青山学院大の連覇で幕を閉じた第101回箱根駅伝。レース前、識者3人にトップ10を予想してもらったが、実際の順位と比べながらレースを総括。
【全体的に予想通り。創価大は復路の踏ん張りが課題】
■佐藤俊(スポーツライター)
(予想) (結果)
1)駒澤大 1)青山学院大
2)青山学院大 2)駒澤大
3)國學院大 3)國學院大
4)創価大 4)早稲田大
5)城西大 5)中央大
6)中央大 6)城西大
7)早稲田大 7)創価大
8)法政大 8)東京国際大
9)立教大 9)東洋大
10)帝京大 10)帝京大
今回の箱根は、上位(1~3位)、中位(4~7位)といったグループ分けはしやすかったものの、順位まで読むのは難しい駅伝だった。
まず上位。1位に予想した駒澤大と、2位の青山学院大の順位が逆転する結果になったが、青学大が総じて隙のない駅伝を見せて総合優勝した。駒大の藤田敦史監督は往路4位に終わった後、「(5区の)山川(拓馬)がなぁ」と悔しげに語ったが、その山川は今季絶好調で、5区での区間新記録の更新も期待された。
だが、思ったような走りができず区間4位に終わり、青学大の若林宏樹に1分44秒もの差をつけられたのが痛かった。逆に青学大は、5区と6区でともに区間新を出して他校を圧倒し、この2区間でほぼ勝負を決定づけた。1位と2位は山の走りが明暗を分けたと言えよう。3位の國學院大は、山を準備しきれずに優勝争いに絡めなかった。
中位は順位こそ違ったが、予想した4チーム(創価大、城西大、中央大、早稲田大)でほぼ予想通りだった。ただ、7位に終わった創価大は、往路の走りを見れば5位以上はキープしたかった。
早稲田大は、3区で3位だった山口竣平と5区で2位だった工藤慎作の走りが効いて、復路に勢いをつけた。キーマンに挙げた石塚陽士は9区で15位とブレーキになったが、他選手が持ち味を発揮し、早稲田大らしい粘りのある駅伝を見せた。中央大も1、2、3区で流れを作り、8区でブレーキがあったものの、ラストの2区間で順位を整えるなど"駅伝力"が戻ってきており、来季が非常に楽しみだ。
シード権争い(8位以降)は四つ巴のスパート勝負になり、東京国際大、東洋大、帝京大の3校が制して伝統校の意地を感じたが、新興校である東京国際大の粘りは見事としか言いようがない。予想で9位に挙げた立教大は、7区でブレーキがあってシード権を争えなかった。往路は8位でシード圏内に入り、すばらしい駅伝を見せただけにもったいない復路になった。
来年は青学大の3連覇がかかる。駒大、國學院大、早大、中大あたりが「打倒・青学」の包囲網を敷けば、面白い駅伝になりそうだ。
【駒大は予想以上の走り。中大はさらなる飛躍に期待】
■酒井政人(スポーツライター)
(予想) (結果)
1)青山学院大 1)青山学院大
2)國學院大 2)駒澤大
3)創価大 3)國學院大
4)駒澤大 4)早稲田大
5)早稲田大 5)中央大
6)城西大 6)城西大
7)東洋大 7)創価大
8)法政大 8)東京国際大
9)帝京大 9)東洋大
10)立教大 10)帝京大
青学大は2区の黒田朝日、5区の若林宏樹、6区の野村昭夢が想定以上とも言える快走を披露。
駅伝3冠を目指した國學院大は、全体的に走りが重かった印象がある。V候補として注目を浴びた重圧があったのかもしれない。それでも、往路6位から最後は3位まで順位を押し上げて選手層の厚さを見せつけた。
一方、4位と予想した駒大が2位に入った。5区の山川拓馬以外は期待以上の走りだったのではないだろうか。特に7区に入った佐藤圭汰は、区間記録を1分近くも短縮。チームとして復路を大会新で制したのは正直、予想外だった。
創価大は2区の吉田響が強烈な走りを見せて、3区のスティーブン・ムチーニが青学大をかわして2位に浮上。往路でインパクトを残したが、9、10区で順位を3つ落としたのが悔やまれる。
