後編:駅伝シーズンにつながる中央大の総合力
5月24日、レモンガススタジアム平塚で行なわれる全日本大学駅伝の関東地区推薦校選考会で、トップ通過有力候補となっている中央大学。
春先のトラックレースでは各所で好記録が続出し、現時点で日本選手権5000m出場資格を持つ選手が8名もいるのは、チーム内のハイレベルな競走がさらに個人、チームの力を押し上げる好循環が生まれている証拠だ。
箱根駅伝総合優勝を大きな目標に掲げる中大が、まずは全日本選考会の走りに注目が集まる。
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【5月の「のべおか」で中大を強烈にアピール】
中大の勢いを最も感じさせたのが、5月4日のゴールデンゲームズinのべおか(宮崎・延岡)だった。直後に関東インカレを控えるなか5000mで主力選手たちが躍動した。連戦となる選手もいたが、この大会に出場した理由を藤原正和・駅伝監督はこう説明する。
「ここに出ているのは4月にみっちり練習をしてきた子がほとんどで、日本選手権の標準(申込資格記録:13分38秒00)が目標でした。でも、ここにピークを合わせるというよりは、10000mに向けて作ってきたなかで、5000mで刺激を入れるというイメージで臨みました」
目標タイムが13分35秒に設定された男子5000mD組は、熾烈なラストスパート対決になったが、最終盤に抜け出したのが4年の吉中祐太だった。
吉中は2月の日本学生ハーフマラソン選手権で中大記録となる1時間00分45秒をマークしているが、もともとは1500mを得意とし「僕の長所はラストスパートだと思っている」と話す。
その持ち味を存分に発揮し、実業団勢をも破って組1着でフィニッシュした。
「駿恭が織田記念で勝って、自分も副主将という立場なので、ここでしっかり駿恭に続かないといけないなっていう気持ちで走りました。
大幅自己ベストで、日本選手権の標準を切れて、組1着もついてきたのですごくうれしいです」
記録も、これまでの自己記録を12秒以上更新する13分31秒73だった。
同じ組では、藤田大智(3年)と佐藤大介(2年)も、それぞれ13分34秒30、13分34秒57と自己記録を打ち立てた。
最終組では本間が奮闘し、終盤まで先頭争いを繰り広げた。実業団勢とのラストスパート対決に敗れ3着だったものの、13分32秒77の自己記録をマークした。
「自己ベストは確実に更新できると思っていたので、日本選手権の標準と組で一番を獲ることだけを考えていました。ラストで置いていかれたのは課題ですが、自分の状態として8割ぐらいしか完成していないなかでこのタイムを出せたので、まだまだタイムが上がるなっていう感覚でした」
まだまだ万全ではないなか、ここでも本間はしっかりと走ってみせた。
【日本選手権資格者10名の目標の先に箱根駅伝総合優勝】
「僕らのチームは、(現体制では)出雲、全日本、箱根を含めて、勝ったことがない。0を1にするという意味で、ちょっとでも勝ち癖をつけてシーズンを進めていかないと、土壇場で追い込まれた時に負け癖が出てしまう。シーズンを通して1位へのこだわりを植えつけていきたいと思ってやっています。そういう意味で、ちゃんと大学生相手に勝ってきているのは、よい傾向だと思います」
藤原監督は、織田記念の吉居に続き、延岡で奮闘した吉中や本間の走りを称え、手応えを口にしていた。
延岡では、吉中、藤田、佐藤、本間の4人が新たに日本選手権の申込資格記録を突破。すでにクリアしている吉居、溜池、岡田、ルーキーの濵口大和と合わせて、合計8人が5000mで日本選手権の出場資格を得たことになる。
「3000m障害の柴田大地(3年)も含めたら9人。1年生の井上優人が3000m障害で頑張ってくれたら10人になるのですが。私のなかでは目標として日本選手権に10人送り込みたい」
藤原監督はこんなことを話していたが、長くケガに苦しんでいた柴田も戦線に復帰し、主力級の選手層の充実ぶりは目を見張る。トラックの実績では、青山学院大や駒澤大といった箱根駅伝の上位校をも凌駕すると言っていい。
「上には駿恭さんや溜池さんっていう強い方々がいますし、下からの突き上げもすごい。エースの方々もしっかり努力をしているので自分も頑張らないとついていけないし、生半可な努力だったら、下に抜かされてしまう。そんな環境だなと思います」
本間がこう話すように、チーム内には好循環が生まれている。
実業団勢も出場するシニアの大会でハイパフォーマンスを見せてきた代わりに、日本学生個人や関東インカレといった大学生の大会では上位入賞がなく寂しくも映ったかもしれない。だが、今度の全日本大学駅伝選考会には「チームの主力上位8名で勝負する。ベストオブベストでいきます」と藤原監督は話しており、大学生のレースで圧倒的な力を解き放つつもりだ。
その先にあるのは箱根駅伝の総合優勝だ。
「上位層は非常に頑張ってくれている。問題は中間層から下位層が頑張って盛り上げていかないと、チームとしてはやっぱりよくならないと思っております。そのあたりは、6月の男鹿駅伝等を含めて、盛り上がれるようにやっていきたいと思っています。
箱根駅伝総合優勝が最大の目標で、出雲と全日本に関してはきっちり3位以内を目指したい。
もうひとつ、10000m上位10人の平均タイムを27分台にすること、27分台を10人出すことを目標に盛り込んでいますので、そこも含めて全部達成できるようにやっていきたいと思っています」(藤原監督)
箱根駅伝にどのようにアプローチしていくかはチームによって異なり、それぞれにカラーがある。