今季プレミアリーグで奮闘した日本人選手たちは、現地でどんな評価を受けているのだろうか。英国大手一般紙『ガーディアン』で活躍しているジョン・ブルーウィン記者に、今シーズンを総括してもらった。

三笘薫、遠藤航、鎌田大地...プレミアリーグで奮闘した日本人...の画像はこちら >>

【日本人選手でベストの座】

三笘薫(ブライトン)

2024-25シーズン評:8(10点満点)

 イングランドでプレーする日本人選手は年々その数を増やしているが――今季はプレミアリーグに5人、チャンピオンシップ(2部)に6人――、ブライトンのウイングがベストの座を維持している。リーグ史上最年少となった新監督ファビアン・ヒュルツェラーに率いられたチームは、惜しくも来季の欧州カップ戦出場権を逃したものの、三笘薫は渡英以来、もっとも継続性の高いシーズンを過ごした。

 リーグ戦で36試合に出場し、10得点と4アシストを記録。この日本代表がゴールかアシストをしたリーグ戦のチームの成績は5勝1分だった。そのうちのひとつ、バレンタインデーにホームでチェルシーを3-0で下した一戦では、今季プレミアリーグのベストゴールに数えられるシーンを披露。背面から飛んでくるGKからのロングフィードを走りながらトラップすると、並走するトレバー・チャロバーを一瞬で外し、わずかに見えたコースにシュートを沈めたのだった。

「今季のプレミアリーグで、最高のファーストタッチだった」とスカイTVの解説者ジェイミー・キャラガーが言えば、「あのようなスペシャルなプレーはなかなか見られないが、彼は本当にハードに練習しているからね。毎日、少しでもよくなろうと懸命に努力しているんだ。彼はプロの鑑だ。だからこそ、あのような特別な動きができるんだ」とヒュルツェラー監督は語った。

 プレミアリーグでの3シーズン目を終えた今、リバプールやアーセナル、バイエルンが、彼に食指を伸ばしているとの噂も。

【優勝を勝ち取った英雄】

遠藤航(リバプール)

2024-25シーズン評:7(10点満点)

 プレミアリーグの優勝トロフィーを遠藤航が掲げると、リバプールの本拠地アンフィールドのコップたちはひときわ大きな声援を送った。このクラブのサポーターは伝統的にカルトヒーローを好む。日本代表の主将はマージーサイドでの2年間、その役割を担っている。

 彼のプロフェッショナリズムを疑うものは、ひとりとしていない。完璧な準備をして辛抱強く出番を待ち続け、今季は中盤だけでなく、最終ラインでもその守備能力を披露した。背番号3をまとった頼れるクローザーが投入されると、チームには安心感が広がる。実際、彼が出ている間にゴールを破られたのは4月13日のウェストハム戦が初めてだった。

 集中を切らさず、汗かき役を全うする遠藤は、レッズの20度目のリーグ優勝――マンチェスター・ユナイテッドに並ぶ最多タイ記録――に、しっかりと貢献している。日本人選手としては、5人目の快挙だ。

「今季、ワタがいてくれて本当に助かった」とアルネ・スロット監督は話した。

「出場した時間よりも、そこで何をするのかが重要になる。2分だけ出て見事な働きをする選手もいれば、90分出てもチームに寄与できない選手もいる。ワタが特別なのは、出番が何分であろうと、信頼に足るプレーを約束してくれることだ」

 おそらく来季、遠藤はリバプールにはいなさそうだ。しかしチームの主将フィルジル・ファン・ダイクはこんな正直な言葉を日本代表のキャプテンに寄せている。

「チームを築き上げていくためには、リーダーが必要になる。

ワタはそのひとりだ。できることなら、彼にあと1、2年くらいはここにいてもらいたいのだが」

鎌田大地(クリスタル・パレス)

2024-25シーズン評:6(10点満点)

 スロースターターから、英雄へ――。オリバー・グラスナー監督お墨付きのMFも、初挑戦のプレミアリーグには適応に時間を要した。当初は多くのサポーターを納得させられなかったが、終わってみれば、FAカップ獲得――1905年に創設された南ロンドンを本拠とするクラブの長い歴史で初のメジャートロフィーだ――の獲得に大きく貢献したのだ。

