプレッシャーを与えてきました」
フィセッテコーチは、ビッグサーバーである大坂の強さをこう前置きしたうえで、大坂が打つリターン向上の意味を語る。
「リターンの返球数を増やすことができれば、対戦相手により多くのプレッシャーをかけることができます。それは、なおみが勝つためにとても重要な部分になります」
さらに、大坂のリターンショットが上達することによって、彼女のゲームレベルが引き上げられることをフィセッテコーチは期待している。
「リターンを向上させるにあたって、フォアハンドリターンと、通常のフォアハンドストロークは異なるショットであることを認識しなくてはいけない。バックハンドもしかりです。だから、(オフシーズンに)リターンのためのトレーニングが必要でした。もう一つ技術的にレベルアップするためには、とにかく量をこなすことです。(リターンを)繰り返し練習して、正しいリズムを身につけて、自信を得ることです。
だから私たちは、なおみと多くの時間を過ごしました。
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準決勝で大坂は、第10シードのセリーナ・ウィリアムズ(11位、アメリカ)と対戦する。2人はともに女子テニス界屈指のビッグサーバーだが、対戦成績は大坂の2勝1敗。グランドスラムでは、2018年USオープン決勝で大坂が勝ってグランドスラム初タイトルを獲得している。
「彼女(大坂)はとても強い選手だと思うわ。いいサーブを持っているし、リターンもすばらしい。フォアバック両サイドが強い。ただ、私が思うのは、準決勝の対戦相手が誰であろうと関係ない。次のラウンド(決勝)を目指そうとするだけよ。面白い試合になるでしょう」
こう語るセリーナは、39歳とは思えないスピードとパワーを発揮して勝ち上がり、女子史上最多1位タイとなるグランドスラム優勝24回という大記録に挑む。
大坂もセリーナも全豪オープンの歴代チャンピオンであり、決勝にも相当するような大一番になる。大坂がフィセッテコーチと取り組んできたリターンの向上が、勝利のカギとなりそうだ。