ヤクルトが3勝1敗で王手をかけた日本シリーズ第5戦が11月25日、東京ドームで行なわれた。ヤクルトは2回裏、併殺打の間に1点を先制。
起死回生の決勝ホームランを放ったオリックスのジョーンズ
両チームに絶対的な決め手がなく、試合の流れが常に動きながら、最後はオリックスが1点差ゲームをモノにしました。
ヤクルトは同点にされた矢先の4回裏、村上選手に勝ち越しホームランが出るなど、勝っていてもおかしくないゲームだったと思います。そんななかで最後にオリックスが笑ったところに、野球の奥深さが出た一戦となりました。
第4戦で負けて崖っぷちに立たされたオリックスは、ショートの紅林(弘太郎)選手を6番に上げて、セカンドには太田(椋)選手を入れて下位打線を組み替えました。この下位打線がつながって得点し、リードした展開で終盤までいけた。
8回裏に山田選手の3ランで追いつかれましたが、9回表に代打・ジョーンズ選手が勝ち越しのホームラン。
そして9回裏は、このシリーズ初めてクローザーの平野投手を投入できた。欲を言えば、3点リードのまま平野投手につなぎたかったところでしょうが、なんとか1点差を守りきってくれた。オリックスにとっては、大きな1勝になりました。
ポイントに挙げたいのは、山田選手の同点3ランで薄れがちになりましたが、7回表の太田選手のタイムリー三塁打は、価値ある大きな一打だったと思います。
中嶋(聡)監督はシーズン中から若手を使いながら伸ばしてきました。太田選手にとって、日本シリーズのあの場面で打てたことは、大きな自信になったはずです。
今回のシリーズで、オリックスは紅林選手、宗(佑磨)選手を含め、若い選手が躍動しています。この試合に関しても、最後はジョーンズ選手が一発を放ちましたが、若い選手の力が勝利を手繰り寄せたと言っても過言ではないと思います。
ヤクルトにすれば、一気に日本一を決めたかったところでしょうが、まだ優位であることに変わりはありません。
ここまで5試合いずれも大接戦と、球史に残るシリーズになっています。両チームの力が拮抗し、よく似たチーム同士の戦いと言えますが、そのなかで3番、4番はそれぞれタイプが違うのですが、ともに持ち味を発揮し、それがシリーズをいっそう面白くしているように感じます。
ヤクルトの3・4番は、甘い球を1球で仕留める技術の高さを持っています。両選手とも、このシリーズでは本来の調子ではないと思うのですが、それでも試合の流れを変える一打を放つことができる。「さすが」のひと言です。
一方、オリックスの3・4番は追い込まれても、しぶといバッティングで塁に出ます。吉田(正尚)選手は首位打者を獲っているバッターですし、ホームラン王の杉本選手はカウントごとに変わり身があって、状況に応じたバッティングができる。一発の魅力もありますが、相手投手にとっては厄介な打者だと思います。
とくに第5戦は、点の取り方、チャンスメイクという意味で、両チームの3・4番は対照的でしたね。
これでヤクルトの3勝2敗となり、移動日をはさんで舞台はほっともっとスタジアム神戸に移ります。第1戦から流れがどちらに行っているかもわからないくらいのせめぎ合いが続いていて、これほど見どころ満載の日本シリーズは今まで見たことがありません。
第6戦、オリックスは山本(由伸)投手が先発するでしょう。パ・リーグの主催試合ではDHが採用されるので、行けるところまで山本投手を投げさせることができる。ヤクルトは高梨(裕稔)の先発を予想する声もありますが、先発の力という部分ではオリックスのほうがあります。ただ、初戦ではヤクルト打線が粘りを見せていましたし、山本も神経を使うかもしれません。
また、ここからの戦いはベンチワークも見ものです。第5戦では8回に3点リードで登板したヒギンスが四球、四球の後に3ランを打たれて追いつかれました。こうしたケースはあることです。オリックスはセットアッパーのヒギンスをどう使うのか。故障から5カ月ぶりに復帰した山岡(泰輔)をそのポジションで起用するのか。
逆にヤクルトは、クローザーのマクガフに不安定なところがあります。高津(臣吾)監督の采配も注目されるところです。
リードを許して本拠地に戻るオリックスは、下位打線がポイントになるでしょう。ポイントゲッターの3、4番に向けて、下位打線がいかにチャンスをつくり、いろんな作戦ができる1、2番の福田(周平)、宗でどれだけプレッシャーをかけられるか。対してヤクルトは先発メンバーも変わらないと思いますし、普段どおりの野球ができるかどうか。
このシリーズについては、最後の最後まで何が起こるのかわかりません。誰も予想できない結末が待っているかもしれないですね。