5位と予想した早大が4位で、6位と予想した城西大が6位。シード権争いに飲み込まれることなく上位でレースを終えた。欲をいえばキリがないが、両校とも大きなミスはなく、しっかりと実力を発揮した結果だっただろう。
シード権争いは今回も熾烈だった。そのなかで法大は、5000m・10000mで大学記録を塗り替えた大島史也の不在もあって、今回は15位と振るわなかった。63年ぶりのシード権を期待された立大も、往路を8位で折り返したが、復路で13位まで弾き出された。
一方、東京国際大は2区のリチャード・エティーリで波に乗ったとはいえ、9、10区で再浮上してのシード権獲得は素晴らしかった。東洋大は2区に登録された梅崎蓮を欠きながら9位に入り、20年連続シードを確保。全日本で13に沈んだが、チームは底力を発揮した。前回9位の帝京大も往路14位から最後は総合10位にピタリと合わせてきた。
ピーキングに苦しむかと思われた中大は、10000m27分台のタイムを持つ選手を並べた1~3区のロケットスタートが見事だった。藤原正和駅伝監督は調整法に自信を得たようで、来年の箱根駅伝では今回以上の"スピード駅伝"を披露してくれるだろう。
【シード権を獲得できなかった大学も力を見せた】
■折山淑美(スポーツライター)
(予想) (結果)
1)青山学院大 1)青山学院大
2)國學院大 2)駒澤大
3)駒澤大 3)國學院大
4)創価大 4)早稲田大
5)早稲田大 5)中央大
6)中央大 6)城西大
7)帝京大 7)創価大
8)城西大 8)東京国際大
9)大東文化大 9)東洋大
10)法政大 10)帝京大
往路に自信があった青学大は、1区と3区が少し伸び悩んだとはいえ、2区と4区は期待通りの走りをした。そして山の5区と6区はともに区間新で、追いかけてくるライバルとの差を大きく広げる走り。大きなミスがない盤石の走りを見せての総合優勝は、多くの人が想定していただろう。選手たちも、箱根には自信を持っていることを感じる。
それを追いかけた駒大も、自信を持っていた5区で青学大に大きく差を開かれる誤算はあったが、藤田敦史監督が復路勝負のキーマンとして起用した7区・佐藤圭汰がきっちり走り、その後も2年生が着実につないだ。往路で打つ手がなくなった昨年とは違い、往路主要区間で1年生に経験を積ませられた上に、復路優勝の達成、総合タイムを青学大と2分48秒差にとどめたのは次につながる。國學院大も、3冠のプレッシャーのなかで、往路では出遅れながら総合で3位。さすがの総合力の高さを見せた。
4位から7位の早大、中大、城西大、創価大は、若干の誤算の区間もあったが、期待する選手たちがしっかり結果を出した。それぞれが責任感を持って、万全な準備ができた結果だろう。それに対して、法大はエースの大島史也を使えず、大東文化大も2区候補だった西川千青を復路に回す苦しい状態。そのなかで持てる力を往路に回したが、ともに出遅れて流れに乗れなかったのは予想外だった。
シード権争いは激しい競り合いになった。全日本13位と苦しんでいた東洋大は、前回2区・区間6位の梅崎蓮を使えないなか、2区で19位まで落として流れが途絶えたと思った。だが、その後に起用された1年生3人が踏ん張り、3、4年生もこれまで蓄えた力を発揮して往路9位、。復路7位で総合9位とシード権を獲得した。その粘りは、伝統を背負った強さを実感させた。
シード権を7秒差で逃した順天堂大は、エースの浅井皓貴が万全ではなく1区で起用。先を見据えて2区と5区に起用した1年生も厳しい走りで往路は13位も、2年生を4名起用した復路は全員が区間ひと桁で復路6位と健闘。最後までシード権争いに加わり、予選会10位とは思えない粘りを見せてくれたのは驚きだった。
3、4年生を揃えて9区までシード権争いに加わった日本体育大の健闘も目についた。東洋大や順大と同様に日体大は歴史もあって、高い素質の選手も多い。選手たちが開き直り、闘志をむき出しにすれば戦える力が見せられることも確認できた。