横浜F・マリノスが異常事態で本当に心配だ 「すごく流れの悪い...の画像はこちら >>
 横浜F・マリノスが心配だ――。

 そんな書き出しで今季の横浜FMをレポートしたのは、J1第6節でのガンバ大阪戦を終えてのことだった。

 横浜FMは、この試合に2-0と勝利。開幕戦からの連続未勝利をストップし、今季リーグ戦初白星を手にしていた。結果だけで言えば、ようやく反撃の狼煙が上がったと見ることも可能だった。

 しかし、そう考えることができなかったのは、試合内容があまりに心許ないものだったからだ。

 2019年と2022年にJ1優勝した頃との比較で言えば、"何もないチーム"になってしまった。そんな感想を抱かざるを得ないほどに、である。

 結果的に、悪い予感は的中したことになる。

 当時は15位と、かろうじてJ1残留圏内に踏みとどまっていた順位も、その後のリーグ戦10試合は未勝利(8敗2分け)で、最下位の20位まで降下。その間、スティーブ・ホーランド監督を解任し、新指揮官にパトリック・キスノーボ監督を据えたが、ピッチ内にこれといった改善はうかがえず、一時的なショック療法としての効果さえ表われてはいない。

 おそらくチームとしては往時のスタイル、すなわちチーム全体でパスをつないで前進し、相手ゴールに迫ることを目指しているのだろう。だが、中途半端なパスサッカーは、むしろ相手プレッシングの格好のターゲットになってしまう。

 さりとて、前線のブラジル人トリオ(アンデルソン・ロペス、ヤン・マテウス、エウベル)にボールを預けて、彼らの高い個人能力に攻撃を託すわけでもない。

 自分たちがやろうとしていることがうまくいかないから、自信が得られない。自信がないから、やろうとすることを思いきってできない。

 ピッチから感じられるのは、そんな悪循環である。

 こうなると、いよいよ現実味を帯びてくるのは、クラブ史上初となるJ2降格である。

 今さら言うまでもないだろうが、1993年のJリーグ誕生時に参戦していた10クラブ、いわゆる"オリジナル10"のうち、まだJ2降格経験がないのは、鹿島アントラーズと横浜FMの2クラブのみ。と同時に、この2クラブがJ1通算優勝回数のトップ2なのだから、その一角がJ2に降格することは、単に1クラブだけの話にとどまらない、"Jリーグ史に残る大事件"と言ってもいい。

 現在起きていることがいかに異常事態であるかは、直近のJ1第17節で横浜FMに勝利した、京都サンガF.C.の曺貴裁監督が発したコメントに表われている。

「昨年、自分たちはこのぐらいの時期に、マリノスさんと同じように勝ち点を取れずに苦しんで、選手と一緒に光の見えない闇のなかを突き進んで今がある。マリノスさんはリーグを引っ張ってきた存在でもあるし、そういう意味では、また後期(第36節)の戦いのときにいい試合ができるように、僕たちも楽しみにしている」

 勝利チームの監督が試合を振り返り、その内容について相手チームを称えることは珍しくないが、自分たちの経験と重ねて現状を気遣うような発言をすることはあまりない。有り体に言えば、今の横浜FMは対戦相手にまで心配されてしまう事態に陥っている、ということだ。

 その京都戦にしても、天野純が「特に前半はやれている実感が正直あった。(他の選手も含めて)チームもそういった実感を持てていたと思う」と話したように、横浜FMは必ずしも悪い内容ではなかった。

 ところが、立ち上がりの劣勢から徐々に盛り返し、せっかく攻撃のリズムが生まれてきた時間帯に先制点を許してしまうのだから、「すごく流れの悪いチーム」(天野)と言うしかない。

 天野曰く、「失点して少し気持ちが下がってしまった」チームは、後半に入っても、選手交代で流れを変えようと試みるも反撃の糸口は見つけられず、逆にミスも絡んで失点を重ねた。

 終わってみれば、0-3の完敗。ここ3試合でノーゴールが続く一方、失点は1、2、3点と増加の一途。まさに「光の見えない闇のなかを突き進んでいる」のが現状だ。

 不振を極めるチームに、何か打開策はあるのか――。そう問われたエースストライカーのアンデルソン・ロペスが、ふうっと大きく息を吐き、口を開く。

「このクラブがこんな状況に置かれたのは初めてだと思うが、今一番大事なのは、一人ひとりが限界を作らず、ここを乗り越えること。そういう姿勢を見せないと、越えられるものも越えられない。ひとりだけではなくて、全員がその気持ちでやらないと抜け出せないと思う」

 横浜FMが心配だ。危機的事態はさらに深刻さを増している。

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