7月9日、千葉。バレーボールのネーションズリーグ2025第3週の日本ラウンド初戦、フランス戦(セットカウント3-0で勝利)で、チーム最年少、18歳の秋本美空が華やかに日本での"代表デビュー"を飾っている。
「緊張はあまりしないんです。ワクワクしました」
試合後のミックスゾーンで、秋本は照れながらも堂々と語っている。白い肌がはつらつと輝いていた。
「途中出場は、もう少し早めに言われていたんですが、最後の1、2点のところで入るとは思っていなくて、びっくりしました。でも、(セットポイントを決めて)自分を知らない人も自分を知ってくれて、自分の得点で喜んでくれるのはうれしいですね。ブロックアウトでの得点は(ネーションズリーグ1、2週の)カナダ、香港と練習でやってきました。それができたのはよかったです」
秋本はロンドン五輪メダリスト、大友愛(旧姓)を母に持ち、185センチという長身で手足も長く「大器」を感じさせる。今年1月の春高バレーでは共栄学園の優勝に貢献し、最優秀選手に選ばれている。そしてSVリーグのヴィクトリーナ姫路に入団すると、3月には早々とデビューし、チーム最多得点を記録するなど規格外の存在感を見せている。高校生時代も日本代表に選ばれていたが、今回、新体制で本格的に注目を浴びることになった。
第1週のカナダラウンドのオランダ戦ですでに代表のコートに初めて立って、すかさず得点も決めていた。
代表で能力の高い選手たちとの時間を共有し、それが刺激になっている。優れた選手ほど吸収力が高い。石川真佑のようなトップ選手が集まった代表で世界を相手に戦う一瞬一瞬が、何よりの進化の触媒なのだ。
【「練習してきたことが出た」】
「(試合で)コートに入る機会は少ないですけど、練習したことを発揮できているか。そこは監督へのアピールにもなるし、何より自分が成長できる瞬間だと思っています」
秋本はそう言うが、明るく自然な貪欲さが見える。それは世界で活躍していくトップアスリートとして欠かせない性質と言えるだろう。現状に満足し、失敗を恐れるようでは、厳しい世界では儚く潰れてしまう。
「高さで勝負していきたいんですけど、高さだけでは(世界で)勝てないと思うので、(石川)真佑さんとか、(佐藤)淑乃さんみたく、自分も相手のブロックを使った点の取り方をやっていかないといけないなって。それがカナダ、香港で一緒に試合をしながら思って練習してきたことだったので、今日(フランス戦)はそれが出てよかったなって思います。
ひとつひとつの技の精度を上げ、あるいは新しい技術を取り入れ、彼女は殻を破っていく。その期待感はメディアの食いつき方ひとつ見ても「巨大」と言える。女子バレーの枠を超え、日本スポーツ界全体の話だ。
7月10日、秋本は韓国戦で先発出場を果たし、はつらつとした姿を見せている。日本はすでにファイナル進出を決め、石川真佑に代わっての出場だった。その大役にも果敢に挑み、3-0ストレートの勝利に貢献した。
「真佑さんみたいなことをできないので、"自分にできることを精一杯やろう"と思ってコートに立ちました。やっぱり、真佑さんがいないとラリーを取りきれないところがあって、苦しい展開もあったんですが、そこは自分が成長するべきところかなって」
秋本はそう言って顔を上げた。レシーブが乱れる場面はあったし、おそらく狙われていたのだろう。また、バックアタックを読まれていたのか、シャットアウトされるシーンもあった。ただ、レシーブがずれたあと、自らのブロックでシャットアウトしたり、気合いを入れ直したレセプションからトスを呼び込み、スパイクも決めていた。ミスはあっても、それをリカバリーするメンタルと技量を見せた。
「(ネーションズリーグで)自分はみんなに比べて試合に出ていないので元気です!」
秋本は明るい声を出し、ポーランド、ブラジル戦に向けても野心的だった。
「ポーランド戦やブラジル戦は、出られない時間が長くなると思います。ただ、短い時間であっても、試合に出たら今までやってきたことを出せるか。これからの自分のアピールにもなるし、自信を持ってプレーしたいなって思っています!」
18歳の宣戦布告だ。