 序盤には11節フラム戦の危険なファウルによるレッドカードなど、ネガティブな印象も残したが、少しずつリズムを掴んでいくと終盤戦には、4月のブライトンとのリーグ戦やアストン・ビラとのFAカップ準決勝、そして5月のマンチェスター・シティに競り勝ったFAカップ決勝で、重要な白星の獲得に貢献。試合唯一の得点シーンでは中盤で巧みにボールを繋いだ。エベレチ・エゼやジャン=フィリップ・マテタを絶妙にサポートした教え子について、恩師グラスナーは言う。

「エベレチらアタッカーの個人技も、カマダのリンクアップがあってこそ輝きを増す。かけがえのない選手だ」

 ただし鎌田自身は、「自分のキャリアで一番難しいシーズンでした」と自身のSNSにあげているように終わりよければすべてよし、とは感じていないようだ。それでも、グラスナー監督とのコンビで、ヨーロッパリーグに次ぐふたつ目のメジャートロフィーを獲得した事実は揺るがない。

 歴史の一部となり、さらに自信を深めた鎌田の2年目も楽しみだ。

【タフな経験。
悲しみのシーズン】

菅原由勢(サウサンプトン)

2024-25シーズン評:6(10点満点)

 勇敢ながら脆さが顕著だったチームでプレミアリーグにデビューしたのは、なんともタフな経験だったことだろう。サウサンプトンは序盤から降格候補となり、実際に終始、最下位に浸りきり。プレミアリーグ史上最速で降格したチームにありながらも、菅原は豊かな人間性で周囲に溶け込み、確かなスキルを備えるウイングバックとして、存在感を示していた。

 10月のアーセナルとのアウェー戦や11月のホームでのリバプール戦、12月のウェストハムとのホームゲームなど、大きなミスもあった。ただ、3人の監督が采配を揮い、ライバルにいたぶられ続けたチームで、プレミアリーグの1年目を駆け抜けた経験は、大きなハートを持つ選手を逞しくさせるかもしれない。

 この好人物は本拠地セント・メリーズに集うサポーターのフェイバリットになった。菅原は、次のようにファンに感謝する。

「いつも温かい手拍子や声援で、『カモン、行こうぜ!』と背中を押してくれる。彼らの愛を感じるし、僕たち選手もファンを愛しています」

冨安健洋(アーセナル)

2024-25シーズン評:3(10点満点)

 チームメイトや指導陣の誰もが信頼する守備者にとって、悲しみに満ちたシーズンとなってしまった。

 手術したヒザの重傷からピッチに復帰した2024年10月5日、ホームでのサウサンプトン戦の終盤の数分だけプレーしたものの、同じケガを再発させてしまい、またしても手術を要する長期離脱に。復帰は来年と見られている。冨安本人はもとより、プレミアリーグで3年連続2位に終わり、チャンピオンズリーグでは準決勝に終わったチームにとっても、痛かった。

特に守備陣に負傷者が続いた終盤の大事な場面で、彼の不在を強く感じたものだ。

「彼はフットボールのために生きている選手だから、(離脱を強いられている彼を見るのは)本当に辛い」とミケル・アルテタ監督は話した。

「どんな時でもプレーしたがる意欲的な選手でもあるし、プレーレベルは極めて高い。私たちも彼のことを最大限に配慮しているが、外国籍選手が重傷を負い、家族と離れてリハビリに励むのは、本当に想像を絶することだ」

 今シーズンの全公式戦の記録は、前述したプレミアリーグ7節の6分間のみとなってしまったが、過去3シーズンは毎年リーグ戦に20試合以上出場し、昨季はチャンピオンズリーグの重要な一戦でも起用されていた。状態が整えば、間違いなくアーセナルでも出番はある。

>>「プレミアリーグ今季の戦術トレンドと3人の優秀監督」

ジョン・ブルーウィン 
John Brewin/1976年生まれ。英国マンチェスター出身のスポーツジャーナリスト。『ESPN』のシニアエディターを経て、現在は主に『ガーディアン』で健筆を揮う。同紙のポッドキャスト『フットボールウィークリー』やラジオ『トークスポート』にも頻繁に出演している。

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