年明けの中山開催も今週で最終週。ラストを飾る重賞は、GIIアメリカジョッキークラブC(1月21日/中山・芝2200m)だ。

 例年、前年秋のGIシリーズが終了したばかりでビッグネームの出走こそ少ないが、その年の中距離戦線で飛躍を狙う期待馬、素質馬たちが顔をそろえる一戦。しかしその一方で、暮れのGIに出走するまでには至らない実力馬、実績馬の参戦も多く、力関係の比較が難しいレースとなっている。

 おかげで、過去10年で1番人気はわずか2勝。2着は3回あるものの、軸としての信頼度はやや欠ける。加えて、6番人気以下の伏兵の台頭が頻繁に見られ、しばしば波乱が起こっている。現に3連単では、一昨年の72万円超えをはじめ、10万円超えの高配当が4度も飛び出している。

 さらに今年は、「例年以上に小粒な組み合わせになりました」と研究ニュースの藤田浩貴記者。絶対的な存在も見当たらず、一段と波乱ムードが充満している。

 そんななか、先週のGIII京成杯で伏兵ダノンデサイル(5番人気)を本命に推してスバリ勝ち馬を当てた藤田記者は、今回も上位人気が予想される面々に懐疑的な目を向ける。

「堅実な走りを続けているボッケリーニ(牡8歳)とマイネルウィルトス(牡8歳)、GI秋華賞(10月15日/京都・芝2000m)で5着と善戦したモリアーナ(牝4歳)辺りが人気の中心になりそうですが、先に記した2頭はともに明け8歳で上がり目は微妙。モリアーナは折り合い面がカギになり、血統背景からも1ハロンの距離延長は割引でしょう。いずれも過度な信頼は置けないだけに、荒れる可能性は高いと見ています」

 また、藤田記者は"荒れる"要因として、12月から連続開催で使われてきた馬場状態についても触れる。

「今の中山は、12月から使われているわりに高速決着が頻発していましたが、先週くらいから少しずつ時計がかかる傾向となっています。それに、週末の天気は雨予報。そうなると、馬場の巧拙がより重要視されることは間違いなく、思わぬ馬の大駆けがあっても不思議ではありません」

 そうしたことを含めて、藤田記者は2頭の穴馬候補の名前を挙げた。1頭目は、昨年の牡馬三冠レースすべてに出走したショウナンバシット(牡4歳)だ。

「ショウナンバシットは、2021年のセレクトセールで2億6000万円(税別)という高値で取引された評判馬。オーナーや厩舎の期待は大きく、これまで"王道"と言われる路線を歩んできました。

今回は右鎖骨の手術をして休養中のために騎乗できませんが、GI皐月賞(4月16日/中山・芝2000m)から連続騎乗していたミルコ・デムーロ騎手も『重賞やGIでも通用する馬』と、常々言っていたほどの素材です。

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 近走は冴えない着順が続いていますが、GII神戸新聞杯(7着。9月24日/阪神・芝2400m)は究極の上がり勝負に対応できず、GI菊花賞(11着。10月22日/京都・芝3000m)は距離適性の差が出たもの。GIジャパンC(11着。11月26日/東京・芝2400m)は相手がそろっていたことに加えて高速決着と、不向きな条件が重なっただけ。
条件さえ整えば、上位争いに加わってくる力は秘めていると踏んでいます。

 そういう意味では、今回は皐月賞でも見せ場十分の5着となった中山が舞台。シルバーステート産駒は中山の芝を得意としており、血統的な裏づけもあって期待が膨らみます。

 不安があるとすれば、高速決着でしたが、先にも触れたように馬場状態はこの馬向きになってきそう。過去の実績からして重馬場は得意としており、ここで浮上のきっかけをつかんでくれるのではないでしょうか」

 藤田記者が推奨するもう1頭は、オープン入り3戦目で重賞に挑むサンストックトン(牡5歳)だ。

「2カ月ぶりだった前走のリステッド競走・ディセンバーS(8着。

12月17日/中山・芝1800m)は、直線で詰まって参考外。騎乗した横山和生騎手も、『モタつくところがあって、外に出せる感じではなかったです。いくらか太かったので、使った次はよくなりそうです』とコメントしていました。

 7月に3勝クラスのSTV賞(7月29日/札幌・芝2000m)を勝ったあと、昇級後2戦のレースぶりを見ると、オープンではもう少し距離がほしい印象もあったので、今回の条件は魅力的に映ります。

 レース間隔が詰まっているので、この中間はあまり強い調教は課していませんが、直前の追い切りではオープン馬のウインカーネリアンと併せて、馬なりで追走併入。全体時計は87秒0も、終(しま)いは外を回って12秒0と素軽い動きを披露し、叩いた効果による上がり目は確かです。

 馬体のシルエットも良化しており、冬場にしては毛ヅヤも上々。走法や洋芝実績から馬場が渋ってもこなせるタイプです。重賞の今回は人気も落としそうですし、馬券的な妙味は大いにあると思います」

 ともに重賞では連対実績はないものの、ショウナンバシットは3歳春にリステッド競走を勝っており、サンストックトンも3勝クラスでは、のちに重賞で勝ち負けを演じる馬たちと差のないレースを見せてきた。今年のメンバーであれば、重賞でも上位争いに加わってくる可能性は十分。荒れ馬場も味方にして、高配当をもたらしてもおかしくない。