アビスパ福岡が"2年目のジンクス"と戦っている。

 福岡は昨季、J1昇格1年目ながら、シーズンを通して強度の高いサッカーを展開。

選手個々の能力では劣っていても、それをコンパクトな布陣から切り替えの速い攻守を繰り返すことで補った。出足の速さ、球際の強さをベースとした堅守は、間違いなく福岡の武器となっている。

 結局、最後まで残留争いとは無縁の順位を保ち続け、8位でフィニッシュ。1996年のJリーグ参入以降、2000年セカンドステージの6位こそあるものの、年間順位でひと桁はなく、同じ年の12位が最高だったにもかかわらず、5シーズンぶりのJ1復帰で、クラブ史上最高順位を大きく更新したのである。

 しかも、福岡は2002年に初めてのJ2降格を経験して以降、J1に3度復帰しながら、ことごとく1年でJ2へ逆戻りを余儀なくされてきた。

 つまり、昨季は4度目のJ1復帰にして、悲願の初残留を果たしたばかりか、クラブ史上最高順位を記録したのだから、歴史的シーズンを過ごしたと言っても大げさではなかった。

 しかしながら、J1に昇格したばかりのクラブにとっては、2年目もまた試練のシーズンとなることは、過去の歴史が証明している。

 前回福岡がJ1に昇格した2016年以降、昨季までに延べ15クラブがJ1へ昇格してきたが、そのうち4クラブは1年でJ2へと逆戻り(そのひとつは福岡だ)。1年目での降格を回避した11クラブにしても、うち6クラブが2年目には順位を落とし、2クラブがJ2降格の憂き目を見ている。

 つまり、昇格1年目での降格を免れたとしても、2年目に順位を上げられたクラブとなると5クラブしかなく、割合でいえば、全体の3分の1にすぎない。

 今季の福岡にしても、開幕前には8位以上を目標としたものの、ここまでの成績は4勝7敗8分けの勝ち点20で14位(第19節終了時点)。自動降格圏の17位とは勝ち点差が3しかなく、J1参入プレーオフへと進む16位との勝ち点差となると、わずかに1という状況にある。

 リーグ戦最近5試合の成績にフォーカスすれば、3敗2分けと白星から遠ざかっており、すでにシーズンの折り返し地点を過ぎた現在、状況はむしろ開幕当初よりも厳しさを増している。

 福岡は今まさに、2年目の壁にぶつかっていると言えるだろう。

 しかし、だからこそ、福岡を率いる長谷部茂利監督の打つ手は早かった。

 直近の第19節のFC東京戦で、指揮官はGKを入れ替えるという大胆な策に打って出たのである。

 福岡のゴールマウスはJ2時代の一昨季も含め、GK村上昌謙が長らく守り続けてきた。昨季は38試合中37試合に先発フル出場。

今季も第18節まで、全試合に先発フル出場していた。

 だが、福岡は直前の第17節、第18節でいずれも3失点を喫し、"らしくない"形で連敗していた。単に勝てないだけでなく、このままでは自分たちの戦い方を見失いかねない。そんな試合が続いたことが、長谷部監督の決断を促したのだろう。

 村上に代わってピッチに立ったのは、これがJ1リーグ初出場となるGK永石拓海だった。

 もちろん、「(チームの失点は)全員の失点なので、GKだけが悪いわけではない」と長谷部監督。

だが、それでも「結果として2試合で6失点している」のは事実。悪い流れを変えるために、何かを変える必要があり、それがGKの入れ替えだったということだろう。

 昨季も含め、福岡が村上の好セーブに救われた試合は数多く、チームを支えてきた守護神を先発から外すことは相当な決断が必要だったはずだ。しかし、言い方を変えれば、チームの大黒柱を外すからこそ、そこに重い意味が生まれてくる。

 選手たちの危機感を煽り、流れを変えるきっかけになれば......。長谷部監督には、そんな思いがあったに違いない。

 結果的に連敗を止めたという意味では、指揮官の決断は吉と出たと言っていい。

 福岡はFC東京相手に先制したあと、一度は逆転を許しながらも同点に追いつき、2-2の引き分けに持ち込んだ。

アビスパ福岡が打って出た大胆な策。「2年目のジンクス」を打破...の画像はこちら >>

アウェーのFC東京戦を2-2で引き分けて、貴重な勝ち点1を手にしたアビスパ福岡

 アウェーで手にした貴重な勝ち点1を、長谷部監督はこう振り返った。

「負けているなかで追いついた勝ち点1。先制した段階で言えば、(引き分けは)もったいないとも言えるが、(逆転を許したあとに)追いついた最後の時間で言うと、うまく勝ち点1をとったと思う。それが(8位以上という)目標につながる」

 値千金の同点PKを決めたFWフアンマ・デルガドもまた、「FC東京はタレントが多いし、順位も我々より上だが、逆転されても下を向かず、追いつくことができた」と言い、前向きな言葉を口にした。

「ここ何試合か、我々らしさを出せなかったので、それをとり戻せたのは収穫。今日のような戦いができれば、いい流れを持ってこられる」

 とはいえ、失点数だけに目を向ければ、福岡はこの試合でも2失点しており、複数失点は3試合連続に伸びた。正GKをベンチに置くという思い切った最終手段も、悪い流れを完全に止めたとは言い難い。

 福岡は昨季もシーズン折り返し地点と前後して、5連敗を含む7試合連続勝利なしの時期があっただけに、ここを乗り切れるかどうかが、今季の勝負どころとなりそうだ。

 はたして、福岡は2年目のジンクスを打破することができるのだろうか。

 例年になく暑さが厳しい今年の夏。2年目の福岡が正念場を迎えている。