チャンピオンズリーグ(CL)とヨーロッパリーグ(EL)の準々決勝以降のトーナメントの組み合わせが決まった。
 
○CL
準々決勝
アーセナル(2)対バイエルン(4)
アトレティコ・マドリード(7)対ドルトムント(8)
レアル・マドリード(3)対マンチェスター・シティ(1)
パリ・サンジェルマン(PSG、5)対バルセロナ(6)

準決勝
アトレティコ×ドルトムントの勝者対PSG×バルセロナの勝者
レアル・マドリード×マンチェスター・シティの勝者対アーセナル×バイエルンの勝者
(カッコ内の数字はブックメーカー各社による下馬評の順位)

 目玉カードは、レアル・マドリード対マンチェスター・シティとアーセナル対バイエルンだ。

3番人気対1番人気、2番人気対4番人気の対戦である。下馬評に従えば、それぞれの勝者が対戦する準決勝は、事実上の決勝戦と言えそうだ。

 レアル・マドリードとマンチェスター・シティは、過去4シーズンで3度対戦している近年の定番カードであり、名物カードだ。コロナ禍で一発勝負となった2019-20シーズンはマンチェスター・シティ、2021-22シーズンはレアル・マドリード、昨季(2022-23)はマンチェスター・シティが勝利を収めている。

 サウジアラビアに渡ったカリム・ベンゼマの穴を、ジュード・ベリンガムを0トップ気味に据えることで補おうとしている今季のレアル・マドリードだが、アタッカーの枚数が絶対的に不足している感は否めない。昨季は攻撃力の差がスコアにそのまま反映され、準決勝でマンチェスター・シティが2戦合計4-0の勝利を収めた。

同じく準決勝で対戦した一昨季は、逆にレアル・マドリードがしぶとさを発揮。痛快な大逆転勝利を収めている。

 カギを握るのはヴィニシウス・ジュニオールがプレーするレアル・マドリードの左サイド対マンチェスター・シティの右サイドの攻防だ。一昨季はレアル・マドリードが制したが、昨季は可変式で対応したマンチェスター・シティに軍配は挙がった。

【人気2番手アーセナルは茨の道】

 一方、アーセナル対バイエルンは2016-17シーズン以来、7シーズンぶりの対戦となる。前者に比べると新鮮な戦いだ。

過去3シーズン連続ベスト8に進出しているバイエルンは、まさしく高位安定型のチームだが、優勝するには何かが足りない印象。プラスアルファの力がほしい。頼みの綱はハリー・ケインのシュート力だ。

 CLをまだ1度も制したことがないアーセナル。クラブとしての経験値の低さが最大の弱みだ。昨季はマンチェスター・シティが初優勝。

欧州サッカー界に潜む"順番論"からすれば、いつ優勝してもおかしくないが、今回はクジ運には恵まれなかった。初優勝には茨の道が待ち受けている。

 受けて立つのは2番人気のアーセナルか。クラブの格でアーセナルを上回る4番人気のバイエルンか。見どころはここになる。
 
 下馬評の低い残りの4チームは、決勝進出のチャンス到来とばかりいまごろ密かにチャレンジ精神を漲らせているだろう。

アトレティコとドルトムントは伏兵という立ち位置がよく似合うが、PSG、バルセロナはそこまで割り切れるだろうか。

 バルサが最後にCLを制した2014-15シーズン、当時の監督は現PSG監督のルイス・エンリケだった。因縁を感じる。バルサは以降9シーズン、欧州一の座から遠のいている。欧州クラブランキングは12位まで後退。同チームがトップ10から陥落したのは1977年以来、実に47年ぶりの出来事になる。

 その自覚がどこまであるか。現在3位につけるスペインリーグの成績を見る限り、凋落ぶりが明らかとは言えないが、視点を欧州に広げるとそれは顕著になる。8チーム中6番人気という下馬評を見て、チャレンジャーになりきることができるか。PSGも金満クラブながら、今季はリオネル・メッシネイマールもいない。背負うものは少ない。PSGにチャレンジャーとして向かってこられると、バルサは危ない。


 
遠藤航のリバプールは決勝進出が見えた CL、ELのベスト8以...の画像はこちら >>
○EL
準々決勝
ミラン(3)対ローマ(6)
リバプール(1)対アタランタ(5)
レバークーゼン(2)対ウェストハム(4)
ベンフィカ(8)対マルセイユ(7)

準決勝
ベンフィカ×マルセイユの勝者対リバプール×アタランタの勝者
ミラン×ローマの勝者対レバークーゼン×ウェストハムの勝者
(カッコ内の数字はブックメーカー各社による下馬評の順位)

【欧州サッカーはウイングの時代に】

 ELは遠藤航所属の本命・リバプール優位の組み合わせになった。決勝まですんなり勝ち上がるのではないか。アタランタ、そしてベンフィカないしマルセイユに番狂わせを許すとは思えない。

 ミラン、ローマ、レバークーゼン、ウェストハムの4チームのなかから勝ち上がるのはどこか。焦点は"リバプールの相手探し"だが、紙一重の戦いだと見る。

 選手で注目したいのはウイングだ。CL、ELベスト8に駒を進めた16チーム中、左右に両ウイングを据えて戦うチームは12チームを数える。ウイングはつまり毎節、最低24人ほど登場する。交代も含めるとその倍近い選手がドリブル&フェイントを主体とするウイングプレーを競い合うことになる。

 時代は、中盤選手全盛からウイング全盛に変化した。ウイングの活躍度が試合結果に影響を与える割合が増している。

 ウイングプレーが決まった瞬間、スタンドは間違いなく揺れる。歓声に包まれる。

 ヴィニシウス(レアル・マドリード)、フィル・フォーデン、ジェレミー・ドク(マンチェスター・シティ)、ブカヨ・サカ、ガブリエウ・マルティネッリ(アーセナル)、ラミン・ヤマル(バルセロナ)、レロイ・サネ、キングズレー・コマン(バイエルン)、ウスマン・デンベレ(PSG)、ジェイドン・サンチョ(ドルトムント)、ラファエル・レオン、クリスティアン・プリシッチ(ミラン)、モハメド・サラー(リバプール)、モハメド・クドゥス、ジャロッド・ボーウェン(ウェストハム)、アンヘル・ディ・マリア(ベンフィカ)......と、優秀なウイングの名前がずらりと並ぶ。壮観である。

 決勝トーナメント1回戦で姿を消した選手の中にも、フランシスコ・コンセイソン(ポルト)、ヨハン・バカヨコ(PSV)ら記憶に留めておきたいウインガーがいた。気鋭のウイングがきら星のごとく輝いているのが、今季の欧州戦線だ。ウイング天国は日本に限った話ではない。世界ナンバーワンウイングは誰かという視点を携えながら佳境を迎えたトーナメントを楽しむのも、観戦の醍醐味だと考える。