5月2日、有明アリーナ。SVリーグ女子チャンピオンシップ決勝の火ぶたがきられる。
レギュラーシーズン1位の大阪マーヴェラス、2位のNECレッドロケッツ川崎の2チームが、チャンピオンシップ準決勝を勝ち抜いて決勝に進出している。両チームは、昨シーズンのVリーグでもマーヴェラスがレギュラーラウンド1位、レッドロケッツが2位だった。だがファイナルステージでは立場が逆転し、後者が戴冠した。
すなわち、現時点では「順当な決勝カードになった」と言える。拮抗した実力を持つチーム同士の対決、SVリーグ初代女王の座に就くのは―――。
今年1月、筆者はレッドロケッツがマーヴェラスをセットカウント3-2と逆転で下した一戦を取材している。ホームのレッドロケッツは、佐藤淑乃が両チーム最多の27得点を記録した。日本代表のスーパースターだった古賀紗理奈から引き継いだ背番号2にふさわしい活躍ぶりだった。1セット目を先取した後、第2セット、第3セットは落としたが、第4セットを取り返し、5セット目も勝ち取る原動力になっている。
「ふだんからトレーニングは厳しくやっているので。フルセットを戦い抜く体力は、どのチームよりもあると思います」
佐藤は、そう勝因を説明していた。
「SVリーグが始まって、最初はプレッシャーも感じていたんです。でも、(FIVB女子)世界クラブ選手権(昨年12月開催)を終えてからは、"自分のスパイクが決まったらチームの結果につながる"というのを実感できるようになりました。世界のトップ選手と対戦することで、プレーもそうですけど、チームのなかでの立ち回り方を意識できるようになってきたと思います」
佐藤は、SVリーグのレギュラーシーズンは総得点で3位。上位を外国人スパイカーがしのぎを削るなか、唯一の日本人だった。もし女王になれたら、彼女は名実ともに古賀の後継者として脚光を浴びるだろう。
レッドロケッツは、他にも有力者が揃っている。ブラジル代表ロレイナ・メアリーズ・ダ・シルバは、SVリーグ屈指のスパイク力を誇る。パリ五輪日本代表でもあるミドルブロッカー、山田二千華はサーブ効果率3位で、ブロードが武器。同じく島村春世も相手を幻惑させるブロードで、アタック成功率は3位。長身を生かしたブロックも強力だ。
【カギを握るのは若い力?】
一方、マーヴェラスはレギュラーシーズンに4度レッドロケッツと対戦したが、負けたのは、その一戦だけ。
パリ五輪日本代表の林琴奈は、攻守両面で活躍するオールラウンダーで、女子選手の間の人気も高い。ベルギー代表リセ・ファンヘッケは身長191cmのオポジットで、高さがセールスポイント。また、ミドルブロッカー、箕輪幸の195cmのクイックは迫力があり、アタック決定率は2位だ。
そして、日本代表にも選出された宮部愛芽世のような伏兵もいる。佐藤と同じくプロ1年目を戦う23歳のサイドだが、ポテンシャルの高さは計り知れない。昨年はパリ五輪で、姉の藍梨が出場した戦いを現地観戦し、精神面も充実してきた。
「(2022年の世界選手権でも戦った)日本がブラジルを相手にどこまでできるか、観ておきたかったんですが......」
宮部は言う。
「ブラジルは誰が出ても強かったです。自分が対戦した時に控えだった年下選手も出ていたんですが、『自分なんかが出ても......』なんて思っている選手はいないんだろうなって。
接戦を制するカギは、宮部のような若い力かもしれない。なぜなら、どんなスポーツでも短期決戦はそうであるように、"日替わりヒロイン"の登場が大きくものを言う。主力同士のぶつかり合いが勝利の条件であるのは間違いないが、プラスアルファが問われるのだ。
その点、レッドロケッツでは3年目のアウトサイドヒッター、21歳の廣田あいも注目だろう。高い打点のスパイクが持ち味で、サイド特有の野心ものぞかせる。今年1月にマーヴェラスを撃破した試合でも、1セット目の相手へ流れが行きそうな場面で9-10から追いついたのは彼女のスパイクで、さらに引き離す得点も奪い取っていた。
SVリーグ男子のチャンピオンシップもそうだが、ちょっとした流れで戦いは混とんとする。緊張度が高く、レギュラーシーズンよりも空気が重い。その気配を誰がひっくり返すのか。
まもなく、SVリーグ初代女王が誕生する。