J1開幕5試合分析 前編 今季期待のクラブ

 J1リーグは開幕から5試合を終え、昇格組のファジアーノ岡山や清水エスパルスの好スタート、名門の不振など、今季も力の拮抗したリーグになりそうな様相だ。そんななかでも緩やかに上位グループ、下位グループが見えてきた。

【強い鹿島が帰ってきた】

 上位グループでスタートダッシュに成功したクラブの筆頭は、当然ながら現在首位を走る鹿島アントラーズである。開幕戦こそ湘南ベルマーレに0-1で敗れたものの、その後は4連勝。ホーム25試合連続無敗というJリーグタイ記録を達成しながら勝ち点12で単独首位に立っている。

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 今季から鬼木達新監督になった鹿島だが、5試合で11得点3失点と、早くもこの5試合でチームの戦い方、リズムをつかんだ様子だ。新戦力のレオ・セアラ、小池龍太がチームに素早くフィットし、クオリティとバランスをもたらしている。

 鹿島の4連勝で共通するのは、どの試合も相手よりボール保持率は低いが、シュート数は多いことだ。前線からの激しいプレッシングからチーム全体でのタイトな守備。ミドルサードまで運ばれると、前線が素早くプレスバックしながらコンパクトな陣形でスペースを与えない。この守備の強度と運動量は目を見張るものがある。

 そこでボールを奪えば鋭いカウンターを発動し、鈴木優磨とレオ・セアラというJ屈指の2トップによる質の高いフィニッシュワークで仕留める。強固な守備からキレのあるカウンター、日本人とブラジル人2トップのクオリティ。強い鹿島が帰ってきたと感じさせる圧巻の4連勝だった。

【湘南はクラブ初の開幕3連勝】

 その鹿島を5戦無敗の勝ち点1差で追うのが湘南だ。開幕戦で鹿島に1-0で競り勝つと、そこからクラブ初となる開幕3連勝を達成した。

すべて1点差ゲームという僅差をものにし、スタートダッシュに成功して勢いに乗っている。

 注目は今季から21歳にしてキャプテンを任された鈴木章斗と23歳の福田翔生の若き2トップだろう。鈴木は第2節セレッソ大阪戦で2ゴール、第3節浦和レッズ戦で決勝点、福田は鹿島戦で決勝点、浦和戦で先制点と、ふたりのゴールによって3連勝をつかんできた。

 そんな湘南の好スタートは、就任から5シーズン目となる山口智監督のもとで積み上げてきたサッカーが支えている。それはスタッツにもよく表れ、タックル総数1位、1vs1勝利総数1位、ブロック総数2位、こぼれ球奪取数6位と、持ち前のハードワークにより守備面で軒並み高い数値を記録している。

 それだけではない。チャンスクリエイト総数3位、ゴール期待値1位と、いい守備から攻撃につなげ、攻めきれるのが今の湘南である。3連勝した試合では、どのゲームでも相手より多くのシュートを放ち、競り勝ってきた。

 例年は得点力不足に悩まされてきた湘南だが、チャンスの数によってそれを補っている。直近2試合は引き分けているが、この勢いがどこまで続くか見ものである。

【過密日程のなか地力を見せる広島】

 サンフレッチェ広島はACL2の日程の都合上、消化試合数がひとつ少ないが、それでも勝ち点10で3位につけている。ここまで3勝1分と無敗だが勝った試合はすべて1点差。安定したゲームというより、勝負強さによって僅差をものにしてきた印象だ。

 広島がいまいちパワーを発揮しきれない試合が多いのは、ACL2の過密日程による疲労が原因だろう。ミヒャエル・スキッベ監督は先発メンバーを固定しがちで、主力選手には明らかな疲労が見てとれる。ただ、それでも勝ちきってしまうところに地力を感じる。

 今季の広島は昨季からのベースに加え、ジャーメイン良や田中聡といった新戦力がスムーズにフィットし、よりスケールを増している。そのなかでも注目したいのは、大卒ルーキーの中村草太だ。

 中村は圧倒的なスピードに高いテクニック、決定力を武器に、今季公式戦7試合で5得点と、センセーショナルな活躍を見せている。関東大学リーグ1部で2年連続の得点王・アシスト王は伊達じゃない。リーグでも開幕のFC町田ゼルビア戦と、第5節の横浜FC戦で決勝点を決め、チームを勝利に導いた。この紫のワンダーボーイが今季どこまで飛躍するのか。

【サッカーが変わった柏、昨年から進化した町田】

 今季の序盤の主役クラブのひとつは、間違いなく柏レイソルだろう。昨季はなんとか残留を果たした柏だったが、今季からリカルド・ロドリゲス新監督が就任すると、たちまち魅力的なサッカーを展開。開幕から4試合で3勝1分と好スタートを切った。

 昨季は守備に重きを置き、カウンターが主体のチームだったが、リカルド・ロドリゲス監督は自分たちがボールを握るサッカーを志向。どの試合でも相手より高いポゼッション率を記録し、主導権を握ってきた。

 1-3で敗れた第5節鹿島戦では、ゴール前でのクオリティに相手との差を感じたが、この魅力的なサッカーでどこまで勝ち星を積み上げられるのか興味深い。

 最後は昨季J1初挑戦ながら3位と躍進した町田。今季は開幕の広島戦で敗れ、黒星スタートとなったが、徐々に今季の戦い方が馴染んでくると直近2試合では連勝と勢いに乗ってきた。

 昨季前半戦は韓国代表FWオ・セフンの空中戦の強さを軸に相手を圧倒した。しかし、後半戦には対策され、行き詰まった。今季はオ・セフンの高さも生かしながら、引いてくる相手にはボールを握り、相手を引き出してからロングボールで裏を狙うという形も志向する。

 その形がハマってきたのが直近の2試合。ともに2得点と複数のゴールを奪い、町田らしい守備の強さで勝ちきってきた。西村拓真、岡村大八、前寛之ら新戦力もすでにフィットし、チームはさらに厚みを増している。2年目のJ1でも町田は躍進できるのか注目したい。

後編「開幕5試合で見えた今季苦戦しそうなクラブ」>>

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