西村菜那子が注目する大学駅伝のルーキー 後編

(前編:驚異のタイムを持つルーキーも 青学大は「こんなに集まっていいのか」>>)

大学駅伝の勢力図を変えそうなルーキーたち 高校駅伝にも詳しい...の画像はこちら >>

【躍進目覚ましい國學院大と城西大のルーキーは?】

"駅伝に詳しすぎるアイドル"西村菜那子さんが語る2024年度のルーキーたち。前編で紹介した青学大と東洋大に続いて名前を挙げたのは、昨年の出雲駅伝と全日本大学駅伝で3位に入り、西村さんが「ルーキーたちの成長を毎年楽しみにしている」という國學院大だ。

 今年は中川晴喜(藤沢翔陵高出身)、浅野結太(鹿島学園高出身)、尾熊迅斗(東京実業高)の3人が5000m13分台と、大学史上最高とも言えるスカウティングに成功した。

さらに4月6日の世田谷記録会5000mで、飯國新太(國學院久我山高出身)が13分台に突入している。

「中川選手、浅野選手、尾熊選手は全国高校駅伝を経験していません。"雑草魂"とも言えるかもしれませんが、國學院大は高校時代に目立った活躍をしなかった選手が伸びている印象が強いんです。『こんな逸材がいたんだ』と教えてくれる大学です」

 國學院大は、今年の箱根駅伝は集団インフルエンザの影響もあって総合5位に終わったが、そのメンバーが9人残る。2月の大阪マラソンで平林清澄(4年)が日本学生記録の2時間06分18秒で優勝。3月の日本学生ハーフマラソンを制した青木瑠郁(3年)は4月6日の世田谷記録会10000mで28分02秒00をマークしている。

チームは勢いに乗るだけに、ルーキーたちの台頭があれば箱根で初の栄冠を手にすることも夢ではないだろう。

 続いては、昨年度の出雲で2位、全日本で5位、箱根で3位と大躍進した城西大。今年は5000mで14分00秒前後のタイムを持つ青木丈侑(東農大二高出身)、小林竜輝(鹿島学園高出身)、三宅駿(四国大香川西高出身)ら有望な選手が入学した。そのなかで西村さんは、村木風舞(御殿場西高出身)に注目しているという。

「村木選手は春の伊那駅伝の上り区間である3区で28人抜きをした選手で、箱根は5区にチャレンジしたいそうです。山本唯翔選手(現・SUBARU)が卒業したので、『2代目・山の妖精』になるんじゃないかなと期待しています」

【駒澤大は5000m13分のルーキーがゼロも......】

 高校時代の5000mベストでいうと中央大もレベルが高い。七枝直(関大北陽高出身)、岡田開成(洛南高出身)の13分台コンビに加えて、14分10秒前後の選手が5人も入学した。

「岡田選手は、最後の全国高校駅伝は体調不良で出場できず。その悔しさを晴らすかのように、3月23日の中大競技会10000mで28分38秒30をマークしました。

 それから、埼玉栄高のキャプテンだった佐藤大介選手にも注目しています。昨季は全国高校駅伝の3区で区間7位。春の高校伊那駅伝も1区を区間6位と好走したんですけど、途中で飛び出したい気持ちを抑えて、チームのために自分の役割を果たしました。冷静に走れる選手なので、大学駅伝でも活躍してくれるんじゃないでしょうか」

 中大は、来年の箱根は予選会からの出発となる。

名門復活には1年生の活躍も欠かせない。

 まだ名前が出ていない駒澤大はどうなのか。近年は豪華メンバーが入学して、一昨年度は駅伝3冠を達成。昨年度も出雲と全日本を制しているが、今年は6年ぶりに5000m13分台のルーキーがいなかった。

