次世代のサッカーシーンを担うヤングタレントは誰なのか。いつの時代もサッカーファンの興味が注がれるトピックのひとつだが、ここでは、今シーズンに台頭したティーンエイジャーのなかから、とりわけ注目すべき逸材をピックアップして紹介する。

【バルセロナの神童はまだ16歳】

 今シーズンブレイクした10代のなかで際立った活躍を見せているのが、バルセロナの神童ラミン・ヤマル。年齢はまだ16歳だ。

「バルセロナの神童」「レアル入りする17歳ブラジル人」......の画像はこちら >>
 昨シーズンのベティス戦(2023年4月29日)でトップデビューを飾り、15歳9カ月16日というクラブ史上最年少出場記録を更新したヤマルは、今シーズンの第9節グラナダ戦で初ゴールをマーク。それは、ラ・リーガ史上最年少ゴールでもあった。

 その本格ブレイクした今シーズン、ラ・リーガでは第31節終了時点で30試合に出場し、4ゴールを記録。瞬く間にシャビ・エルナンデス監督の重要戦力になった。

 また、昨年9月には飛び級でスペイン代表に選ばれ、デビュー戦(9月8日のジョージア戦)で初ゴールを決め、スペイン代表の歴代最年少出場記録と最年少ゴールを同時に塗り替えるという偉業をやってのけている。

 ラ・マシア(バルセロナの下部組織)出身のヤマルの主戦場は、右ウイング。最大の特徴は繊細なボールタッチと独特のリズムで相手を翻弄するドリブル突破で、利き足の左足を巧みに使う高精度のキックも魅力だ。特にカットインと縦突破を巧みに使い分け、シュートとパスのタイミングの見分けがつきにくい点が、対峙する相手DFにとっては厄介だ。

 パリ・サンジェルマンとのチャンピオンズリーグ準々決勝第1戦でも4-3-3の右ウイングでスタメン出場したヤマルは、国際経験も着々と積み重ねており、市場価格も目下7500万ユーロ(約122億8000万円)に爆上がり中。この先、どのような進化を遂げるのか、今から見続けておきたいスペシャルなタレントであることは間違いないだろう。

【無限の可能性を秘めたフランス人MF】

 同じくラ・マシア出身で、今シーズンのバルセロナでブレイクしたのが、17歳のパウ・クバルシだ。

 トップデビューは、まだ16歳だった今年1月19日のコパ・デル・レイのサラマンカ戦で、以降、あっという間にセンターバック(CB)のレギュラーに定着。

その堂々たるパフォーマンスが評価され、3月22日のコロンビア戦ではスペイン代表デビューも果たしている。

 クバルシの非凡さは、何と言っても現代サッカーのCBに必要とされるパス能力にある。たとえば、左CBで先発したパリ・サンジェルマンとのチャンピオンズリーグ準々決勝第1戦。ラフィーニャの先制ゴールの起点となったのは、クバルシが自陣深くからハーフライン付近のロベルト・レバンドフスキに差し込んだスーパーなパスだった。

 まだ経験の浅い17歳で、あの距離の縦パスを正確にデリバリーするCBはそういない。パリ・サンジェルマン相手にそれをやってのけるクバルシの未来は、相当に明るい。

 その試合で、61分からピッチに登場したパリ・サンジェルマンのMFワレン・ザイール=エメリも、注目のティーンエイジャーだ。

 今年3月に18歳になったばかりのザイール=エメリ。昨シーズントップデビューを果たすと、今シーズンには本格的にレギュラーの座を勝ち取った。さらに代表においても、これまでフランスの年代別代表に選ばれ続けてきて、昨年11月のユーロ予選(ジブラルタル戦)ではついにA代表デビュー。その試合で代表初ゴールまで記録した。

 フランス代表のディディエ・デシャン監督もその才能を高く評価し、今夏のユーロ2024のメンバー入りも濃厚と見られている。

 最大の特徴は、トップレベルの試合のプレッシャーのなかでもブレない、確かなテクニックと卓越したゲームビジョンで、とりわけ攻撃センスが抜群。主戦場の中盤のみならず、ルイス・エンリケ監督の可変システムのキーポジションでもあるサイドバックも難なくこなすなど、戦術理解力も向上中だ。

 リーグ・アンで活躍するためのフィジカル能力も兼備しており、今後どのようなタイプのMFになるのか、無限の可能性を秘めたタレントと言えるだろう。

【17歳のブラジル人FWは来季レアル・マドリードへ】

 ベンフィカのジョアン・ネヴィスも、昨シーズンにデビューして今シーズンにブレイクした19歳のボランチだ。

 1年前に250万ユーロ(約4億1000万円)だった市場価格も、現在は4500万ユーロ(約73億7000万円)に急上昇。ザイール=エメリよりひと足早く、昨年10月のユーロ予選(ボスニア・ヘルツェゴビナ戦)でポルトガル代表デビューも飾っており、順調にいけば、今夏のユーロ2024のメンバーにも選ばれるはずだ。

 マルセイユとのヨーロッパリーグ準々決勝第1戦でもハイレベルなパフォーマンスを披露したジョアン・ネヴィスは、身長174cmと大きくはないが、卓越した戦術眼で相手の攻撃の芽を摘み、高いボール奪取能力を誇る。

加えて、ボールを奪ったあとのパス供給が秀逸で、状況判断に優れた攻撃参加も持ち味だ。ほぼ完成されたMFと言っていい。

 すでにプレミアリーグのビッグクラブが触手を伸ばしているだけに、今夏の移籍マーケットで人気銘柄になることは確実。注目しておきたい逸材だ。

 そしてもうひとり、来シーズンからヨーロッパに上陸予定のブラジル産クラッキ、エンドリッキも現在見逃せないティーンエイジャーと言えるだろう。

 現在ブラジルの名門パルメイラスでプレーする17歳のFWは、2022年12月に2024-2025シーズンからのレアル・マドリード入りを発表済み。

ブラジル代表では昨年11月のコロンビア戦でデビューを飾っており、今年3月24日のイングランドとの親善試合で決勝点となる代表初ゴールを決めると、続く27日のスペイン戦で2試合連続ゴールをマーク。早くも時の人となった。

 特筆すべきは、17歳らしからぬ圧倒的な決定力。鋭い足の振りから繰り出される正確なシュートはもちろん、ゴール前のポジショニングやオフ・ザ・ボールの動きにも非凡さがうかがえる。ブラジル人選手らしいボールテクニックや敏捷性もあるうえ、フィジカル能力も高く、すでにヨーロッパのサッカーに馴染むための基本要素は持ち合わせている。

 近年、ヴィニシウス・ジュニオールやロドリゴを青田買いし、トッププレーヤーに育てたレアル・マドリードが、次なるブラジル人タレントとして獲得しただけに、もはやその才能に疑いの余地はないだろう。低迷するブラジル代表にとっても、希望の光と言える存在だ。

【世界トップになるには、10代でのブレイクが当たり前】

 そのほか、今シーズンはマンチェスター・ユナイテッドのFWアレハンドロ・ガルナチョ(19歳/アルゼンチン代表)とMFコビー・メイヌー(18歳/イングランド代表)、アヤックスのDFヨレル・ハト(18歳/オランダ代表)といった未来を担うティーンエイジャーが次々とブレイクし、それぞれA代表デビューも飾っている。

 キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)やアーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ)がそうであるように、今や世界のトッププレーヤーになるためには10代でのブレイクが当たり前になりつつある。それだけに、その切符を手にした彼らが、今後どのような成長を遂げていくのか、じっくりと楽しみたいところだ。