河村勇輝が目指す「勝てるポイントガード」像 課題に取り組み「...の画像はこちら >>

後編:河村勇輝のアメリカ挑戦1年目総括

前編:河村勇輝の言葉で振り返るNBA・Gリーグ挑戦1年目

【勝てるポイントガードになるために】

 今季、主にメンフィス・グリズリーズのGリーグチーム、メンフィス・ハッスルでプレーした河村勇輝は将来を楽しみにさせるだけの活躍を継続した。グリズリーズとの2ウェイ契約は1年限りだが、来季に向けて所属チームの選択肢は存在するだろう。ただ、あくまでNBAで長いキャリアを築くことを目標にするのであれば、課題が存在する。

 今季、NBAでは22試合に出場し、平均1.6得点、0.9アシスト。地元メンフィスではコートに立つだけで大歓声が湧き起こるほどの人気を博したが、プレータイムは大差がついた終盤に限られていた。2ウェイ契約から本契約への昇格はかなわず、プレーオフでは選手登録されなかった。

 また、Gリーグでは確かに優れた成績を残したものの、11勝20敗と多くのゲームに勝てなかったことは無視できない。ハッスルのプレーオフ進出は叶わず、河村は4月13日、グリズリーズのレギュラーシーズン最終戦で今季を終えている。

 もちろん個々の選手がチームの勝敗を左右しきれるものではなく、特にNBAを目指す選手がプレーするGリーグゆえ、ハッスルのTJ・スワースキーヘッドコーチ(HC)は開幕直後に「目先の勝利よりも選手の育成が大事だ」と明言していた。河村はロングジャンパーの向上(Gリーグでの3ポイント成功率は36.5%)を今季の収穫として挙げており、「シューターの役割が増えたときに、そこでしっかりと3ポイントでチームの勝利に貢献できることを、僕のなかでは証明できたんじゃないかなと思います」と手応えを語っていた。

 ただ、それでもやはりもっとチームが勝てることに越したことはない。特にハッスルでの河村はれっきとした中心選手である。

「最終的に結果につながらないこともありました。僕がコートに出たとき、チームの勝利に直結できるようなプレーだったり、ガードとしてのコントロールがまだ足りないんじゃないかなとは感じました」と河村自身も述べており、改善の余地はあるのだろう。

 そしてさらに前に進むため、アメリカのプロリーグで勝てる選手になるため、懸案事項ははっきりしている。

「ひとつの大きな原因としては、やはりディフェンスです。Gリーグは特にNBAよりもインディビジュアルな(個人)プレーだったりとか、1対1がすごく多いリーグ。1対1でアドバンテージを取られてしまうことがGリーグでもあったので、そこはクリアしていかないと、よりレベルの高いNBAではやっていけないと思っています」

【課題に取り組み「勝負の季節」の2年目に】

 173cmという小柄な河村のプレーには意外性があり、それゆえにチーム内外で大人気を得るに至った。本人の望みどおり、世界中の小柄な選手たちに希望を与える存在になったことは紛れもない事実だろう。ただ、それと同時にサイズ不足は、特にディフェンス面ではハンデであり、河村の改善点もそこに存在する。

 守備のレベルアップのためにやらなければいけないことを問うと、河村はシンプルに次のように答えている。

「自身の速さと強さを生かし、フルコートでプレッシャーをかけていくこと。相手PG(ポイントガード)に気持ちよくボールを運ばせないこと。ハーフコートではフィジカルに当たっていくこと、です」

 そんなプレースタイルを可能にするために必要なのは、運動量とスタミナなのだろう。それらを毎試合、ゲームを通じてやっていくことを簡単ではないが、努力家で練習熱心な河村であれば不可能ではない。自分なりのやり方でサイズ不足をカバーし、より効果的にディフェンスでも貢献できるようになったとき、次の段階へのステップが見えてくるに違いない。

 河村はもともとアメリカ挑戦を長期視野で考えており、1年目はGリーグで経験を積むことと話していた。

予想以上の早さでのNBAデビューとなったが、新しい環境に適応するために時間が必要という捉え方は変わっていないはず。そういった意味で、プロの水に慣れて迎える来季は、非常に重要なシーズンになる。

「直近では本契約を目標にしていますけど、その先にはプレーオフだったり、チャンピオンシップを取ることだったり、そこのローテーションに入ることを目標にしてやっていきたいと思っています。その一番大きな目標に向けて、僕はディフェンスのところをよりクリアにしていかなければいけないのかなと思っています」

 NBAで長くプレーする選手は大抵の場合、1~2年目、2~3年目に大きな成長度を示すもの。その意味では、真の「勝負の季節」となる来季に控え、サマーリーグでプレーするにせよ、日本代表の一員としてアジアカップに参戦するにせよ、夏には力を蓄えていかなければならない。

「(八村)塁さんが今やっていることだったり、これまで(渡邊)雄太さんがNBAで残してきた成績だったりは、本当にひと言では表せないくらいすごいことをしているんだなとあらためて感じています。それに続いて僕もそういった結果を残せていったらいいなとは思っています」

 確かに先輩たちは偉大だが、才能と適応能力に秀でた河村なら新大陸でも長いキャリアを歩んでいくことは可能なはず。今年1年の頑張りを見てきた者であれば、きっとそう信じられる。聡明なファンタジスタがさらにたくましくなり、アメリカの舞台に戻ってくることを今から楽しみにしておきたいところだ。

編集部おすすめ