【第2週まで奮闘した選手たち】
男子バレーボール日本代表は、7月16日から千葉ポートアリーナで開催される国際大会「FIVBネーションズリーグ」に臨む。すでに同会場では、7月9日から女子日本代表が予選ラウンド第3週を戦い、ファイナルラウンド進出を決めている。男子もそれに続かんと、ファイナルラウンドの切符を掴み取ることが最初のターゲットになる。
ここまでの戦いぶりを振り返って印象的なのは、フレッシュな顔ぶれがコートに立ったこと。キャプテンの石川祐希(ペルージャ/イタリア)と髙橋藍(サントリーサンバーズ大阪)の両エースを筆頭に、リベロの山本智大(大阪ブルテオン)、ミドルブロッカーの小野寺太志(サントリーサンバーズ大阪)といった、ここ数年の主力メンバーたちが合流時期を遅らせ、2024-25クラブシーズン後の休養やコンディション調整に充てたためだ。
ただ、それは事前に想定されていたこと。6月5日のキックオフ会見でロラン・ティリ監督は「(予選ラウンド第1週の)中国大会では、パリ五輪から比べると60%近くのメンバー再編成があると思います」と語っており、同時に「そこで、新しく入る選手たちにプレー機会を与えるにはいいチャンス」と、その狙いを口にしていた。これは2028年のロサンゼルス五輪に向けた"オリンピックサイクル"の初年度だからこそ実現できている強化策のひとつでもある。
本大会では、パリ五輪で本登録から外れてリザーブ選手として帯同した富田将馬(大阪ブルテオン)がキャプテンマークをつけ、同じくパリ五輪出場が叶わなかったリベロの小川智大(サントリーサンバーズ大阪)も絶大なキャプテンシーを発揮。セッターの大宅真樹(日本製鉄堺ブレイザーズ)が司令塔に就き、ここ数年は頼れるバックアップを務めていたアウトサイドヒッターの大塚達宣(ミラノ/イタリア)やオポジットの宮浦健人(ウルフドッグス名古屋)らがレギュラーとして、クラブシーズンを通して磨いた力を還元した。さらに、パリ五輪前にそのポテンシャルを見出された若きエース、甲斐優斗(専修大学)も堂々と主力メンバーの一翼を担った。
そうして、チームは予選ラウンド第1週を3勝1敗で終える。3つの勝ち星はいずれもストレート勝ちと相手を圧倒する内容だった。続くブルガリアで行なわれた第2週では、メンバーこそ当時とは異なるものの、パリ五輪で金メダルを手にしたフランスをフルセットの末に撃破している。
一方で、世界ランキングで格下のブルガリアとウクライナには苦杯をなめた。
【ファイナルラウンド進出へ油断できない戦いが続く】
その後、チームは沖縄県豊見城市で合宿を実施。石川や髙橋、小野寺らが合流を果たした。石川はイタリアから帰国した際に、新鮮な顔ぶれが並ぶ日本代表の戦いぶりについて「もう少し苦戦すると思っていましたが、非常にいいバレーをしていますし、仲間として誇らしく感じていました」とコメント。それは代表に名を連ねる選手たちのレベルの高さを物語っている。
そこに、パリ五輪前にチームを世界ランキング2位まで押し上げたメンバーが加わるのだ。その戦いぶりは大いに注目される。
そんなトップレベルのメンバーたちが結集して再編成された日本は、この予選ラウンド第3週で、7月16日のドイツ戦を皮切りに計4試合を戦う。そのうちの3試合、ドイツと17日のアルゼンチン、最終20日のアメリカは、パリ五輪の予選ラウンドでも対戦した相手。振り返れば、パリ五輪ではドイツにフルセットで敗れたことで暗雲が立ちこめるも、アルゼンチンに勝ちきり、アメリカから1セットをもぎとったことで決勝トーナメント進出を決めた......とタフな戦いを強いられた。
それは、今回も同様だ。
【※】勝敗が同じの場合はセット率で上回るチームが上位になる。
しかも、18日に対戦するブラジルは現在7勝1敗で堂々のトーナメントリーダーに君臨している。パリ五輪をもって長年の功労者たちが代表を引退したが、それでもなお世界トップレベルのチーム力を維持しているのは、"バレーボール王国"と呼ばれるゆえんか。
今大会では新戦力を中心に戦っているパリ五輪銅メダルのアメリカも、現時点で13位と下位に沈んでいるとはいえ、組織的なバレーは健在。個々の能力は総じて高く、成績以上の強さを備えていると言える。
いずれにしても、どのチームも地力の高さは知られたところで、この第3週は熾烈な戦いとなることは間違いない。
今年から男子日本代表を指揮するティリ監督は、ロサンゼルス五輪で栄光をつかむためのマイルストーンとして「どの大会でも表彰台に立つこと」を掲げおり、これには石川も「常に表彰台に立つ、その経験値を積み重ねていきたい」とビジョンを同じくしている。
まずは、このネーションズリーグでもメダル獲得を。日本での応援を背に受けて、その挑戦権を獲得しにいく。