5月5日、LaLa arena TOKYO-BAY。SVリーグ男子チャンピオンシップ決勝第2戦、ジェイテクトSTINGS愛知はサントリーサンバーズ大阪に挑み、0-3でストレート負けを喫した。
「『(悔しいだけでなく)苦しかった』って言うのは、このチームで勝ちたかったからです」
STINGSが準優勝に終わったあと、セッターである関田誠大は淡々と話している。過剰な感情は込めない。それは頭脳戦を行なうポジション柄か。
「今日はなかなかうまくスパイクが決まらず、考えすぎてしまいました。相手のブロックをどう打開するか。そこで先手を打てず、(攻撃が)うまく回らなかった。僕のプレーもよくなかったですね。(STINGSは)僕のプレーが"試合を分ける"と思っているんで、僕が未熟だったなって思います」
彼は、自らを鞭打つように言った―――。
チャンピオンシップでも、関田はコート上で絶対的ボスとして君臨していた。どんなパスが戻ってきても、スパイカーたちを自在に操って攻撃を展開。そのトスワークは「世界を作る」芸術に近い。そのなかで、勝利への執念は体に刻み込まれたものだ。
――小1でバレーを始め、かなり厳しい練習だったようですが、続ける活力となったのは?
昨年10月に行なったインタビューで、筆者はそう聞いたことがあった。
「厳しい練習を続け、それを乗り越えての勝利は一番よかったですね。"これだけやったから勝てた"というのが。中学の時は、それで日本一になれました。すごくうれしくて、"バレーの楽しさ"とはズレるかもしれませんが、勝つことはバレーを続けていくうえで欠かせないですね」
関田はそう答えているが、それは彼の原点と言えるだろう。
チームが勝利する。それだけのために彼は自らのプレーを組み込む。勝利に向けて最大限に集中した様子は、威風すら感じさせる。
チャンピオンシップ準決勝、レギュラーシーズン1位の大阪ブルテオンを撃破した試合では、まさに"関田の領域"が展開されていた。宮浦健人、トリー・デファルコ、リカルド・ルカレッリだけでなく、ミドルブロッカーの髙橋健太郎、村山豪も縦横無尽に用い、強弓を放つように矢を込め、敵を打ち抜いた。
【決勝で何が起きていたのか】
決勝でも、第1戦の1、2セットまで関田のセットアップは破格で、サンバーズを寄せつけなかった。
――いつも「トスはフィーリング」と言っていますが、今日は途中から狂ってしまったのか、相手の対策が上回ったのか?
試合後に筆者がそう質問を投げると、関田はこう返した。
「僕も力が入っていたところはあったかもしれません。なかなかうまく決めさせてもらえませんでした。いろいろとプレッシャーを感じながらやっていたんで......それで今日は、こうなっちゃう」
彼はそう言って苦みのある笑いを浮かべた。STINGSの流れだったにもかかわらず、3セット目を失った。どこかで歯車がずれた。第4セット、ファイナルセットもデュースまで持ち込み、マッチポイントを迎えながらモノにできなかった。一度は勝利の歓喜に沸いたが、チャレンジシステムで取り消された。痛恨の大逆転負けだ。
「やっぱり、(サンバーズは)サーブがいいですよ。
しかし、"サーブで攻め、ブロックで守る"サンバーズは驚くほど粘り強く、最後は26-24で落とした。
決勝2試合目のSTINGSは目に見えて不安定だった。1セット目は拮抗した勝負だったが、最後は29-27で力尽きた。関田はレシーブで、果敢にベンチサイドへ突っ込み、足を負傷していた。2セット目は立ち上がりから5連続失点。関田はタイムアウト中にチームの輪から離れ、ひとりで天井にあるモニターを仰ぎ見ていた。
STINGSは挽回することはできず、このセットを25-16と落とすことになった。3セット目は大歓声を背に健闘したが、最後は突き放されて25-22で敗れた。
初めての会場で、関田の精密さが狂ったのか。
「関田さんが両サイドをうまく使うので、攻撃の選択肢を絞るのが難しかったです。ギリギリまで、どこに渡るかわからないトスワークで。誰をマークし、決めさせないのか、を考えながらブロックしないと......」
サンバーズのミドルブロッカー、小野寺太志はそう言って賞賛を送っていた。ネット越しに関田と知略戦を尽くした男の言葉は、説得力がある。
「ちょっとの差ですね」
関田はそう言って、決勝を総括した。
「1点で試合は変わる。その流れがいつ来るかわからない。ハードワークしても、うまくいくと限らない。運とかいろいろと、僕には足りなかったと感じました。そこを詰めていかないと、優勝には到達できない。今日、勝っていれば、まだ試合がありました。
関田はそう言って胸を張った。それは逆襲の誓いか。勝利の風景が似合うセッターだ。