「セブンシスターズ」とは、かつて世界の石油を独占していた7つの石油会社を指す。現在、セリエAの強豪7チームのことをイタリアではそう呼んでいる。
その7チームのうち5チームは、新監督のもとで新シーズンを迎える。
アンドレア・ピルロのもとで優勝を逃したユベントスには、マッシミリアーノ・アッレグリが戻ってきた。
ユベントスで4シーズン目を迎えるクリスティアーノ・ロナウド photo by AFP/AFLO
移籍報道を否定したクリスティアーノ・ロナウドは、あと1シーズンはユベントスに残ることになりそうだが、彼は自らの現在の待遇に満足しているわけではない。そんなロナウドの気持ちこそが、優勝候補ユベントスにとって大きな障害となる可能性もある。
7チームの中で実力的に一番劣ると思われるラツィオは、経済的に困難な状態にあり、補強につぎ込める資金はほとんどない。
ラツィオのライバル、ローマはベンチにジョゼ・モウリーニョを招くという大サプライズをやってのけた。エースのエディン・ジェコはインテルに行ったが、代わりにチェルシーからダミー・アブラハムを獲得。ユーロで負傷したレオナルド・スピナッツォーラの復帰が待たれるが、守備はポルトガル代表GKルイ・パトリシオとウルグアイ代表SBのマティアス・ビニャの加入で補強された。
ナポリの新監督にはイタリアサッカーを熟知するルチアーノ・スパレッティが就いた。インテルの監督の座をアントニオ・コンテに奪われ、2年間のブランクのあとの監督就任だ。ナポリの一番の問題はチームの柱となる2人の選手、キャプテンのロレンツォ・インシーニェとDFのカリドゥ・クリバリがチームに残るかどうか、いまだに明らかではないことだ。新シーズンの確かなメンバーもわからない中での仕事は難しいだろう。
セブンシスターズの中で一番批判が集中しているのが、昨季の王者インテルだ。
インテルは優勝した5月から、多くのものを失ってきた。時系列的に言うと、まずスクデット獲得の最高の立役者、監督のアントニオ・コンテが辞任。続いてチームのシンボルであり、サポーターのアイドルだったロメル・ルカク(現チェルシー)。そしてDFのアクラフ・ハキミ(パリ・サンジェルマン)。それぞれの後釜として、監督にはシモーネ・インザーギ、選手ではエディン・ジェコ、オランダ代表デンゼル・ダンフリースが新しくやって来たが、格が落ちた感は否めない。
インザーギは「連覇を目指す」と公言しているが、ルカクのいないインテルのサッカーは全く別物になってしまうだろう。コンビを組んでいたラウタロ・マルティネスも昨年のようなプレーを維持できるか、かなり疑問を感じているようだ。
監督が代わらなかったアタランタとミランについても触れておこう。
ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督のもと、アタランタはここ3シーズン、常にリーグ最高の攻撃力を見せてきた。今季はCBのクリスティアン・ロメロをトッテナムに奪われてしまったが、代わりにユベントスからトルコ人DFのメリフ・デミラルをレンタルした。前線にはドゥバン・サパタ、ルイス・ムリエル、マッテオ・ペッシーナといい選手がそろっており、昨季(3位)以上の結果が期待できる。
ミランは、ズラタン・イブラヒモビッチと、チェルシーから獲得したオリビエ・ジルーの熟年コンビにかけている。彼らが自分たちの義務をきちんと果たせば、2人で40ゴールは狙えるだろう。
◆ユーロで優勝、イタリア復活の裏側。マンチーニはこうして「強い代表」を作った
ただ、忘れてならないのは、イタリア代表GKジャンルイジ・ドンナルンマのパリ・サンジェルマンへの移籍だ。代わりにゴールを守るのは、昨シーズンのフランス王者リールから来たマイク・メニャン。ドンナルンマの穴を埋めるのは難しいのではないか。
2人の日本人がプレーするチームはどうだろうか。ベテラン吉田麻也は問題なく続投だ。サンプドリアは監督がクラウディオ・ラニエリからロベルト・ダヴェルサに代わったが、チームのプレースタイルはそうは変わらないだろう。
冨安に関しては、アタランタ、トッテナムなど多くのチームがほしがっているが、ボローニャは高額の代価を求めている。結局は金額の折り合いがつかず、そのままボローニャに残る可能性もある。ただ、若さは彼の大きな強みであり、やはり今月一杯は去就が注目される。