世界ナンバー1のクラブチームを決定するFIFAクラブワールドカップ。アジア王者として世界に挑んだ浦和レッズだったが、早々にグループリーグで姿を消した。

なぜ、浦和は勝てなかったのか? 現地取材したブラジル人記者が分析する。

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 クラブワールドカップで、浦和レッズは1勝も手に入れることができなかった。

 アメリカのスペイン語スポーツ専門チャンネル「TUDN」はグループリーグのパフォーマンスが最低だったチームにモロッコのウィダードと日本の浦和を挙げた。非常に残念だが、それは正しい意見だと思う。私だけでなく、多くのサッカーファンが浦和に期待していた。ヨーロッパ南米の強豪を相手に勝つのは難しいかもしれないが、なんらかの存在感を見せてくれると信じていた。しかし、浦和はただアメリカにやって来ただけで、何の爪痕を残すこともなく去っていった。半アマチュアのオークランド(ニュージーランド)のほうがずっと印象的なプレーを見せてくれたように思う。

 まずは浦和が0-4で敗れた最終戦、モンテレイ(メキシコ)の選手や監督がどのように感じたかを聞いてみよう。

【クラブワールドカップ】モンテレイの選手たちが語る浦和レッズ...の画像はこちら >>
 モンテレイの3点目のゴールを決めたヘスス・コロナは試合後、浦和への称賛の言葉を残している。

「浦和のようなチームと対戦することは決して簡単なことではない。彼らは組織的で、よく走り、すでに結果が決まったように見えても決して諦めないからだ。

日本の選手たちは、世界の他では見られないような何かを持っているようにも見えた。常にチームとしてまとまり、互いに助け合い、サイドから攻撃を仕掛ける際には本当に危険になる」

 またコロナは、浦和の最も印象に残った点は「メンタル」だと答えた。

「2点差、3点差になっても誰も諦めなかった。最後まで戦い続け、プレッシャーをかけ続け、ゴールを求めて走り続けた」

 さらに浦和の各ポジションについても語ってくれている。

GK「難しいセーブをいくつか見せ、最も困難な場面でチームを支えた」
DF「リカバリーが非常に速く、フォワードにスペースを与えない」
MF「技術の高い選手が多く、パス回しに長け、数秒でリズムを変えることができる」
FW「前半のある時間帯は、日本の前線の選手のプレッシャーとスピードのため、我々はボールをキープするのが困難だった」

【ラモスが挙げた日本人選手の名前】

 チーム随一のビッグネーム、DFのセルヒオ・ラモスは浦和をこう評した。

「彼らのようなスピードのあるチームとの試合は、我々にとってとてもいい経験だった。集中力を維持し、誰ひとり軽視してはならないことを強いられた。彼らの攻撃を阻止するのは本当にハードだった。日本のアタッカーはボールを持っていない時でも、賢く動き、私のように経験豊富なベテランDFでもかなり苦労させられたよ」

 厄介だった選手として松尾佑介と渡邊凌磨の名前を挙げた。

「隙があれば攻め上がろうと虎視眈々とチャンスを狙っていた。ただ、試合前に過去の試合のビデオを見て、彼らの能力はわかっていたから、対処することができた。彼らを止めることができたのが、モンテレイにピッチでの優位をもたらしたと思う」

 そして、浦和のチームスピリットと情熱は「すべての選手にとってのお手本だ」とも称賛した。

「彼らのようなチームと対戦すると、サッカーには楽勝などは存在しないとあらためて気づかされるね。

常に全力で戦い、集中力を保ち、相手を尊重しなければならない。浦和レッズは尊敬に値するチームで、今後、多くの人を驚かせていくだろう」

 もうひとつ印象に残っていたこととして、ラモスは浦和サポーターをあげた。

「スタジアムにすばらしい雰囲気を作り出し、結果がほぼ確定したあとも声を上げ続け、チームを応援していた」

 そして日本のサッカーについて、「成長している日本サッカーには、長年注目してきた。それに実は何度か、日本のチームから移籍のオファーを受けたことがあるんだよ」と明かしてくれた。

 一方、モンテレイのもうひとりのDFルイス・レイエスの感想は少し違っていた。

「4-0という結果だったが、簡単な試合ではなかった。浦和は質、粘り強さ、そして闘志を見せた」と言ったうえで、彼はこう続けた。

「リーベル(・プレート/アルゼンチン)とインテル(イタリア)の試合の彼らのパフォーマンスを見ていたから、難しい試合になることは覚悟していた。でも今日の試合では我々のスピードが逆に彼らを驚かしたと思う。日本の選手はフィジカル的に強いが、テクニカル面ではモンテレイのほうが上だった。たぶん我々が所属しているメキシコのリーガは、日本のリーグより厳しいものなんだろう。今日勝つことは我々の義務だったし、それを落ち着いて遂行することができた。

