石川祐希のAttack The World vol. 10

(vol.9:激闘のパリ五輪予選「早く出場を決めたこともプラスには考えていない」>>)

 石川祐希は、バレーボール男子日本代表の主将としてパリ五輪予選(OQT)の激闘を終えたあと、3日後にはイタリアへと旅立った。異国で迎える9季目のシーズン。

戦いの場を世界最高峰のリーグであるイタリア・セリエAに移し、所属クラブのミラノで休む間もなくシーズンを戦っている。

石川祐希のイタリア9季目は「ハード」 それを乗り越えるために...の画像はこちら >>

【開幕時のミラノは「雰囲気がよくなかった」】

――OQTが終わった3日後にはイタリアに渡りました。コンディションはどうだったんでしょうか?

「そんなに悪くなかったです。痛いところもなかったですし、OQTの流れでいけたので、イタリアに着いてからも体はしっかり動いていました。僕は疲労もそれほど感じていなかったんですが、ミラノのチームメートはさまざまでした。チームにはアルゼンチン代表の(アグスティン・)ロセル選手がいますけど、彼はちょっと疲れているような雰囲気がありましたね。

 ミラノの外国籍選手は僕以外、OQTで五輪切符を取れなかったんです。

逆に(髙橋藍が所属する)モンツァは、外国籍でコートに入っている全員がOQTで五輪切符を取った。そこと比べると、メンタル面が全然違うと感じました。モンツァは生き生きしていましたね。彼らにも疲れはあったと思いますが、結果を出している選手たちなので、勢いが残っているのを感じました。

逆にミラノは、最初はあまり雰囲気がよくなかった。監督も含めて疲れている感じがしましたね。

僕自身はそんなに疲れを感じていなかったので、開幕のモデナ戦もいいプレーができました」

――以前、チームをプレーや声など、いろんな面で引っ張っていきたいと話していましたが、雰囲気がよくない時はどう振る舞おうと意識していましたか?

「声をかけて、チームを明るくすることがまず大事だと思っていました。ただ、正セッターの(パオロ・)ポッロ選手もケガでいなかったので、少し難しい部分はありましたね。もうちょっと雰囲気をよくできたかなと思いますし、最初のほうはなかなかうまくいかないところがありました」

――その中でも積極的に声をかけたり、鼓舞したりして雰囲気をよくしていこうと心がけているように感じました。

「それはありますね。特に、試合で劣勢な時にはなるべく声をかけようと思っていました。ただ、ミラノでは僕がキャプテンじゃないので、代表にいる時よりはちょっと控えめにはしています。

あとは、今季から加わった(マテイ・)カジースキ選手がどういったアクションを起こすのかも探りながらやっていたので、そこまで口数は多くなかったと思います」

【ハードな日程を乗り切るために「削った」こと】

――お話にあったように、正セッターのポッロ選手が不在の影響もあって3連敗スタートになりました。4戦目で初勝利を挙げるまで長かったですか?

「ポッロ選手は昨季、1回もケガをしなかった選手なので、彼がいないのはちょっと誤算でした。3連敗は予想外といえば予想外。でも、彼が戻ってきてからは非常にいいバレーができていますし、連勝もすることができました。いい流れになりつつあると思っています」

――CEVカップ(※)が始まり、移動も大変になってきていると思います。試合数も増えましたし、ハードに感じる部分はありますか?

(※)欧州バレーボール連盟(CEV)に加盟する各国のトップリーグ上位チームで争うカップ戦。

「移動がやっぱりハードですね。

ミラノでの1年目はCEVチャレンジカップに出たので国外への移動は経験がありましたが、CEVチャレンジカップよりCEVカップのほうが試合数も多いですし、試合のレベルも高いので。移動がある試合が続くと、移動だけで1日が失われてしまいます。この前も、帰ってきたのが午後8時ということもありました。フライトの時間にも左右されるので、そういったところでのコンディションの作り方は今季で学べると思っています」

――移動や日程が厳しい中で、コンディションを維持するために心がけていることはありますか?

「なるべく"同じ時間"を過ごすようにしています。夜の一定の時間からはだいたい同じスケジュールなので、そこだけは守るように。例えば、これまでは夜に食事に出かけたり動画を見たりもしましたけど、今はそういう時間も減って、コンディション維持にあてる時間のほうが長くなってきました。

自由な時間を削るしか解決策はないのかなと。そこは選手それぞれだと思いますが、僕はそうしないとキツいのでそうしています」

【「今は非常に楽しい」】

――シーズン前には、「ディフェンスの役割が多くなるんじゃないか」と話していました。感覚的にはどうですか?

「やはりディフェンスを求められることは多いので、その意識は非常に高いです。特にレセプションは2人ですることも多いですが、悪くないので去年よりも成長できているなと感じています」

――レセプションの範囲が広くなっていると思いますが、難しさは感じませんか?

「範囲が広い分には問題ありませんし、広いのも楽しいですよ。単純に他の選手よりも広範囲でバレーができますし、ボールに触れる回数、確率も上がりますから。今は非常に楽しい。

ディフェンスの役割と言っていますが、攻撃のスタッツを見てみると、僕が一番多く打つこともありますしね。よりタフになるし、もっと成長できる感じがしています。昨季よりも楽しくプレーできています」

――今季から加入したカジースキ選手は、一緒にプレーしてみていかがですか?

「彼は『自分のことをしっかりやっている』という印象です。キャプテンのように周囲に声をかける感じではなく、自分のことを淡々とやっている感じ。僕は一緒にやりやすいですし、遠慮せずにいろいろと言うこともできます。まだそこまで深い話はしていませんが、めちゃくちゃポジティブな選手ですね」

――ここまでの、チームとしての手応えはいかがでしょうか。

「徐々にチームの雰囲気もよくなってきているし、まとまってきているので非常にいい感じだと思います。今季は、アウトサイドは僕とカジースキ選手と(オスニエル・)メルガレホ選手で回していて、オポジットもベルギーとクロアチアの2人の選手が、どちらが出てもいい感じですし、補強もあって層が厚くなったと思います。誰が出ても戦えているので、昨季よりも安定して戦えています」

――日程も含め、昨季よりタフさが問われるシーズンになりそうですね。

「僕たちのチームもそうですが、他のチームも昨季よりレベルが上がっています。また、CEVカップでは他のリーグの強いチームと対戦できるので、今までよりもレベルが高いステージで戦えている感覚はあります。確かにタフですが、それが楽しいです」

【プロフィール】

◆石川祐希(いしかわ・ゆうき)

1995年12月11日生まれ、愛知県出身。イタリア・セリエAのミラノ所属。星城高校時代に2年連続で三冠(インターハイ・国体・春高バレー)を達成。2014年、中央大学1年時に日本代表に選出され、同年9月に代表デビューを飾った。大学在学中から短期派遣でセリエAでもプレーし、卒業後の2018-2019シーズンからプロ選手として同リーグで活躍。2021年には日本代表のキャプテンとして東京五輪に出場。29年ぶりの決勝トーナメント出場を果たした。

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