木村和久の「新・お気楽ゴルフ」
連載◆第21回

 ゴルフは昔から、「コストパフォーマンスが大事」と言われています。つまり、財布に優しい予算で、どれだけ楽しめるかが重要、ということです。

 そして最近、若者のZ世代を中心に言われているのが、タイムパフォーマンス。俗に言う"タイパ"です。

 彼らの時間節約術は、実に個性的で、ドラマや映画などの動画を早送りで見るのが流行っているそうです。ラブシーンを早送りで見て何が楽しいのか? 甚だ疑問ですが......。

 そのタイパ思想が、近頃ゴルフにも広がりつつあります。いつも混雑していて進行が遅いコースは、「タイパが悪い」と評判を落としているのです。

 というわけで今回は、理想的なコスパ&タイパコースはあるのか? タイパのいいラウンドとはどういったものなのか? など、いろいろと考えてみたいと思います。

【木村和久連載】コスパが大事とされてきたゴルフ。今後はZ世代...の画像はこちら >>

リモコンでプレーするようなことはないにしても、「タイパ」を重視する若者が主流になると、ラウンドのスタイルも劇的に変わるかもしれませんね...。illustration by Hattori Motonobu

 まずは、コスパのいいコースの話から。

 東京近郊の名門コースは家から1時間以内で行けますが、平日でも3万円ぐらいして、非常にコスパが悪いです。誘われても、そうそう行けるコースじゃありせん。頻繁に行ける人は、それなりのコネを持っていて、かつお金持ち、ということになります。

 一方、遠方に目を向ければ、関東の奥まったエリアには、平日1ラウンド3000円台といったコースもちらほら。びっくりですよね。けど、都心の料金1ラウンド分で10回できるじゃん、と喜ぶのはちと早計です。

 遠い分、交通費が余計にかかり、移動距離も長いです。しかも、コースのメンテナンスも心配。この辺は、よく調べないといけません。

 結果、関東圏なら千葉や埼玉、茨城あたりで、平日1ラウンド1万円程度のコースが、バランスがよさそうです。値段、移動距離、さらにはメンテナンス、レイアウトなども含めて、使い勝手がよろしいかと。要するに、コスパがいいということですね。

 では、そういった平日1万円台のコースのタイムパフォーマンスはどうでしょうか?

 東京圏で言えばひとつだけ、コスパ&タイムパフォーマンスに飛び抜けて優れたゴルフ場があります。それは、東京都営の若洲ゴルフリンクスです。

 この前ラウンドしましたが、新木場駅近くのコースまで家から40分くらいで着きました。

えらい近いなぁ~。

 加えて、料金は平日セルフなら食事代も入れて1万3000円ほど。コースもよく、岡本綾子プロら監修のトーナメントコースで、ものすごく楽しいです。8時、9時台スタートのラウンドなら、終わって家に着くのが3時すぎ。タイパも抜群となります。

 ただ、公営ゆえ人気が高く、予約をとるのが大変です。

たまたま呼ばれたから行くことができましたが、毎月ラウンドできるかどうかは、甚だ未知数ですね。

 話を戻しましょう。平日1万円程度のコスパコースのタイパはどうか? 

 これは、運営会社の方針やコースレイアウトによります。お客さんをギュウギュウに詰め込んで、スタート間隔が7分くらいの設定になっていると、全体の進行は遅れがちになります。

 商売熱心なコースは、ネットなどで直前割引をして、枠いっぱいまでお客さんを入れたがります。それだけ詰めれば、プレーが遅い組が出てしまう。

だから、ハーフに2時間半以上かかって、タイパが悪くなるのです。

 そういった状況だと、お昼休みも通常40分程度なのに、1時間を越えてしまうことも。おかげで、午後のスタート時間も遅くなり、ますますタイパが悪くなっていきます。

 あと、コース設定などによって詰まるゴルフ場があります。ラフが長すぎてボール探しに手間取るとか、谷越えの難しいシュートホールがあるとか。また、微妙に短いロングホールがあったりすると、飛ばし屋は2オンを狙うので、グリーンの空き待ちをする分、渋滞しがちです。

