スペイン、リーガ・エスパニョーラ2部のふたりの日本人選手、岡崎慎司(カルタヘナ)と柴崎岳(レガネス)は、2021-22シーズン、奮闘を見せている。

 2部のクラブに在籍しているだけに、ふたりの目標は明確だろう。

まずは出場時間を確保し、チームの勝利に貢献し、昇格を目指す。2021年最後の試合となった第21節終了時点で、どちらも昇格の可能性を残している(1,2位が自動昇格で、3~6位がプレーオフで残りひとつの昇格枠を争う)。カルタヘナは8位で、6位との勝ち点差はわずかに1。レガネスは15位だが、6位との勝ち点差は6で、まだまだ逆転可能だ。

岡崎慎司は満点に近い仕事ぶり、柴崎岳は「月間最優秀選手賞」な...の画像はこちら >>

11月には直接対決となった岡崎慎司(カルタヘナ)と柴崎岳(レガネス)

 岡崎はウエスカ時代、12ゴールをあげてチーム得点王となりチームを1部に引き上げ、柴崎は2部のクラブを渡り歩いてきた。その舞台の「ベテラン」と言えるだけに、昇格につながる活躍が期待される。

 岡崎は持ち前のサッカーIQの高さで、シーズン開幕後の入団となりながら(出場は第5節から)、抜群の適応力でポジションをつかんでいる。国王杯も含めて17試合出場(先発が9試合)。40歳のスペイン人ストライカー、ルーベン・カストロとのコンビで円熟の境地を見せる。果敢で的を射たプレスで守備のスイッチを入れ、堅実な技術で攻撃のクッションになっている。

 昇格したばかりのクラブで、値千金の戦力になっているのは間違いない。

 11月に行なわれた第15節のマラガ戦で岡崎は上あごを骨折し、次節は欠場した。

その後は途中出場となり、トップの一角、もしくはサイドでプレーする。攻撃のユーティリティと言えるパブロ・デ・ブラシスがトップ下に定着し、チームが勝ち点を稼いでいたこともあり、序列はやや下がった。ただ、スペイン国王杯2回戦、カステジョン戦は先発で勝利に貢献した(3回戦はバレンシアと対戦予定)。

 現時点で、ゴールこそイビサ戦の1得点にとどまるも、高い評価を受けている。動き出しやマークを外し、ボールを呼び込む技術は天下一品。プレミアリーグ王者の経験は伊達ではない。

そもそも昇格組カルタヘナは戦力的に劣っているだけに、チャンスの数も限られる。丁寧にボールをつなぐことは少なく、セカンドボール回収からのカウンターか、裏に一か八かのボールを入れるのが主な攻撃パターンだ。

【柴崎は安定したチームで攻撃を牽引】

 もちろん、1得点はストライカーとして物足りない。第14節の日本人対決となったレガネス戦では、世界レベルの裏抜けでボールを呼び込み、完璧なフィニッシュを見せている。VARでオフサイド判定になったが、このような形でゴールを決めることは昇格するためにも必要だろう(気の毒なことに、スペインでの岡崎はVARでのゴール取り消しが多すぎる)。その他の仕事ぶりは満点に近い。

 一方、柴崎はレガネスのコンダクターとして異彩を放っている。17試合出場で、すべてが先発出場。欠場した試合も代表への招集が理由だった。ルーゴ戦、サラゴサ戦で決めたミドルシュートはまさにワールドクラス。12月に入ってからはチームが4-3-3にシステム変更し、インサイドハーフに入って攻撃センスを発揮している。

 開幕してからの2カ月は苦しんでいた。

攻撃能力の高さよりも、守備のひ弱さが目立って、チームの悪い流れを変えることができなかった。日本代表で、サウジアラビア戦での腰が引けたプレーが批判を浴びたように、プレーの波が大きかった。その後、10月にはクラブの「月間最優秀選手賞」を受賞するが、チームは降格圏の20位と低迷し、10月末にはアシエル・ガリターノ監督が成績不振により解任されている。

 新たにチュニジア人のメディ・ナフティ監督が就任したのを契機に、柴崎はプレーを安定させつつある。チームが組織として機能している時に、力を発揮できる典型的な選手と言える。プレーの選択肢が整理されたことによって、攻守で力を出せるようになった。

もともと2部では屈指のチーム力を有しており、カタルヘナ戦以降のリーグ戦8試合を4勝1敗3分けと巻き返すなかで攻撃を牽引している。

 柴崎は単純なキック&コントロール、それにビジョンにおいて、2部では屈指の能力の持ち主と言える。プレースキッカーとしても貴重で、1部の上位クラブでも重用されるレベルだろう。あとは、チームが不調の時に五分五分のボールを自分のものにし、決定的チャンスを作り出すというプレーを見せられるか。ポテンシャルの高さは証明済みで、必要なのは苦しい戦いのなかで弱気を見せず、チームを引っ張れる力が求められる。

 それはまた今後、日本代表で再びポジションを争うためにも欠かせない要素と言えるだろう。

 岡崎、柴崎のふたりが昇格争いをするチームをリードすることができるか。決着は来年6月のプレーオフまで続くだろう。それはワールドカップイヤーの日本代表での戦いにも結びつくはずだ。