F1第8戦モナコGPレビュー(後編)
◆レビュー前編>>
12番グリッドから臨むモナコGPの決勝に、大きな望みなど持てない──。そのことは角田裕毅(レッドブル)にも、よくわかっていた。
今年は2ストップ作戦(3セット以上・複数仕様のタイヤを使うこと)が義務づけられ、昨年よりはレースに動きが出る余地はある。とはいえ、1回のピットストップで入れ替わるポジションには限りがあり、なおかつ角田の前にはレーシングブルズ勢とウイリアムズ勢がいて、彼らが「チームプレー」を展開することは明らかだった。
昨年までのモナコでもよく見られたように、意図的にペースを落として後続を抑え込み、チームメイトのために20秒のギャップを作り出してポジションを落とすことなくピットストップを可能にするという「モナコならでは」の戦略だ。ホンダの現場運営責任者である折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーは、チームとしてどうすることもできなかったと悔やむ。
「チームプレイは、レーシングブルズは間違いなくやってくるんじゃないかと予想していましたけど、ほかのチームも見事にやってきたのでビックリしました。
決勝に向けた作戦を話し合うミーティングでも『(リアム・)ローソンがカギだよね』というのはチームのなかでしていました。だが、誰かがピットインすればまた次の人がいて、という状況で、裕毅にとってはノーチャンスな状況になってしまいました」
1周目にソフトタイヤを捨ててハードに履き替えた角田は、すぐに前の集団に追いついてランス・ストロール(アストンマーティン)の背後を走行。彼がピットインしてからは、メルセデスAMG勢の後ろを延々と70周目まで走り続けることになった。
12位の位置を維持したままセーフティカーや赤旗のチャンスを待つという戦略や、マックス・フェルスタッペンのようにハードタイヤでスタートして周囲がピットインしたところでひとまず前に出るという戦略もあったが、角田は自ら動く戦略を選んだ。
結果的に、それは裏目に出た。しかし、セーフティカーや赤旗の確率が高いことを考えれば、それも決して間違いではなかった。
【抜けないモナコの特性は変わらない】
レース後の角田は、このレース展開を受け入れて淡々としていた。
「特にも何もできなかったので、今までで一番長く感じたレースでした。ああいう位置からのスタートだったので、何か違うことをトライするしかありませんでした。
特に前にいる2チームは2台が揃っていてチームプレイができる状況で、何かをやってくるだろうというのはわかっていた。僕としては(1周目ピットインは)望んでやったことですけど、とにかく予選ポジションがもっとよくないと、どうしようもないということですね」
2ストップが義務化されようと、抜けないモナコのコース特性は変わらない。それを最大限に生かしたチームプレイが繰り広げられ、後方グリッドからは勝負のしようがない事実も変わらない。
こうしたチームプレイは、何も今に始まったことではない。ただ、2ストップ作戦ゆえにこのチームプレイが繰り広げられた回数は多くなり、フォーカスされやすくなった。
モナコGP決勝が、こういうドライバーにはどうすることもできないレースになることは、ドライバーたちは何年も前から知っていた。だから角田も、予選が失意の結果に終わった時点でそれを受け入れていた。
モナコでは、実質的なペースはフェルスタッペンに肉薄するものがあった。そのポジティブな面に目を向け、次のスペインGPではノーズとフロントウイングが同仕様になる予定であることも受け、リズムを掴み直すことが先決だと気持ちを入れ換えている。
「それだけじゃなくて見えない部分にもいくつか(フェルスタッペン車と)仕様が異なるものもあるので、(ノーズを)変えていきなり状況がガラッと変わるとかいうものではないと思いますけど、僕自身もまだ改善しなければならない部分があります。
僕はそこに集中したいと思います。気持ちを切り替えて、まずは予選でQ3に進むことに集中して、ポイントは絶対に獲りたいです」
うまくいかなかったイモラとモナコの悪い流れを、3連戦最後のバルセロナでしっかりと断ち切ってもらいたい。