バレーボールのネーションズリーグ2025第3週の日本ラウンドで、日本はフランスと戦い、セットカウント3-0(25-23、25-16、25-19)とストレートの勝利を収めている。日本は世界ランキング5位、フランスは同17位だけに、結果は順当と言えるか。
パリオリンピック後、日本女子バレーを双肩に担ってきた古賀紗理那が現役を引退した。率直に言って、人気面を含めてロスは大きかった。しかし、日本女子バレーは再び羽ばたこうとしていた―――。
その翼の名は、石川真佑だ。
フランス戦、1セット目の日本はサーブレシーブで崩され、ややもたついていた。21-22までは終始、劣勢だった。ただ、負ける気配は浮かんでいない。「出だしは少し硬くなってしまってよくなかったですけど、あまり焦ることなく修正できたと思います。追いつけるところで(追いつけず)、そこで焦ってミスが増えていたら、相手のペースになっていました。そうならずによかったかなって思います」
新しい代表でキャプテンを務めることになった石川は、落ち着いた声音で言っている。
フランス戦は、オールラウンダーである彼女の面目躍如だった。
パリオリンピックを現地で取材した当時の石川の姿には、よくも悪くもルーキーっぽさが見えた。すでに実績、実力十分だったが、古賀という絶対的エースがいるなか、どこかムラを感じさせた。爆発力を感じさせる一方、悪い流れに飲み込まれることがあるというのか。
グループリーグで、ポーランド、ブラジルという強豪には真価を発揮できなかった。大舞台で、力の差を見せつけられた。そして"事実上の敗退"が決まっていた最後のケニア戦の勝利後のことだった。
【パリ五輪を終えての誓い】
――広角に打ち分け、ブロックアウトも狙いどおり。本来の技巧的スパイクを取り戻したように見えましたが?
その質問に、石川はこう返していた。
「過去2戦(ポーランド、ブラジル)と、自分自身も出しきれていなかった部分あったので、そこも含めて、"ケニア戦では出しきろう"というのがありました。
彼女は凛と背筋を伸ばし、目を据えて答えていた。持て余す無念さを隠すようだった。
「パリオリンピックは3試合を終えて、相手もオリンピックにかける思いが強いな、と思いました。そこで自分たちが押されて、力を出しきれなくて。オリンピックにかける思いが、相手のほうが上回っていました。これから自分たちがどう改善するのか。自分自身、改善点がたくさんあるので、そこに目を向けてやっていきたいです」
当時の石川は、そう誓っていた。
あれから1年、彼女は見違えるほどに逞しくなった。イタリア、セリエA挑戦2年目のノヴァーラではCEVカップ(欧州カップ戦のひとつ)で優勝。決勝戦では、サービスエースやレシーブなど八面六臂の活躍だった。海外のクラブで勝利の立役者になる経験の積み重ねは、何ものにも替え難い。
そしてネーションズリーグで、彼女はキャプテンとして選手を牽引する姿を見せている。格が上がったと言えばいいだろうか。チームリーダーにふさわしい顔つきになった。
「(キャプテンは)日本での試合は(今回の代表では)初めてだったので、気持ち的にも違いましたけど......。カナダ、香港とこれまで8試合やってきたので、変に気持ちをつくらず、今までどおりできたかなって思います」
フランス戦後の石川は淡々と語っている。その胆力は頼もしい。
7月10日、韓国戦。石川はコートサイドから試合を見守っている。ネーションズリーグはファイナル進出の7位以内を確定し、世界ランク3位ポーランド、同2位ブラジル戦に向けての、いわば温存だった。ロングタオルを肩に羽織って仁王立ちになり、新キャプテンは盛んに声を出していた。
「(トスが短くなった時には)ボールの下に入って!」
代わりに出たルーキー、秋本美空には適時アドバイスも送っていたという。結果、一体になったチームは3-0でストレートの勝利を収めている。
「どの選手も攻めにいく気持ちを持ってプレーができているし、雰囲気はいいと思います。でも、苦しい状況があった時にどう立て直すか、その修正が大事で......。ポーランド戦、ブラジル戦は厳しい試合になるはずだし、うまくいかなかった時、次にどうやって攻めていくか。そこを考えながらやっていきたいです。ファイナル、世界バレー(選手権)につなげるためにも、どの試合の経験もプラスにできるように」
石川の視線は、先の風景を捉えていた。荒々しい「世界」の戦線に立ってきた彼女には、強い相手と戦う時のイメージがある。7月12日・ポーランド、13日・ブラジルとの対決は今後の試金石となるだろう。そして、パリオリンピックからの捲土重来でもある。