箱根駅伝2025
全チーム紹介 前編
【前回王者の青学大、3冠を目指す國學院大の状況は?】
2025年1月2、3日に開催される第101回箱根駅伝は次なる100回に向けてのスタートになる。青山学院大、國學院大、駒澤大が"3強"と呼ばれているが、どんなドラマが待っているのか。今大会に参戦する全21チームを2回に分けて紹介していく。
まずは、連覇を目指す青学大。前回は2区・黒田朝日(3年)と3区・太田蒼生(4年)が区間賞。5区・若林宏樹(4年)が区間2位・区間新で往路をぶっちぎった。この3人に加えて、5000m(13分18秒51)と10000m(27分43秒33)で青学大記録を塗り替え、出雲1区と全日本2区で区間賞を獲得した鶴川正也(4年)が往路に入れば、前回のような"独走V"が再現できるだろう。
さらに復路メンバーも、前回6区で2位の野村昭夢(4年)、同8区で1位の塩出翔太(3年)らがいる。原晋監督は「普通に走れば独走できる。2分以上の差をつけて山決戦に臨み、復路はピクニックランといきたい」と余裕たっぷりだ。11月23日のMARCH対抗戦10000mで鶴川、黒田、若林が27分台をマーク。この記録は例年の水準と比べて30秒ほど高い。箱根駅伝へのピーキングが抜群にうまい青学大。調整に狂いが生じなければ、2年連続8回目の優勝が見えてくる。
出雲駅伝を5年ぶりに制して、全日本大学駅伝で初優勝。
ほかの往路区間は、1、2年時に3区(ともに5位)を好走している山本歩夢(4年)、箱根で1区(12位)と3区(4位)を経験している青木瑠郁(3年)、前回4区で4位の辻原輝(2年)が有力候補か。チーム戦略は"復路勝負"を意識しており、前田監督は「58分30秒を想定している6区はやってみないとわからない部分がありますが、復路重視のオーダーなら往路で2分差だったら逆転できるかなと思います。(主力を)1枚往路に回すとなると1分半切りぐらいじゃないですか」と読んでいる。
復路は、出雲と全日本で連続区間賞を獲得した野中恒亨(2年)、5区候補に挙がっている選手らが入ることになるだろう。復路の戦力には自信を持っているだけに、往路で大きく引き離されないことが3冠達成のポイントだ。
【3強の一角・駒大、それに続きそうなのは創価大】
"3強"の最後の一角、駒大は出雲駅伝と全日本大学駅伝で2位。ともに佐藤圭汰(3年)を欠いたなかで残した結果だ。出雲は國學院大とのアンカー勝負になり、篠原倖太朗(4年)が平林に敗れたが、全日本では強さを感じさせるレースを見せた。
2区終了時でトップから2分23秒も引き離されながら、怒涛の追い上げを披露する。7区ではエース篠原が、青学大・太田、國學院大・平林を抑えてハイレベルの区間賞を獲得。最終8区は山川拓馬(3年)が日本人歴代2位の57分09秒で走破して、國學院大に28秒差まで迫っている。
箱根では2区が篠原、5区は山川が有力。藤田敦史監督は山川を2区に起用したい考えも持っているようだが、山川本人は「68分台を出したい」と"山の神"を目指している。伊藤蒼唯(3年)は1年時に6区で区間賞を獲得しているものの、今回は平地区間の起用も考えらえる。
全日本2区で失速した桑田駿介(1年)は12月1日の日体大長距離競技会10000mで28分12秒02をマークして、自信を取り戻した。上尾シティハーフマラソンでは帰山侑大(3年)が2位(1時間1分59秒)、村上響(2年)が3位(1時間2分04秒)、谷中晴(1年)が4位(1時間2分05秒)に入った。佐藤も箱根には間に合う見込みで、レース全体を占う意味でもキーマンになりそうだ。
3強に迫る戦力を誇るのが、出雲4位、全日本4位の創価大だ。出雲は留学生を起用せずに過去最高順位。全日本も6区終了時で3位につけるなど、箱根駅伝への期待が高まっている。
今季はとにかくエース吉田響(4年)の充実が大きい。出雲2区は駒大・佐藤が持つ区間記録を意識して突っ走り、区間2位に32秒差をつけるダントツの区間賞。全日本も2区で駒大・佐藤が持つ区間記録を目指して、序盤から攻め込んだ。
吉田は、「4年間"山の神"を目指してきたので、5区を68分台で走って、区間記録(69分14秒)を塗り替えたい」と意気込んでいるが、2区抜擢の可能性も十分に考えられる。さらに、前回2区(5位)を担ったスティーブン・ムチーニ(2年)と、全日本8区で区間2位と好走した野沢悠真(3年)も往路候補。そこに出雲と全日本を欠場した小池莉希(2年)が戻ってくれば、目標とする「往路優勝しての総合優勝」に近づけそうだ。
【ほかにトップを狙えそうな2大学は?】
前回3位の城西大も面白い。昨季は出雲2位、全日本5位と3大駅伝すべてでチーム最高順位を更新したが、今季は出雲が7位で全日本が6位。前年を下回ったことで、箱根駅伝の目標を「4位以内」としている。
そのなかでキーマンとなるのが、八王子ロングディスタンス10000mで27 分45秒12を叩き出した斎藤将也(3年)だ。過去2回の箱根は2区を任されているが、櫛部静二監督は5区での起用も示唆している。出雲と全日本で2年連続の区間賞を獲得しているヴィクター・キムタイ(3年)、5月の関東インカレ1部10000mで2位に入った主将・平林樹(4年)ら主力選手は超強力。往路をかき乱す存在になるかもしれない。
前回7位の早稲田大は、出雲で6位(IVYリーグ選抜を除けば5番目)、全日本5位と安定感のある戦いを見せている。
箱根駅伝は「3強崩し」を目標に掲げており、どんな戦略で臨むのか。今回も2区の山口と5区の工藤が攻撃ポイントになるだろう。特に工藤は、出雲6区(2位)、全日本8区(3位)でも結果を残しており、2度目の箱根で"山の名探偵"というニックネームがさらに浸透するはずだ。
主将・伊藤大志(4年)は前回、体調不良で欠場したが、全日本は4区を5位と好走。本番でもポイント区間で仕事を全うするだろう。ほかにも、10000m27分台の石塚陽士(4年)、全日本7区5位の長屋匡起(2年)、全日本5区3位の山口竣平(1年)らが控えている。花田勝彦駅伝監督は「先頭を走る経験をさせたい」と話しており、1区で好スタートを切ることができれば、そのシーンが実現するかもしれない。
(全チーム紹介 後編:シード権争いやさらに上位、予選会突破から「下剋上」が期待できそうな大学は?>>)