「例年に比べると5000mのタイムは劣りますが、倉敷高出身の桑田駿介選手は面白いですよ。昨年の全国高校駅伝では、4区で2年連続の区間賞。

6月の岡山県選手権10000mは28分台で優勝しています。すごくスリムな選手で、國學院大の平林清澄選手みたいだなと思いながら見ています。駒大高出身の菅谷希弥選手も10000mで28分台のタイムを持っているので、『長い距離に強い選手が多いのかな』という印象です」

 駒大は昨年度の三大駅伝で1年生の出番がなく、今年に箱根を入ったメンバーは5人が卒業した。全日本の5連覇と、箱根の王座奪還には1、2年生の新戦力が必要になりそうだ。

 箱根でシード権を逃した順天堂大は、永原颯磨(佐久長聖高出身)、川原琉人(五島南高出身)、玉目陸(出水中央高出身)、池間凛斗(小林高出身)と5000m13分台ランナーが4人も入学した。永原は3000m障害(8分32秒12)の高校記録保持者で、川原は1月の全国都道府県対抗駅伝1区で区間賞。

玉目は10000mで28分40秒90を持ち、池間は国体少年A5000mで2位に入っている。

「2月の宮古島大学駅伝の取材へ行ったんですけど、合宿に参加していた永原選手が練習を引っ張っていました。すでにチームに馴染んでいましたし、中心的な存在になるんじゃないかと思っています。彼は『箱根駅伝の5区を走ってみたい』と話していますし、3000m障害の選手としても先輩・三浦龍司選手(現・SUBARU)のように学生時代から世界で活躍してほしいです」

【復活の大東大にも楽しみなルーキーが加入】

 永原が1区を務めた昨年12月の全国高校駅伝で、2時間01分00秒の大会新記録を打ち立てた佐久長聖高。2区を好走した遠藤大成は青山学院大、3区で日本人トップの快走を見せた山口峻平は早稲田大、6区で区間賞に輝いた吉岡斗真は日体大に進学した。

「佐久長聖高では永原選手が目立つ存在でしたが、山口選手は春の高校伊那駅伝の上り区間の3区で区間賞・区間新、今年の都道府県駅伝は5区で区間賞と、駅伝では日本人選手に負けなしだったんです。

チーム内では永原選手より山口選手のほうがエース、という感じだったと思います。すごく真面目な選手で、お母様が毎月送っていた陸上競技の専門誌を読むのが楽しみだったそうです。早大でも活躍してくれるでしょう」

 また、箱根駅伝で9年ぶりにシード権を獲得した大東文化大にも楽しみなルーキーが入学した。昨年のインターハイ5000mで6位(日本人2位)、5000m13分52秒42、10000m28分33秒58のタイムを持つ大濱逞真(仙台育英高出身)だ。

「大濱選手は、中学時代に真名子圭監督からスカウトされて仙台育英高に入学した選手です。高校時代は1年間、真名子監督の指導を受けていますね。大学で再び真名子監督のもとで走ることになり、さらに飛躍してくれると思っています」

 各大学に楽しみな1年生が入学したが、今後の大学駅伝はどのような展開になるのか。西村さんは"新たな戦い"にワクワクしているという。

「今年の第100回大会でひと区切りついて、箱根駅伝はリスタートを切ることになります。そのタイミングで黄金世代と言ってもいい学年の選手たちが1年生として入学しました。5000m13分台ランナーも多いですし、トラックシーズンで勢いをつけて、出雲、全日本、箱根と重要な区間で活躍してくれるんじゃないかなと期待しています。それぐらい楽しみな世代なので、駅伝ファンのみなさんには、上級生になる前に自分だけの"推し"を見つけてほしいなと思います」

【プロフィール】
西村菜那子(にしむら・ななこ)

1997年8月11生まれ。長野県出身。2015年にNGT48第1期生オーディションに合格。両親の影響で箱根駅伝を見るようになり、現在は大学駅伝だけでなく、あらゆる駅伝大会に精通している。2022年9月にNGT48を卒業し、舞台など活動の幅を広げている。