彼らに"勝利"をイメージさせる余地すら与えなかったはずだ。今日は私たちの完全勝利だ」

【スペイン人監督が勝因を明言】

 モンテレイのスペイン人監督、ドメネク・トレントは試合をこう振り返っている。

「我々は落ち着いてプレーすることができたと思う。浦和DFの裏のスペースをうまく活用し、ロングシュートでゴールを狙うことでイニシアチブも握ることができた。彼らのGKは、苦戦すると前に出てくることはわかっていた。こうしたプレーで相手の得点への意欲を削ぐこともでき、我々のカウンター攻撃をより容易にした」

 そしてトレントは「メキシコサッカーが日本のチームよりも優れていることを証明した」と明言した。

「今日、日本人はモンテレイの強さを思い知っただろう。集中力も勝利への決意も彼らよりはるかに強かった。

 開いてプレーし、スペースを作ることは、相手にもプレーさせることを意味する。我々はそのスペースをうまく利用した。我々は、試合を支配しようとする彼らの試みをすべて封じ込めることができた。サッカーで勝利を手にするカギは、相手のプレーの変化にどうリアクションしていくかだ。我々がより高い位置でプレスをかけるようにすると、浦和はその戦術スタイルに対応できず、我々は彼らの弱点を突くことができた。

ただ、彼らはまだ若く、才能があり、何より成長意欲がある。フェアプレー精神にも富んだチームだった」

 モンテレイの選手たちからは浦和についてポジティブなコメントも聞かれたが、率直に言って、今回の浦和のパフォーマンスは、最近評価を上げている日本サッカーのイメージを損なったように見える。

 冒頭のコロナの見方とは正反対だが、筆者は、浦和はメンタル的に弱かったと思う。選手たちは試合後に泣いていた。敗れたチームが涙することは確かにある。しかしそれは全力を尽くしてもチャンスをものにできず、悔しくて泣くものだろう。チャンスさえ作れなかった彼らに泣く資格はない。そして彼らにはそのこともわかっていないようだった。「0-4で負けたから泣く」のでは子どもと同じだ。

【今大会の浦和の敗因は?】

 浦和は戦術でも劣っていた。結局、リーベル・プレート戦とインテル戦から何も学んではいなかった。モンテレイに対して、DFは抜かれ、中盤は守備を助けず敵に多くのスペースを明け渡し、そのせいでFWはチームから切り離された幽霊のようだった。

モンテレイは落ち着いてプレーするだけでよかった。なにしろ相手は自滅してくれるのだ。

 今回の浦和のクラブワールドカップの敗因は大きく3つあったと筆者は思う。

1) 大きな国際大会を戦う準備不足

 プレーではなく、戦略的に世界の強豪に立ち向かうだけの能力がなかった。たとえばリーベル戦では闘志が垣間見える時間帯もあったが、インテル戦ではまったくゼロ、一番弱いモンテレイに対してさえ、その対峙方法は未熟だった。

2) 戦術的な混乱

 相手と同等の力がなければ、守備的にプレーするものだ。まず守って、カウンターで点を取る。もしくは引き分けに持ち込む。4-0で負けたのは果敢に攻めた結果なのかもしれないが、それは勝つための戦い方ではない。

3) 選手たちのクオリティ

 凡ミスを多発する彼らは、これが本当に日本一のチームであるのかと首をかしげてしまった。DFは迷子になり、GKは前に出すぎ、FWはゴールにボールを入れることができず常に不安げだった。そして何より一番大事なスピリットがなかった。

 チームは、スタジアム中を赤く染め、常に声援を送り世界を驚かせたサポーターたちを裏切ったと言える。それは私だけの意見ではない。アメリカやメキシコの記者も同じような感想を持っていた。

 不思議なのは、前の2試合で失敗しても、それを改めようとしないのはなぜか、だ。監督も何かを変えようとはしていなかった。それは、自分たちはもっと強いと思っていたからなのか。それとも自分たちはこれ以上できないと、初めから諦めてしまっていたのか。私には後者のように思えた。

「自分たちは歯が立たない」

 頭のどこかにそんな思いを抱きながらプレーをすれば、勝てる試合さえ勝てなくなる。

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