ボルシアMG・U-23日本代表FW
福田師王インタビュー後編

◆福田師王・前編>>「怪物」はなぜ高校卒業後すぐ渡独したのか?

 福田師王は現在、ボルシアMGの敷地内にある寮に暮らす。そのテラスからは何面もの練習場と、トップチームが試合を行なうボルシアパルクが目に入る。

圧巻の光景に、モチベーションはいやが上にも掻き立てられる。

 寮内の廊下の壁には、ここから巣立っていった選手たちの名前が掲示されている。「俺もいつかは......」と飛躍を無意識に誓ってしまう、そんな環境で福田は生活をしている。

福田師王の目標はレヴァンドフスキ ボルシアMGで「クラブのD...の画像はこちら >>
 海外でプレーする日本人選手の誰もが生活面でぶつかるのは、言葉と食事のハードルだ。だがそれも、福田はこの1年間ですでに乗り越えた。

 食事について、福田は「食べ物は寮で出てきたものをなんでも食べますよ。

練習の一環だと思っています。サーモンがでかくて、うまいっす」とのこと。最近では炊飯器を手に入れ、米の炊き方を覚えたそうだ。

 ドイツ語については、オンラインで学習中。だが、「まあでも、そういうところ(言葉が未熟な部分)も結果を残せば自然と認められるんで。それでやってきました」とのことで、ドイツ語を話せるか話せないかは「たいした問題じゃない」と言いきる。

 とはいえ、時々は寂しさも募る。「そういう時はタイミングよく、(板倉)滉くんがご飯に誘ってくれるんですよ。ほんと、それに助けられています」と、晴れて同僚となった大先輩にありがたく世話になっている。

 現在、ボルシアMGツヴァイテ(セカンド)は4部リーグから5部リーグ降格の危機にあり、トップチームに上がった福田は「助っ人」として、その力を求められている。すでにトップ昇格という目標を勝ち取った福田は、余裕を持って4部リーグの試合に臨めるのではないかと聞くと、答えは真摯なものだった。

「いや、トップチームの一員だからこそ、やっぱりツヴァイテで結果を残さないと。

周りからの印象もそうですし、何かそういうのって大事かなというか」

 卒業生が古巣のために全力を尽くすのは当たり前、というようなニュアンスだろうか。

【シオウはクラブのDNAを体現する存在】

 福田は時折「チームとして戦うこと」「勝利することが大事。僕は勝ちたい」などと口にする。また、そういうことは「高校サッカーが教えてくれた」とも。「高卒即海外」というと、効率重視の現実主義な印象も受けるが、福田はそんなこともなく、チームスポーツを戦う熱さを内に秘めている。

 こうしてU-19、ツヴァイテと、ボルシアMGの下部組織を一歩ずつ着実に経てきた福田。そして加入1年でトップチームに昇格した彼の歩みを、ニルス・シュマトケGM(ゼネラルマネジャー)はこう表現する。

「シオウはこれまで、いつでも何度でも、プロの練習でもU-23(ツヴァイテ)でもU-19でも、若手だけのトレーニングにおいても自分らしさを見せてきました。

 彼は国際的にトップクラスの才能があり、クラブのDNAの柱を示しています。私たちとともにある彼の道は『ボルシアの象徴』なのです」

「クラブのDNAを体現する存在」とまで言いきるのは、これまでのプロセスに対する自負そのものであると同時に、今後への期待を抱かせる。

 今後、Jリーグを経由せずに欧州のクラブに移籍するケースが増えていきそうななか、クラブを選択する段階からより慎重になっていく必要はあるだろう。だが、福田とボルシアMGのような関係性は、ひとつの望ましい形となりそうだ。

 福田自身も移籍を決断する前、日本や欧州の複数のクラブで練習に参加したが、「このクラブが一番よかったです。

何より『人』がよかった」と話している。

 これからトップチームで勝負していく福田の持ち味は、何と言っても動き出しだ。ツヴァイテでは個人をアピールする選手が多く、中盤の選手も隙あらば自ら持ち込んでシュートを打ってしまう。前線の福田には、ほとんどボールは回って来ない。それでも少ない機会をとらえて、得点を匂わせる動きは際立っていた。

「自分の特徴は動き出し。

フィジカルとかよく言われるんですけど、自分で言ったことはないんですよ。動き出し、それひと筋でやっています」

【先輩・板倉滉は共演する日を楽しみにしている】

 2024年4月現在、福田と板倉の共演はまだない。トップチームで板倉と一緒にピッチに立つ──それが今の福田の目標のひとつだ。板倉がそう遠くないうちにより高い舞台へと羽ばたくのであれば、残された時間は決して多くはない。

「師王が出たらね、あいつは言うとおりに動くんで(笑)、ゴールを決めてくれると思いますよ」と板倉が言えば、福田は「滉くん、一緒に出たら絶対、裏に一本パスを通してくれるらしいです。その一本にかけます(笑)」と、その日を楽しみにしている。できれば、それはホームがいいと思っている。

「ホームの試合にはまだ出ていないので、そこで滉くんとプレーしたい。ホームで出たら試合前のアナウンスも盛り上げてくれると思うし、サポーターも歓迎してくれると思う。それが楽しみです」

 目標の選手は? 福田にそう聞くと、圧倒的なストライカーの名前を即答した。

「(ロベルト・)レヴァンドフスキ選手(現バルセロナ/ポーランド代表)です。僕はとにかく得点を決める人でありたいし、入るシュートがいいシュートだと思っています」

 ドイツで7度の得点王に輝いたスーパースターのように、福田師王がゴールを重ねる日を楽しみにしたい。

<了>


【profile】
福田師王(ふくだ・しおう)
2004年4月8日生まれ、鹿児島県鹿屋市出身。神村学園中等部時代にDFからFWへのコンバートをきっかけに頭角を現し、高等部時代は3年連続して高校選手権の優秀選手に選出。卒業後にボルシアMGⅡに加入し、2024年1月にトップチームへ昇格する。代表歴はU-16日本代表から各世代のカテゴリーを経験。ポジション=FW。身長178cm、体重70kg。