今年の第101回箱根駅伝2区で7人抜きを果たし、立教大の往路8位に大きく貢献した馬場賢人が真のエースとなるべく、その後も成長を続けている。2月の香川丸亀国際ハーフマラソン(兼日本学生ハーフマラソン)では日本人学生歴代3位の1時間00分26で快走。
【最初から突っ込み、最後まで粘るスタイルが奏功】
太田智樹(トヨタ自動車)が日本人で初めて60分の壁を突破するなど好記録に湧いた2月2日の香川丸亀国際ハーフマラソン。先頭集団は入りの5kmが14分05秒、10km通過が28分02秒と驚異のハイペースで進んだ。
立教大3年の馬場賢人はこのハイペースに食らいつき、59分台を目指す太田や篠原倖太朗(駒澤大4年)らに果敢に挑んだ。
馬場のトラック10000mの自己ベストは28分40秒67。10kmの通過タイムはそれを大幅に上回っており、ややもすると、無謀とも捉えられかねないペースだった。
「積極性と無謀との線引きがすごく難しいので、『自分のなかでコントロールしていきなさいよ』と(馬場に)言っていたのですが......。でも、箱根の2区でも結構ガツンと入っていたので、(丸亀でも)いくことができたのかなと思います」
髙林祐介・立大駅伝監督も少し懸念していたが、これが馬場のレース運びであり、持ち味でもあった。
「戦略を立てて終盤に上げていくよりも、最初から突っ込んでいって、粘ってラストまで耐えるほうが自分には向いています。箱根の時とだいたい同じぐらいのペースだったので、"これはいけるな"と思って、とりあえず粘れるところまでついていこうと思っていました」
8km過ぎのアップダウンで多くの学生ランナーが堪らずに後退したが、ここでも馬場は怯むことなく先頭集団に食らいついた。10kmを過ぎても先頭集団にいた日本人学生は篠原と馬場のみ。併催の日本学生ハーフマラソン選手権の出場者では、馬場だけだった。
14kmを前についに先頭集団に後れをとったものの、ここからの粘りもすごかった。
「体がきつく、呼吸もだいぶきつかったんですけど、脚はわりと動いていたので、なんとか大幅に崩れることなくいけました。
後半、ひとりになったんですけど、前に外国人選手がいたので、そことの差が開かないように粘りました」
終盤、箱根5区で存在感を示す工藤慎作(早稲田大2年)には逆転を許したものの、先行していたジェームス・ムトゥク(山梨学院大3年)を抜き去り、ほかの外国勢にも競り勝って6位でフィニッシュした。
記録は「61分半を切るくらいを狙っていた」というが、それどころか、日本歴代10位、日本人学生歴代3位となる1時間00分26秒の好記録。同期の國安広人が持っていたハーフマラソンの立教大記録を1分41秒も塗り替えた。
「箱根の(ハーフマラソン・21.0975kmの)通過でも60分台は出ていたので、そのぐらいのタイムを出せたのは評価していいと思います。
自分でもこの順位を取れて結構びっくりしています。箱根と2戦連続で走れて、一つひとつのレースに合わせる力がどんどん上がってきていると思います」
今年の箱根駅伝はエース区間の2区(23.1km)で区間7位。丸亀ハーフでも好結果を残し、馬場は手応えを口にしていた。
また、併催の日本学生ハーフでは2位となり、今年7月にドイツで開催されるワールドユニバーシティゲームズの日本代表にも内定した。
【走りではエースとして、学生生活では寮長として】
この1年の馬場の活躍は目を見張るものがあった。春先からトラックで存在感を示すと、秋以降はまさにエースと呼ぶにふさわしい活躍を見せてきた。
10月の箱根駅伝予選会では日本人では3番手となる個人15位となり、トップ通過に大きく貢献。
そして、今年1月の箱根駅伝ではエース区間の2区で堂々とした走りを見せた。16位でタスキを受けた馬場は、序盤から積極的に飛ばし、一時は5位集団を牽引した。箱根駅伝史上に残るハイレベルな2区で、1時間06分32秒の好タイムで走り区間7位。7人抜きと健闘を見せた。
「自分のなかでも大きく成長できたレースになったと思います。格上の選手たちと戦えたので、"(強い選手にも)ついていけるんだ"っていう自信になりました」
箱根駅伝ではこれまでも1年時が4区16位、2年時が3区8位と往路を担ってきたが、ここまでの足跡を辿ると馬場の成長を見てとれる。
そして、丸亀ハーフでの好走につながっていく。
「"しっかり攻めていくこと"と"勝負すること"がテーマ。『箱根2区の走りがまぐれと言われないように、しっかり走りなさいよ』と送り出しました。私としては、入賞を狙えればいいな、くらいに思っていました。本人には言っていなかったですが......。
うまく突っ込んで、篠原君と競って(先頭集団に)連れていってもらって、離れてからも我慢できるのは2区でも証明していましたが、丸亀でもそれをしっかりできたのは良かったと思います」
髙林監督も、箱根2区と丸亀ハーフの馬場の走りを高く評価していた。
好結果を連発したことで、新シーズンの馬場はこれまで以上に注目を集めることになるだろう。前半戦は、全日本大学駅伝の選考会がない分、個人のレースに全力を注ぐことができる。
「学生トップのほうでしっかり戦って、一つひとつの試合で結果を出して、名前を残せるようにしていきたいです」
大きな目標こそ口にしないものの、馬場はこのように新シーズンへの決意を固めている。また、7月のワールドユニバーシティゲームズは、初めて臨む世界大会だ。
「日本代表として走るので恥ずかしくない結果をしっかり残したい。丸亀でタイムが出たので、これに近い順位、タイムを狙っていきたいです」
日の丸をつけて馬場がどんな走りを見せるのか、楽しみだ。
秋には再び箱根駅伝予選会が待ち受ける。立教大は、55年ぶりに予選会を突破した第99回大会から3大会連続で本大会に出場中で、着実に順位を伸ばしている。今年の箱根駅伝は、馬場の激走もあり6区までシード圏内で進めたが、結局13位に終わった。シード権をはっきりと視界に捉えながらも、あと一歩が届かなかった。
「(今年の箱根で)シード権を取れなかった悔しさを、引き続き、チーム全員で持ちつつ、予選会トップ通過を目標に頑張っていきたいです」
まずは予選会を2年連続でトップ通過。
「事務的なことが好きなので」
寮長としてチームの風紀を整えつつ、もちろんエースとして走りでチームを引っ張っていく。