 とはいえ、レイアウトやコース設定で混むのは仕方がないと思います。それを改善しようと簡単にしてしまったら、そのコースの面白みが半減してしまいますからね。

 平日1万円程度のコスパコースにおいて、よりタイパを重視するのあれば、コースを予約する前にネットの書き込みをチェックするのがいいでしょう。「やたら待たされた」「ショートの手前に2台もカートが停まっていた」など、忖度なしのコメントが書かれていますから。それを見て、コース選びするほうがいいかもしれませんね。

 タイパに対する捉え方ですが、実は競技に出ている人、すなわち上級者ほど寛容です。競技慣れしている人は、待たされることに慣れているのです。

 競技は"OKパー"がありませんから、単純計算で4人が毎ホール一打ずつ余計に打つわけです。18ホールだと、通常のOKありのラウンドより、4人で70打ぐらい増える計算になります。

 しかも、競技ゆえ真剣勝負。パッティングのライン読みも慎重にするので、時間がかかります。過去、私が参加した競技ではハーフ3時間なんてのもありました。そのうえ、上位に入賞しようものなら、表彰式にも出席しないといけません。ほんと、一日仕事なんですね。

 個人的には、ゴルフは丸一日かけてやるものと理解しているので、日没でプレー不能にならなければ、まあいいかなと。

 昔は日が暮れると、グリーン上は懐中電灯で照らされたり、車のヘッドライトを当たられたりするなかで、パットをしたものです。今は、そこまで無理やりプレーさせるところはありません。冬至あたりを迎えると、最終スタートが10時すぎくらいに設定されます。それがギリギリでしょうな。

 一部コースでは、「日没ゴメン」と最初から断りを入れて、かなり安いラウンドを提供しているところもあります。1ホールだけ暗くなってプレーができなかったとしても、「安かったからいいか」と本人が納得すれば、問題ないですからね。

 そうしたなか、今後台頭してくるタイパ好きなZ世代のラウンドを考えると、コロナ禍で広まったスループレーはありだと思います。他、9ホールのラウンドとかね。ひょっとすると、ゴルフに丸一日かけない風潮になるかもしれません。

 バブルの頃のゴルフでは、千葉の近郊コースに行って、コネを使って7時半ぐらいにスタートしてスループレー。お昼を食べても、都心の会社に午後2時ぐらいには出社できると言って、自慢する人がいました。効率的とは思いますが、なんか部活の朝練みたいで、楽しく感じないんですよね。

 今や、ゴルフに対する捉え方がだいぶ変わったきたのは確かでしょう。でも、ゴルフはジムみたいにエクササイズするものではなく、もっとコミュニケーションツールとして使うべき。ご無沙汰している友だちを誘ってラウンドし、"19番ホール"は皆で飲みに行く――そういうゴルフがまっとうだと思います。

 Z世代の人々が今後、ゴルフにどんな価値を見出してくれるのか? タイパ傾向が強くなるかどうかは、その辺りがカギになると思います。彼らだって、動画サイトを見たり、ゲームをしたりすることには、恐ろしいほどの時間をかけていますからね。

 自分に価値があると思うものには、どっぷりとハマる。我々も若い頃には、麻雀やパチンコに相当な時間を費やして、ゲームも徹夜してやっていました。

 Z世代の人々にもどっぷりゴルフにハマっていただくには、とにかくゴルフの醍醐味を覚えてもらわないと。だから、2~3回ラウンドしただけで「だいたいわかった」とか言われても困ります。判断するのが、早すぎます。

 ゴルフは「100を切らずにゴルフを語るなかれ」と言われています。まずはスコア100を切る腕前になってから、いろいろ判断してほしいですね。