スポルティーバとフジテレビの競馬中継番組『みんなのKEIBA』とのコラボ企画、竹俣紅アナウンサーの連載『紅色の左馬』。第2回は、竹俣アナにとっての上半期GIベストレースについて話を聞いた――。
夏が近づいてくると、「夏といえば何ですか?」という質問をよくされるようになる気がします。海、花火、かき氷、そうめん......などいろいろあると思いますが、ずっと将棋をやっていましたから、春夏秋冬にかかわらず将棋を指していたもので、答えがパッと出てこないんですよね。私のこれまでの人生の夏を思い出すと、やはり『将棋まつり』でしょうか。
『将棋まつり』というのは、全国各都市にある百貨店などのイベントスペースを利用して開催される夏のイベント。
ふだん通っている将棋道場だと、だいたい同じような相手としか指すことができませんが、夏になれば遠くからやってきた知らない相手とも指せる。小さい頃は、それが本当に楽しみでした。女流棋士になってからは、公開対局をやらせてもらうこともありました。
そうそう、夏と言えば、土用の丑の日のうなぎというのもありますね。私はなかでもうなぎの肝焼きが好きです。
小学校4年生くらいの時だったと思いますが、いつも将棋道場に焼き鳥を買ってきてくれる常連さんがいて、「今日は焼き鳥がなかったから」と代わりに買ってきてくれたのが、うなぎの肝焼きだったのです。
当時の私にはそれが何であるのかもよくわからず、「美味しい焼き鳥だな」と思って食べていたら、「これはうなぎの肝焼きだよ」と教えてもらい、それから一番好きな食べ物になりました。お高いものなので頻繁に食べることはありませんが、あの独特の苦味がお酒に合うということも、今の私ならわかります(笑)。
夏といえば何か? 今までは答えるのに困っていましたが、今はスパッと答えられます。
「夏競馬です!」
予想が難解な夏競馬。
宝塚記念で、私がデータ消去法から本命候補として絞り込んだのは、アスクビクターモア、イクイノックス、スルーセブンシーズの3頭。そこからデータ上もっともこのレースに適性があると考えたアスクビクターモアを本命予想としたわけですが、残念ながら11着に終わりました。
その一方で、最後に消したイクイノックスとスルーセブンシーズが1、2着。これには、大方の予想は正しかったといううれしさもあり、最後の見極めがうまくいかなかったという反省もあります。
10番人気ながら2着に入ったスルーセブンシーズの鞍上は、池添謙一騎手。"グランプリ男"と言われるほど、宝塚記念で勝率の高いジョッキーです。だとすれば、私の予想データに騎手の要素が入っていれば、最後のひと押しとなるプラスデータとなり、本命にできたかもしれません。
この宝塚記念を機に、そのレース・そのコースでの騎手の方のデータも予想の時の考慮に含めるようになりました。
私が『みんなのKEIBA』のMCとなって以来、平地GIは10レースが行なわれましたが、数々の名勝負のなかから、個人的なベストレースをあえて選ぶとすれば、やはりNHKマイルカップ。番組内で本命に予想したシャンパンカラーが勝ってくれた、本当に思い出深いレースです。
それまでは一頭一頭の馬への思い入れはそれほどなく、あくまでも過去のデータから取捨選択していたのですが、こうやって自分の予想どおりに走ってくれると、これからもシャンパンカラーのことをずっと応援したくなりますね。
「これからどう成長していくんだろう?」とか、「また秋に出てくるのが楽しみだな」とか、すっかり気になる存在になってしまいました。
ただ、競馬を始めたばかりの私にとって衝撃的だったレースは、天皇賞・春と日本ダービー、特にダービーです。
スタート直後にドゥラエレーデが落馬。それだけでも驚きで、坂井瑠星騎手が無事なのかどうか、その様子がわからないままレースは続き、ようやくドゥラエレーデを除く全17頭が走りきり、レースが終わったと思ったら、最後にゴールしたスキルヴィングが直後に倒れ込んでしまって......(編集部注:レース後、JRAから競走中に急性心不全を発症し死亡したとの発表があった)。
私はいつも、番組が終わるとインスタグラムを更新しているのですが、この日ばかりはどう気持ちを言葉に表せばいいのかわかりませんでした。
私にとっては、初めて経験する日本ダービー。レース当日の東京競馬場は明らかに今までとは異なる華やかな雰囲気が感じられ、背筋が伸びるような緊張感と、「これが競馬の祭典なのか」という高揚感を覚えました。勝ったタスティエーラにはもちろん大きな拍手を送ります。
でも、そういう舞台だからといって、スキルヴィングのアクシデントをなかったことにするのはあり得ない。夜になってもいろいろと考えてしまい、なかなか寝つけませんでした。
それまでの私は、すべての馬が無事に走りきるのはふつうのことだと思って、競馬を見ていました。ですが、すべての馬、そしてすべての騎手が無事にレースを終えられるというのは、決してふつうのことではなく、本当にすごいことなんだ。応援している馬が何着であろうと、何事もなくゴールしてくれることが一番なんだ。そんなことを実感させられたのが、この日のレースでした。
以来、私は競馬を見る目が変わり、すべての馬が無事にゴールしてくれることを祈ってレースを見るようになりました。
その意味において、日本ダービーもまた、私にとってはとても印象深いレースでした。
竹俣 紅(たけまた・べに)
1998年6月27日生まれ。東京都出身。2021年フジテレビ入社。
趣味:おいしいおそば屋さん巡り ウォーキング ガチャピン
モットー:元気に、地道に、前向きに
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