EASLで日本勢が2年連続東アジアの頂点に 韓国人記者は「も...の画像はこちら >>

EASLの現場から見たBリーグの現在地 前編

【日本勢が連覇達成】

 マカオと言っても、世界遺産など歴史的な名所が集まり旧宗主国・ポルトガルの情緒が色濃く残る旧市街ではない。ホテルやカジノを含んだ統合型リゾート施設が居並ぶコタイと呼ばれる、趣よりも絢爛さが際立つ新興の開発地区が東アジア最強のバスケットボールチームを決する舞台となった。

 3月7日から9日にかけて、この場所で「東アジアスーパーリーグ(EASL)・ファイナル4」が開催された。

ホーム・アンド・アウェイ方式によるシーズン制となって2年目となった同リーグ。今年の同イベントの開催地には、統合型リゾートの「スタジオシティ・マカオ」が選ばれた。

 結果、Bリーグ代表の広島ドラゴンフライズが決勝戦で桃園パウイアンパイロッツ(台湾・P.リーグ+代表)を72-68で下し、昨年度の千葉ジェッツに続いて日本勢の連覇を達成した。

 今年度は広島と琉球ゴールデンキングスの2チームが早々にファイナル4への切符を手にしただけに、その時点では成長を続けるBリーグの強さが示された形となっていた。台湾の桃園とニュータイペイキングスはその後、残りのふたつの椅子を獲得している。

 琉球がファイナル4の準決勝で敗れたため、「Bリーグ勢強し」の主張は完全には成り立たなかったが、Bリーグは現在の東アジアのバスケットボール界において強い存在感を示しているのは間違いない。そのことは、現場で取材をする他国の記者たちの言葉が証左となっている。

【日本の発展に隔世の感】

 孫大範氏は韓国の大手放送局、KBSでバスケットボールコメンテーターを務める人物で、トップリーグがまだ実業団中心の日本リーグ(JBL)時代から日本の同競技を俯瞰してきたベテラン。現在のBリーグの発展には隔世の感を覚えている様子だった。

「かつては韓国バスケ界が日本に手ほどきをする側であった」という孫氏は、「もはやBリーグはKBLとは同じレベルで語ることができない」とその大きな発展ぶりに感嘆している。

 競技面について話が及ぶと孫氏は「日本人選手は元からスピードはあったものの、それを十全に生かすだけの精神性がついてきていなかったように感じる」と、昔と現在を比較する。

「今の日本の選手たちには自信が備わってきているように見えます。そして、元からの速さは健在ですから、かなり成長をしたと思います。

昔は外国籍に頼る傾向がありました。ですが今のBリーグの上位のチームなどではむしろ、日本人選手が外国籍選手たちをけん引するような場面も見受けられます。だからこそ、日本のバスケットボールは成長したわけです」

 Bリーグと韓国・KBLは2019年よりパートナーシップを結んでいるが、孫氏はBリーグが力を入れているマーケティングやブランディングの部分で、KBLのチームが学ぶことができると語った。

「(KBLだと)ソウル以外の小規模な都市を本拠とするチームは、ブランディングやファンベースを拡大するという点で難しさに直面しているかもしれません。しかし、例えば宇都宮は大きな都市ではないにもかかわらず、ブレックスは大きなファンベースを築いています。KBL側からすればそういったチームから知見を得ることができますし、反対にKBL側から日本に対してなにか有益なものをもたらせるかもしれません。ですから、提携は双方にとって意義のあることだと感じています」

【Bリーグにある大きな志】

 中国出身の趙環宇氏は、中国女子リーグ・WCBAのチームの元重役で、現在は「我愛女藍(I Love Women's Basketball)」というサイトを運営している。中国人選手がいるという理由からBリーグに関心を抱き始めた趙氏。それでもまだ知っているチームは数えるほどだというが、同リーグのビジネス面での伸長には大きな関心を寄せているようだった。

「Bリーグには大きな志があると思います。彼らは国外にもリーグの存在を認知してもらいたいと精力的ですし、実際、海外のいくつかの国・地域に放送権を販売していると聞きました。自分たちのできる枠に留まらずに、さまざまなことに取り組んでいこうとする姿勢には感心させられます」

 EASLには現状、中国・CBAのチームは参加していない。

同リーグは長年、アジアでは最も競技レベルの高いリーグと認識されてきた。趙氏は「もしCBAのチームがEASLに参戦すれば優勝をする可能性が高いだろう」という言葉を、矜持とともに述べた。

 それでも彼は、プロリーグとしての成長が留まることのないBリーグについて「とても注目している」と話す。

「Bリーグのいくつかのチームは大きな収益を上げていますよね。彼らはバスケットボールで稼ぐことができている。このことはCBAとは大きく異なっています。CBAの大半のチームはバスケットボールでお金を稼いでいるとは言いがたい。その点、Bリーグは純粋なプロフェッショナルなリーグだと言えます。Bリーグのチームはバスケットボールで稼ぎ、そしてそれを還元する形でファンに喜んでもらっています」

 中国の人たちは「国外のことを気にかけていない」と言う趙氏。彼自身は、自国がEASLに参戦していないにもかかわらず、開催地のマカオに来ていたのは「異なる文化やバスケットボール環境に触れるため」で「EASLには自分の『バリア』を破る機会を与えてもらい感謝している」と語った。その言葉尻からすると、自国のファンに対して多少残念に感じている様子だった。

「BリーグはCBAよりも世界でより大きな影響力を持っていると思います。

彼らが多くの注目を集めていることがその証左です。Bリーグには台湾での公式ファンページがありますし、英語のページもあります」

 趙氏は、今回のファイナル4に出場している琉球ゴールデンキングスを例に挙げた。

「(ファイナル4)準決勝の琉球と桃園の試合を見ましたが、琉球がいかに強固なファンベースを有しているかが伝わってきました。彼らはとても組織だっていて、同じ応援文句を口にし、同じジェスチャーで応援をしていて整然としていました。それがとても印象的でした」

後編に続く>>

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