ワールド・ベースボール・クラシックWBC)に参加している国と地域のロースターには、現時点で日本プロ野球(NPB)の球団に在籍しているか、過去に在籍したことのある選手が少なくない。

 数えたところ、日本代表の29人を除いても、30人が見つかった。

 日本以外の19の国と地域のうち、最も多いのはキューバだ。NPBの経験者がロースター30人の3分の1を占める。

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「スタンドの女神」ローレン夫人と巨人時代のマイコラス

 NPBの球団に在籍中の選手は、ライデル・マルティネス(中日)、リバン・モイネロ(ソフトバンクホークス)、ジャリエル・ロドリゲス(中日)、フランク・アルバレス(中日※育成)、アリエル・マルティネス(日本ハム)の5人だ。

 昨年、ライデルは39セーブと5ホールド、モイネロは24セーブと8ホールド、ジャリエルは39ホールドを記録した。しかも、防御率は3人とも1.20に満たなかった。

 あとの5人は、アルフレド・デスパイネ(2014~2016年=ロッテ、2017~2022年=ソフトバンク)、ジュリスベル・グラシアル(2018~2022年=ソフトバンク)、オネルキ・ガルシア(2018年=中日、2019~2020年=阪神)、ロエル・サントス(2017年=ロッテ)、ヤディル・ドレイク(2017年=日本ハム)だ。

 デスパイネは、2009年、2013年、2017年のWBCにも出場し、それぞれ1本塁打、3本塁打、3本塁打を記録している。通算7本塁打は歴代最多。フレデリク・セペダとデトロイト・タイガースのミゲル・カブレラより1本多い。

 なお、通算6本塁打の上記ふたりはこれまで4度のWBCすべてに出場しているが、今回、キューバのロースターにセペダの名前はない。カブレラはエドウィン・エスコバー(DeNA)らとともに、今回もベネズエラのメンバーとして出場する。

【ローレン夫人もスタンドに?】

 キューバに次いでNPBの経験者が多いのは、6人の台湾だ。

 こちらも、在籍中とかつて在籍した選手が半々。

前者は、宋家豪(ソン・チャーホウ/楽天)、呉念庭(ウー・ネンティン/西武)、王柏融(ワン・ボーロン/日本ハム※育成)。後者は、陳冠宇(チェン・グァンユウ/2014年=DeNA、2015~2020年=ロッテ)、C.C.リー(李振昌/2016年=西武)、呂彦青(ルー・イェンチン)がそうだ。呂は2018年から2020年まで阪神に在籍したが、一軍登板はなかった。

 アメリカ、メキシコ、カナダ、オーストラリアは、NPBの経験者をふたりずつ擁する。

 アメリカのふたり、現セントルイス・カージナルスのマイルズ・マイコラス(2015~2017年=巨人)と現サンディエゴ・パドレスのニック・マルティネス(2018~2020年=日本ハム、2021年=ソフトバンク)は、どちらもWBCで先発あるいは第2先発を務める予定だ。

 マルティネスの場合、WBCではリリーバーとして起用される可能性が高かったため、一度は出場を辞退したが、ロサンゼルス・ドジャースのクレイトン・カーショウが欠場することになり、再選出となった。

 昨年、5年ぶりにメジャーリーグへ戻ったマルティネスは、先発投手として開幕を迎え、シーズン途中にブルペンへ回された。今年はローテーション定着を目指している。最初に出場を取りやめたのは、先発投手として調整したいという意向からだ。

 メキシコのふたりは、セサル・バルガス(2021~20022年=オリックス)と現ワシントン・ナショナルズのジョーイ・メネセス(2019年=オリックス)。

 メネセスは、昨年8月に30歳でメジャーデビューすると、56試合で13本のホームランを打ち、打率.324と出塁率.367、OPS.930を記録した。8月以降に限ると、ホームランは10位タイ、OPSはこのスパンに200打席以上の116人中6位に位置する。

この遅咲きが本物であれば、WBCでも期待大だ。

【2013年にNPB記録の60本】

 一方、カナダのアンドリュー・アルバース(2018~2020年=オリックス)とスコット・マシソン(2012~2019年=巨人)は、ともにブランクがある。アルバースは、2021年にミネソタ・ツインズと傘下の3Aで投げたのが最後だ。マシソンは、2019年のオフに引退を表明。2021年の五輪予選が最後の登板かと思われたが、今回のWBCでもロースターに入っている。

 現在の年齢は、アルバース37歳とマシソン39歳。彼らのロースター入りは、カナダの層の薄さをうかがわせる。

これまでの4度とも、カナダは1次ラウンドで敗退している。

 オーストラリアも、2次ラウンドへ進んだことはなく、事情はカナダとそう変わらない。NPBの経験者ふたりのうち、クリス・オクスプリング(2006年=阪神)は45歳だ。もうひとりのダリル・ジョージ(2017年=オリックス)は、2015~2016年にBCリーグの新潟アルビレックス・ベースボール・クラブでプレーしたのち、オリックスに入団したが、育成選手から支配下選手にはなれなかった。

 コロンビアのロースターには、NPBの経験者と今オフに入団した選手がいる。現シンシナティ・レッズのタイロン・ゲレーロ(2022年=ロッテ)とジャシエル・ヘレラ(西武※育成)だ。

育成選手のヘレラが一軍でプレーできるかはわからないのと同じく、ゲレーロも4年ぶりのメジャーリーグ復帰は確約されていない。レッズと交わしたのはマイナーリーグ契約だ。

 このほか、オランダにはウラディミール・バレンティン(2011~2019年=ヤクルト、2020~2021年=ソフトバンク)、プエルトリコにはネフタリ・ソト(DeNA)、中国には日立製作所の真砂勇介(2013~2022年=ソフトバンク)がいる。真砂は、2017~2022年に一軍で180試合に出場した。

 2013年にシーズン60本塁打のNPB記録を打ち立てたバレンティンは、2017年のWBCで4本のホームランを打った。1度のWBCで4本塁打以上は、ほかには、2006年に5本の李承燁(イ・スンヨプ/韓国)と4本のエイドリアン・ベルトレ(ドミニカ共和国)しかいない。ソトは、今回が初出場。プエルトリコでは、出場を予定していたツインズのカルロス・コレイアが辞退しており、ソトのバットにかかる期待は決して小さくない。

【監督にも懐かしの元助っ人】

 また、日本の栗山英樹監督のほかにも、NPBを経験した監督は3人。オーストラリアのデーブ・ニルソン(2000年=中日/登録名はディンゴ)、コロンビアのホルベルト・カブレラ(2005~2006年=ソフトバンク)、オランダのヘンスリー・ミューレンス(1994年=ロッテ、1995~1996年=ヤクルト/登録名はミューレン)がそうだ。

 コーチまで範囲を広げれば、もっといるはず。たとえば、オランダでは「A.J」ことアンドリュー・ジョーンズ(2013~2014年=楽天)がベンチコーチとしてミューレンスの右腕を務める。

 世界各国に散らばる、彼らNPBの現役&懐かし助っ人たちに注目するのも、WBC観戦の楽しみのひとつだろう。