ケガから復帰の後村光星が好走し、中間層や下級生らも台頭 國學...の画像はこちら >>

後編:箱根駅伝初制覇へ向かう國學院大 中間報告

箱根駅伝初制覇に向け、レベルアップを図る國學院大。昨年度は駅伝シーズン2冠に輝きながらも、あとひとつ届かなった最大の目標に向かっている。

毎年夏前恒例の北海道での競技会は、國學院大が駅伝シーズンに弾みをつける重要な位置づけとなっているが、今年は前回の箱根ではケガで欠場した後村光星が好走を見せたのをはじめ、主力を支える中間層の台頭も見られた。

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【ケガからの復帰の後村と中間層がつかんだ手応え】

 ぐずついた天気だった前日のホクレンDC網走大会とは違って、7月20日の関東学生網走夏季記録挑戦競技会は晴天の下で開催された。

 競技開始時の気温は30度を超え依然として暑かったが、國學院大の選手たちが存在感を示した。

 まず5000mで奮闘したのが、ケガから復帰した後村光星(3年)だった。

 後村は、今年の箱根駅伝直前に右ふくらはぎの肉離れを起こし、3月には右脛骨の疲労骨折と、ケガが相次ぎ実戦からはしばらく離れていた。これが昨年10月の出雲市記録会以来9カ月ぶりのレースだった。

「結構緊張はしていましたが、やっと故障が治って、走れている幸せっていうか、陸上の楽しさっていうのを今感じています」と走れる喜びを噛み締めて臨んでいた。

「前期シーズンはずっと故障で走れていなかったので、今日のレースは記録を狙うというよりも、レース感覚を取り戻すという位置づけでした。6月の終わりぐらいから練習を再開して、急ピッチで仕上げたんですけど、そのなかでも自分の思った走りというのができました」

 結果は14分02秒08で3着。「最後は詰めの甘さが出て、ちょっと負けてしまったのが悔しいですけど」と言葉を続けたものの、ひとまずは実戦に復帰したことにホッとした表情を覗かせていた。

 チームにとっても後村の復活は大きい。

 後村は1年時の箱根駅伝で6区を担い、区間10位ながら59分台で走りきっており、今年の箱根駅伝でももちろん6区を任される予定だった。しかし、直前にケガをしてしまい欠場を余儀なくされた。

 前田康弘監督が思い描いていた区間構想は崩れ、國學院大は悲願の総合優勝を逃した。

「チームに申し訳ないことをして、迷惑をかけてしまったなという思いがありました。自分のなかで、陸上人生のなかで一番のどん底というか、そんな今まで感じたことない気持ちでした」

 決して忘れることのできない悔しさを味わわされたぶん、後村が今季にかける思いは強い。箱根駅伝では欠かすことのできないピースとなりそうだ。

 5000mでは、後村のほかにも、山倉良太(3年)が出場。自己ベストはならなかったが、14分06秒40で、後村に続き4着に入った。

 國學院大が中間層の充実ぶりを感じさせたのは、10000m全5組のうち、3組、4組のレースだった。3組では、北海道出身の鼻野木悠翔(2年)が独走で組1着となり、29分06秒84の自己ベストをマークした。ルーキーの野田顕臣も29分30秒41の6着で走りきった。

 この勢いを受けて、4組でも國學院大の選手たちが好走した。

「前の組で國學院勢が頑張ってくれたので、その分やる気が出た」と話す嘉数純平(4年)が、3組の鼻野木に続いて組1着となった。記録は「28分20秒切り」という目標には届かず、29分01秒41。

「全然ダメダメ」と決して納得のいくものではなかったが、充足感はあった。

「上半期最後のトラックレースだったので、監督からは『絶対に1着を取れ』と言われていました。そこは最低でも達成したかった。タイム的には全然ダメダメだったんですけど、このコンディションでトップを取れて、収穫はあった」と手応えを口にしていた。

 この組では2着に飯國新太(2年)が続き、29分05秒40でフィニッシュ。7着の田中登馬(4年)が29分16秒64、10着の髙石樹(1年)が29分23秒38、21着の尾熊迅斗(2年)が29分40秒09と、悪条件下でまずまずのタイムで走った。

【「"大将戦"がどうかが一番、駅伝につながってくる」】

 しかし、最終5組では課題を残した。

 他大学もエース級が出場したこの組。國學院大からは、エース格のひとり、辻原輝(3年)と、長い距離で定評がある高山豪起(4年)が登場した。

 3、4組の流れに乗って好記録を狙いたかったが、なかなか厳しい結果に終わった。

 ふたりとも序盤から留学生のすぐ後ろについて、積極的にレースを進めたが、4000mを前に高山が遅れをとった。一方の辻原は、5000mを14分16秒と4番手で通過したが、その後、先頭集団についていくことができなくなり、大きく遅れてしまった。

 結局、辻原は29分27秒67で23着。高山は29分45秒88で25着。暑さのなか序盤からの積極策が裏目に出たとはいえ、不本意な走りになった。

「(全体的には)存在感を見せてくれたかなとは思っているんですけど、結局、5組目の"大将戦"がどうかが一番、駅伝につながってくる。他大学さんも同じ条件でやっているので、各チームのエース選手が出ているなか、高山と辻原がこの走りだったら、なかなか厳しい。こういう条件下だからこそ、もう一段強さを磨いていかないと、優勝を掲げるところまではいけない」

 引率していた山口祥太コーチは、今回のレースをこう総括していた(※前田監督は、ワールドユニバーシティゲームズの日本代表コーチとしてドイツに向かっていたため不在だった)。

 エースたちには高いレベルの走りが求められていただけに、山口コーチの言葉は厳しかった。

 今年の網走での2戦は、悪条件であったことなどさまざまな要因はあるが、例年に比べると記録は低調だった。それでも、國學院大にとって重要な位置づけの大会であることに変わりはなかった。

「みんなそれぞれによかった部分もあれば、振り返るべきポイントもたくさんあると思う。いろんな課題を持って、夏に取り組めると思うので、『あの段階で経験できてよかった』とあとで言えるように、秋冬で結果をちゃんと出したいです」

 山口コーチがこんな言葉で締め括ったように、のちのち、あの網走がターニングポイントだったと言えるかどうか、注目である。

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