SVリーグで活躍した外国籍選手 女子編

「男子編」はこちら>>

『世界最高峰のバレーボールリーグを目指す』を掲げて、装い新たにスタートした2024-25 大同生命SVリーグ。女子は全14チームによって争われ、そのなかでも活躍の目立った外国籍の5人を紹介する。

リセ・ファンヘッケ(大阪マーヴェラス)

SVリーグ女子1年目を盛り上げた外国籍選手5人 強豪国の一線...の画像はこちら >>
"SVリーグ初代女王"に輝いたのは大阪マーヴェラス。レギュラーシーズンでは全チームで唯一となる一桁の黒星で優勝を飾ると、チャンピオンシップのファイナルでは前年度リーグ女王のNECレッドロケッツ川崎を圧倒する内容で見事、戴冠を果たした。今季の大阪MVはレギュラーシーズンMVPの林琴奈、チャンピオンシップファイナルMVPの田中瑞稀キャプテンの両アウトサイドヒッターを軸に、蓑輪幸と大山遼のミドルブロッカー陣が攻撃のアクセントになった。

 そうして幅広い攻撃を展開したわけだが、ここぞの場面で得点を重ねたのがオポジットのリセ・ファンヘッケ(ベルギー)である。2022-23シーズンから来日し、トヨタ車体クインシーズ(現・クインシーズ刈谷)、久光スプリングス(現・SAGA久光スプリングス)を経て、今季から大阪MVに移籍加入。レギュラーシーズンではチームトップの648得点をマークすると、ファイナルではGAME1で16得点、GAME2で13得点とこちらもチーム最多の数字を挙げて優勝に導いた。

 ベルギー出身で現在32歳のリセは10代の頃から第一線に立ち、経験豊富。来日してからも各チームでポイントゲッターを担ってきたわけだが、それでも「『いつスタートから外れるかわからない』と話していました。試合に出られることがあたりまえだとリセ自身が思ってないからこそ、刺激になりました」と明かすのはルーキーの宮部愛芽世だ。そうした謙虚な姿勢がチームに好影響を与えると同時に、リセ自身のキャリアを支えている。

チャッチュオン・モクシー(ヴィクトリーナ姫路)

 今季のタイトルに貢献した外国籍選手でいえば、ヴィクトリーナ姫路のアウトサイドヒッター、チャッチュオン・モクシー(タイ)もそのひとり。こちらは2024-25シーズン中の12月に開催された令和6年度皇后杯全日本バレーボール選手権大会で姫路の初優勝に貢献した。

 日本では2018-19シーズンのPFUブルーキャッツ(当時)でプレーした経歴を持つ。以降も欧州のリーグなどで成長を遂げ、2023年のアジア選手権では母国タイを優勝に導くと自身も大会MVPに輝いている。

 そうして2023-24シーズンから姫路に入団し、当時のV.LEAGUE DIVISION2(2部)でチームの全勝優勝にエースとして貢献、堂々の最高殊勲選手賞に選ばれた。

 在籍2季目となる今季も井上愛里沙とエース対角を組み、高い決定力で得点を呼び込んだ。また、鋭いアタックもさることながら、チームメートの誰もが口をそろえる明るいキャラクターはさすが"微笑みの国"タイ出身。仲間からは「ブンビン」の愛称で親しまれ、自身も積極的に英語と日本語を交えてコミュニケーションを図ることでチームに溶け込んだ。

 今季のハイライトはSAGA久光スプリングスとの皇后杯決勝。チームを通じて最多となる28得点の活躍をした。その後、年明けからはケガによる離脱もあり、終盤は存分に力を発揮できずにシーズンを戦い終えている。とはいえ、アジア最高峰レベルのパフォーマンスの持ち主。SVリーグのあとの代表シーズンではタイのエースとして、国際大会で日本の前に立ちはだかるに違いない。

シルビア・チネロ・ヌワカロール(東レアローズ滋賀)

SVリーグ女子1年目を盛り上げた外国籍選手5人 強豪国の一線級がズラリ
女子選手最多得点を記録した東レアローズ滋賀のシルビア・チネロ・ヌワカロール
 個人タイトルに目を向けると、今季は3人の外国籍選手がリーダーズ(個人技術統計のトップ)に名前を連ねた。
レギュラーシーズン最多得点の「トップスコアラー」に輝いたのは東レアローズ滋賀でプレーしたオポジットのシルビア・チネロ・ヌワカロール(イタリア/今季で退団)。最高到達点330㎝という女子では圧倒的な高さから繰り出す強烈なスパイクを武器に、来日初年度の2023-24シーズン得点王に続く個人賞獲得となった。

 驚くべきは、その得点数。今季は一試合を欠場しただけで、終わってみれば1047得点を記録。これは今季の女子選手で唯一となる大台突破であった。

 かつては2019年の第20回女子U20世界選手権大会の決勝で、イタリア代表のエースとして日本代表の前に立ちはだかった。そこではフルセットの激闘の末に日本が初優勝を飾ったわけだが、そんなゆかりある日本のリーグでプレーしたヌワカロール。当時から他を圧倒した攻撃力は、SVリーグでも健在だった。

ジュリエット・ロホイス(東レアローズ滋賀)

 そのヌワカロールとともに東レ滋賀を支えたのが、ミドルブロッカーのジュリエット・ロホイス。今季から来日すると、サーブ効果率16.9%で「トップサーバー」に輝いた。

 そもそもサーブは代名詞だった。オランダ代表でも効果率の高いサーブで相手を揺さぶり、ときにはサービスエースを奪うことで勝機を呼び込んできた。

自身初のSVリーグでは、チームのシーズン初戦(2024年10月13日)となる大阪MV戦でさっそくサーブの「効果」数で14本を記録している。

 そのパフォーマンスを支えるのはメンタルの強さ。チームのコーチングスタッフが明かすに「アップダウンが基本的になく、緊張に振りきることも、冷静に振りきることもない」性分だそう。またセッター経験があり、ボールの扱いがうまいことも、サーブにおけるトスの安定性にもつながっている。

 強いサーブを一定して打ち続けること。それがロホイスにとってコート上におけるチームプレーだった。

ブリオンヌ・バトラー(Astemoリヴァーレ茨城)

 ヌワカロール、ロホイスと並んでリーダーズに名前を連ねたのがAstemoリヴァーレ茨城のミドルブロッカー、ブリオンヌ・バトラー(アメリカ)だ。

「トップスパイカー」(アタック決定率51.7%)、「トップブロッカー」(1セットあたりのブロック決定本数0.86本)の"個人二冠"に輝いた。

 身長195cmを活かした豪快なプレースタイルと、"BATTLE(戦い)"を連想させる名前(つづりはBUTLER)は一見、迫力満点。しかし、チームメートだった野中瑠衣が明かすのは「チームでいちばんと言ってもいいぐらい、乙女な人柄。サーブミスをしたときには口元を両手で隠して恥ずかしそうに照れるんです。一つひとつのしぐさがかわいらしい」という。

 とはいえパフォーマンスはやはりアメリカ代表に選出されるだけのものがある。「高さは脅威でしたし、代表活動になれば、この選手がコートに6人入っているチームと戦うのか、と日頃から想像していました」と今年度の日本代表に登録された野中は語った。

 バトラーしかり、世界各国からハイレベルな選手がSVリーグでプレーする。それは日本人選手たちにとっても、世界を肌身で味わう絶好の機会となったようだ。

編集部おすすめ