春のGIシリーズがいよいよ開幕。第1弾は「春のスプリント王決定戦」となるGI高松宮記念(3月27日/中京・芝1200m)だ。

 昨年は、2番人気が1着、1番人気が2着、3番人気が3着と順当な結果に終わったが、実は1番人気は目下5連敗中。過去10年の成績を見ても1番人気はわずか2勝と、"荒れる"ことも多いレースと言える。実際、3連単では2年前に20万円超え、3年前には400万円超えの高額配当が生まれている。

 そして今年のレースも、日刊スポーツの松田直樹記者は「混戦模様で波乱ムードにある」と言う。

「というのも、今年は久々にスプリント戦のGI馬がいない戦いとなりましたからね。レシステンシア(牝5歳)、サリオス(牡5歳)、グレナディアガーズ(牡4歳)とGI馬は3頭出走しますが、いずれも勝っているのは2歳時のマイルGI。

付け入る隙は十分にあると見ています。

 実際、レシステンシアはスプリントGIでも2着3回とここでは抜けた実績を誇りますが、今回は昨年末の海外GI香港スプリント(2着。12月12日/香港・芝1200m)からの帰国後初戦。サリオスとグレナディアガーズにしても、ともに今回が初の1200m戦でどれだけ対応できるのか。それぞれ不安材料を抱えており、穴馬の台頭があってもおかしくないと思っています」

 加えて、週末の天気の崩れが「波乱ムードに一層拍車をかけそう」と松田記者。

「この週末はかなりまとまった雨が降る予報が出ています。

AコースからBコースに移るとはいえ、引き続き時計勝負というより、パワーが求められる馬場状態になるのではないでしょうか。そうなると、やや特殊なスプリント戦になりそう。意外な馬の大駆けに、一段と期待が膨らみます」

 こうした状況を踏まえて、松田記者は「ここに来て、再度急浮上してきた」という一昨年の3着馬ダイアトニック(牡7歳)を推奨馬に挙げる。

「一昨年のGIスプリンターズS(13着。中山・芝1200m)のあとに骨折が判明。11カ月ほど戦列を離れていましたが、昨夏の復帰初戦となったGIIIキーンランドC(14着。

8月29日/札幌・芝1200m)後に調子をとり戻してきました。

 少し間隔をあけて臨んだGIII京都金杯(1月5日/中京・芝1600m)では斤量57.5kgを背負って4着と健闘し、前走のGIII阪急杯(2月27日/阪神・芝1400m)では好位から抜け出して快勝。完全復活を遂げました。

 阪急杯では抜群の行きっぷりで最内3番手に収まり、直線では内ラチ1頭分の狭いスペースをこじ開けてきました。その瞬発力は7歳馬のものとは思えない脚でした。強いダイアトニックがやっと帰ってきた、と思わせてくれました」

高松宮記念は好配当なるか。パワー要する馬場で力を発揮できる舞...の画像はこちら >>

高松宮記念での勝ち負けが期待されるダイアトニック

 一昨年のレースでは、直線で致命的な不利を受けての3着。
松田記者は当時のレースを振り返って、ダイアトニックの悲願達成に期待を寄せる。

「一昨年のレースでは、直線で突き抜ける手応えがありながら、クリノガウディー(牡6歳。当時4歳)の斜行のあおりを受けて3着。レース後、当時ダイアトニックを担当していた助手の方から『突き抜けていたと思うだけに悔しい』という失意のLINEが届きましたが、自分もそれには同感でした。

 不利があってからも伸び直した勝負根性はさすがでしたし、スムーズだったら勝っていたと、今でも思っていますから。GI馬ではないですが、自分のなかでは"ほぼGI馬"という扱いです。

 しかも、今週は当時と同じく渋った馬場になりそう。完全復活を遂げた今なら、そうした馬場で再び全能力を発揮してくれるはずです。父ロードカナロアの背中を知る"仕事人"岩田康誠騎手の手綱さばきにも期待しています」

 松田記者はもう1頭、ここが大目標のコース巧者にも注目する。

ナランフレグ(牡6歳)です。本来であれば、前々走のGIIIシルクロードS(1月30日/中京・芝1200m)で賞金を加算して高松宮記念参戦という目論みでしたが、同レースは3着。結局、GIIIオーシャンS(2着。

3月5日/中山・芝1200m)を挟んでの臨戦となりました。

 当初想定していたローテーションより1戦多くなってしまったのは確かですが、前走では改めて『力をつけた』と思わせる内容を見せてくれました。なにしろ、右回りではこれまで、3、4角で置かれがちになる馬がスムーズな追走が叶っていましたから。右回りの克服は、昨秋以降の好調と成長を裏づけるパフォーマンスだったと解釈しています

 主戦の丸田恭介騎手は常々『左回りだと走りが変わる。中京・芝1200mがベスト』と口にしています。幸い前走の反動も少ないようですし、万全に近い状態でレースに臨めそう。現在4戦連続でメンバー最速の上がりをマーク。最適舞台での一発の可能性は増すばかりです」

 はたして、今年の春のGIシリーズはいきなり高額配当が飛び出すのか。タフな馬場で浮上する伏兵2頭に要注意である。