本田真凜 インタビュー 後編(全3回)

 現役を引退した本田真凜は、フジテレビ系の「フィギュアスケートSPフィールドキャスター」として、3月18日にカナダ・モントリオールで開幕する世界選手権の模様を伝える。

本田真凜、世界選手権でりくりゅうペアに注目 アイスダンスの練...の画像はこちら >>
「(世界選手権ペアに木原龍一と出場する)りくちゃん(三浦璃来)は、私が関西大学のスケートリンクで練習していた時にはシングルの選手で、リンクが一緒でした。
そこからペアで試行錯誤し、最終的に木原選手と組んで......小さい頃から一緒だったので感慨深いです。

 木原選手は、彼のシングル最後の試合が私の海外デビュー戦というのもあって、めちゃくちゃかわいがってもらいました。当時私は小学4年生で、お兄ちゃん的な感じで、遊んでもらっていました」

 本田はそう言って、笑顔をつくった。今回、世界選手権に出場する選手たちとはライバルや後輩、同じリンクで滑った仲など、何らか結びつきがある。フィギュアスケーターとしての絆は、キャスターとしてもアドバンテージになるだろう。

浅田真央選手のオリンピック後の世界選手権(2010年・2014年)が、どちらもすごく印象に残っています」

 そう語る本田は、世界選手権でフィギュアスケートのおもしろさをどう伝えるのか?

【"スケートがうまい"と思う選手は?】

ーー本田さんは現役時代、表現力に定評がありましたが、「スケートがうまい」とは何を意味するのでしょうか?

本田真凜(以下同) 「スケートがうまい」と「踊りがうまい」というのはちょっと違います。スケートがうまいというのは、たとえばカロリーナ・コストナーさんとか、エッジワークからスケートを極めた方たちで、男子ではステファン・ランビエルさんもそうですね。

ディープエッジ、氷の乗り方、滑る時に音がしない、とかそういうところだと思います。

ーー現在のフィギュアスケートはジャンプ全盛なところもあります。

 現在では、まずジャンプのうまさがあって、その次に踊りや表現、スケーティングスキルなのかと思います。今の時代は、エッジワークが点数に直接的に反映されにくいのかもしれません。評価のされ方も含めて、その流れはちょっとずつ変わっていくとは思います。

 身体全体を使ったダンスや踊りのうまさが特長というスケーターは、たとえば、アダム・シャオ・イム・ファ選手(フランス)。

ジェイソン・ブラウン選手(アメリカ)は、ダンスもスケーティングもどちらも武器だと思います。

【じつはアイスダンスに挑戦していた】

ーーアイスダンスは、かなだい(村元哉中&高橋大輔)で注目度が上がりました。本田さんもスケーティングが評価されていただけに......。

 じつは私、アイスダンスを練習していたことがあります。2021年1月から5月くらいまでやっていて。靴もアイスダンスの靴にして練習したんですが、本当に本当に難しかったです。靴が違うと、まったく別の競技をしているんじゃないかという乗り心地でした。

(アイスダンスの靴は)すごくエッジが短くて、不安定。慣れてきたらスケーティングはこっちのほうがやりやすいと感じるようになったんですが......ふたりでひとつの動きをミリ単位で合わせるのはアイスダンスならではですね。

 たとえばスピンも、シングルでは軸が自分の身体の真ん中にあるんですが、ダンスではふたりの真ん中が軸になるんです。だから、乗り方が全然違う感じです。エッジの傾け方もそうですし、重心も常にまっすぐではないので、シングルとはまったく別だと思いました。でも、同時に、とてもおもしろい競技だと感じました。

ーーシングルからの転向も考えていたんですか?

 一回やってみたいな、と思っていたので取り組むようになって、のめり込んでいました。いろんな方に『アイスダンスやらないの?』と言ってもらっていたのもあって、始めたんですけど......パートナーが必要な競技ですし、練習拠点の問題もあって。私は当時大学に入ったばかりで、ずっと海外へ行くのも難しい時期だったということもあります。パートナーを選ぶとなると、兼ね合いは難しく、アイスダンスは解散したりするカップルもいるので......。そうした難しい面もある競技ですけど、だからこそ奥が深くて楽しいと思います。

【インタビューしてみたい進化中の選手】

ーーアイスダンスでの現役復帰も見てみたくなってしまいますが......。

そして、今回の世界選手権は、どのような大会を望んでいますか?

 2023年の世界選手権は、男子の後半グループで、ジェイソン選手、キーガン・メッシング選手(カナダ)と、みんなどんどん、いい演技をして順位が変わっていきました。それぞれが曲も雰囲気やジャンルも、得意分野をさらに伸ばしたようなプログラムを滑っていたんです。今回も、そういうスケーターの皆さんが進化していく姿を見たいですね。

ーーインタビューしたい外国人選手はいますか?

 アダム選手は気になります。昨年くらいからジャンプの安定感が突然上がったんです。それまでは、ジャンプに苦戦しているけど、そこで失敗してもそのあとのステップがすごいという印象の選手だったので、だいぶ前から私は『アダム君、うまい!』ってみんなに言っていたんです。

 そんな選手がジャンプの精度を上げて、高難度ジャンプを身につけたらすごいじゃないですか! だから精神的なものなのか、練習方法なのか、技術的に何か変えたのか、その変化がとても気になります。

ーーご自身は新しいキャリアへ踏み出したわけですが、新しい分野での活躍を期待する声もあります。

 2歳の頃からずっとスケートをして生きてきたので、視野を広げて周りを見たいですね。チャンスがあったら、いろいろチャレンジしてみたいです。

 よく聞かれる俳優のお仕事については、(妹の本田)望結の演技の練習相手になったり、望結の活動を見てどんな世界か少しは理解しているのですが、台本を覚えるなど、大変なところも見ていますし、簡単に「やってみたい」とは言えないですね。
 
 ただ、昨年は『ワンピース・オン・アイス』で、ビビ役で出演する機会をいただいて、キャラクターになりきって演技するのが心地いいなと感じました。また、チャンスがあったらやってみたいです!

終わり

前編<本田真凜が坂本花織のジャンプを絶賛 世界フィギュア日本女子の注目ポイントは?>を読む

中編<本田真凜が驚く宇野昌磨の考え方とは?「他の選手で見たことがない」世界フィギュア日本男子を占う>を読む

【プロフィール】
本田真凜 ほんだ・まりん 
プロフィギュアスケーター。2001年、京都府生まれ。2歳からフィギュアスケートを始め、ノービス時代から国際大会に出場。ジュニアに参戦した2015−2016シーズンには世界ジュニア選手権では優勝。翌2016−2017シーズンは世界ジュニアで2位、シニア選手に相手に全日本選手権でも4位に入る。シニアに転向後、全日本選手権やグランプリシリーズなど国内外の大会に出場。2024年1月に現役引退を発表。現在は、プロとしてアイスショー出演とともに、フジテレビ系「フィギュアスケートSPフィールドキャスター」としても活躍。