ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――夏の福島を彩る名物重賞で、サマー2000シリーズの第2戦となるGIII七夕賞(福島・芝2000m)が7月13日に行なわれます。

大西直宏(以下、大西)現役時代、七夕賞での勝利はなく、ミヤギロドリゴに騎乗して3着だった2001年のレースが(自身)最高の成績ですね。

 夏の暑い時期のハンデ戦で、福島の小回りコースという"荒れる"要素が詰まった重賞ですから、人気のない馬でも毎回、「一発狙ってやろう」という気持ちで騎乗していたことをよく覚えています。

――福島の小回りコースという点では、馬によって合う、合わないがはっきりしている印象があります。騎乗においては、どんなことを意識していたのでしょうか。

大西 小回りゆえ、当然機動力が高い馬が有利になります。それでも、芝2000mではスタートから1コーナーまでの距離が十分にあるため、枠順の有利、不利はそこまで大きくありません。

 そうしたコースにあって特に意識していたのは、騎乗馬の脚質と相談しながらロスなく運ぶこと。そして、人気馬たちのタイプによっては紛れも生じるので、「(騎乗馬にとって)どう乗ったら展開がハマるだろうか?」ということも頭に入れながら騎乗していました。

――今年の出走メンバーをご覧になっての率直な印象と、中心になりそうな馬について教えてください。

大西 夏のローカル重賞らしく、経験豊富ないぶし銀タイプと上がり馬が混在する組み合わせになりましたね。レベル的にはそこまで高くありませんが、ハンデ戦ということもあって、馬券的には面白い一戦と言えそうです。

 人気を集めそうなのは、過去10年で4勝を挙げている"七夕賞男"戸崎圭太騎手が騎乗するドゥラドーレス(牡6歳)と、リステッド競走の福島民報杯(4月13日/福島・芝2000m)、GIII新潟大賞典(5月17日/新潟・芝2000m)と連勝中のシリウスコルト(牡4歳)。とりわけ、シリウスコルトは前々で運べる機動力があり、充実著しい状態にあって、レース的には同馬を巡る争いになると見ています。

――それら人気どころを脅かす存在として、気になる穴馬候補はいますか。

大西 今回が重賞初挑戦となるコスモフリーゲン(牡5歳)に注目しています。

【競馬予想】七夕賞は「荒れる」要素たっぷり 小回りコース得意...の画像はこちら >>
 前走で3勝クラスのサンシャインS(4月20日/中山・芝2200m)を勝って、オープン入りしたばかり。実績的には見劣りますが、鞍上の柴田大知騎手が(1戦を除いて)デビューから手綱を取り、一歩一歩着実に階段を上がってきた"叩き上げ"です。

 福島とコース形態が似ている中山での安定感はピカイチ。勢いだけではない、芯の強さも感じます。

 以前は逃げて踏ん張る持久力頼みの馬でしたが、前走では2番手でしっかり折り合って、直線でラクに抜け出して快勝。その勝ちっぷり、走破時計(2分10秒4)ともに優秀でした。

 レース運びとしては、逃げるシリウスコルトの直後につける2番手か、単騎ハナに立つか。いずれにしても、自分の競馬に持ち込めそうなメンバー構成で、今週から(芝コースが)Bコース使用になるのも好材料です。

 レーススタイルや現在の充実ぶり・上昇度を踏まえても、今年のレースで最もハマりそうなのがこの馬。乗り鞍に恵まれない厳しい状況にありながら、「1鞍入魂」の姿勢を崩さず、実直に競馬と向き合う鞍上の柴田大知騎手を応援したい気持ちも強く、七夕賞の「ヒモ穴」にはコスモフリーゲンを指名したいと思います。

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