【大学駅伝】青学大が箱根駅伝3連覇へ着実に地固め 塩出翔太と...の画像はこちら >>

前回の箱根駅伝王者・青山学院大が今季も着実に力をつけ、秋へと向かっている。今年のホクレンD Cには黒田然ら2年生3名と三大駅伝での実績十分の塩出翔太(4年)がシーズン前半の締めくくりとして出場。

黒田や塩出の言葉からは、今季の青学大も駅伝シーズン、箱根駅伝3連覇に挑む準備が着々と進んでいる様子がうかがえた。

【折田壮太が5000mで好走】

 例年好記録が続出する陸上競技・中長距離のシリーズ戦、ホクレン・ディスタンスチャレンジ(ホクレンDC)には箱根駅伝を目指す関東の大学の選手も数多く出場している。もっとも申込記録やターゲットナンバー(出場できる人数の上限)が設定されているため、誰でも気軽に出場できる大会ではないが、前半戦の締めくくりとして臨む選手が多い。

 今年の箱根駅伝を制した青山学院大学からは、7月12日の第3戦・千歳大会に黒田然、折田壮太、安島莉玖の2年生3人が、7月19日の第5戦・網走大会には塩出翔太(4年)が出場した。

 例年ホクレンDCでは青学大の印象はそれほど濃くはないが、2023年や2021年には多くの青学大の選手が出場した年もあった。なかでも大きなインパクトを残したのは、2021年の士別大会の近藤幸太郎(現SGホールディングス)だろう。当時3年生だった近藤は、5000mで当時の青学大記録となる13分34秒88をマークし、チームのエースへと駆け上がっていった。

 今回ビッグパフォーマンスを見せたのは、千歳大会の5000mの最終組に登場した折田だった。このレースでは早大の山口智規(4年)が日本学生歴代7位(日本人学生歴代3位)となる13分16秒56の好記録をマークしたが、折田も序盤から積極的に先頭集団でレースを進めた。3200m過ぎに離れてしまったものの、そこからも粘って13分33秒61の好記録(自身3番目のタイム)で5着でフィニッシュした。

 折田は今季好調だったが、前の週の日本選手権では力を発揮できず、予選で敗退していた。それだけに、千歳では周囲の心配をも払拭する走りになった。

 なお、安島も折田と同じ組で走ったが、2週間前の男鹿駅伝の疲労もあったのか、14分32秒43と平凡なタイムで28着に終わっている。

【大学駅伝】青学大が箱根駅伝3連覇へ着実に地固め 塩出翔太と黒田然の言葉から見る今季の強さ
千歳大会5000mで積極的なレースを見せた折田 photo by Wada Satoshi

【初の箱根駅伝出走を目指す黒田然】

 タフな一面を見せたのが黒田だ。

 折田や安島の最終組は好条件下でのレースとなったが、黒田が割り振られた5000mC組は17時20分スタートで、時折強い風が吹くなかでのレースとなった。

 黒田もまた男鹿駅伝を走っており、このレースに調子を合わせてきたわけではなかった。

「男鹿駅伝を走って疲労が残るなかでのレースだったので、今できる全部を出し切れたらいいかなと思って臨みました。自己ベスト(13分55秒10)は出たらいいかなぐらいの感じでした」

 序盤は前方でレースを進め、3000mを前に先頭集団から離れてからも淡々とペースを刻んだ。終盤に順位を下げたものの、7着でフィニッシュした。

「13分55秒を切りたかったんですけど、ちょっと風が強くて......。このコンディションで14分1秒なら、まあいいか、っていう感じですね」

 まずまずといった手応えだったのだろう。記録は自己ベストには届かず14分01秒05だったが、納得の表情でこう振り返った。

 昨季の黒田は、全日本大学駅伝、箱根駅伝とエントリーメンバーに名前を連ねたが、ともに補員のまま出場が叶わなかった。今季は関東インカレの2部10000mで日本人トップの4位に入った安島に次いで5位入賞を果たし、10000mではチーム3番手の28分24秒38を持つ。安定感も出てきて、主力としての風格が備わってきた。

「今回の5000mの記録では、出雲駅伝(のメンバー入り)はかなり厳しい。

ここから夏合宿に入るので、ポイント練習などでしっかり強さを見せて、メンバー入りできたらいいなと思っています」

 黒田自身はこう話すが、当然、出雲や全日本もメンバー争いに絡んでくるだろう。そして、何より活躍が期待されるのが箱根駅伝だ。

 男鹿駅伝で青学大は1、2年生主体で臨みながらも、全7区間中6区間で区間賞を獲得し、2位の中大に4分以上の大差をつける圧勝で優勝を飾った。黒田は5区(7.5km)を担い、区間2位に30秒以上の大差をつけて区間賞を獲得した。

「本当にチームとして最高の結果でした。1、2年生のチームで、あれだけ走れたのはすごくよかったと思います。僕も、山上りの区間で、断トツで区間賞を取れたので満足しています」

 黒田が走った5区は、アップダウンが激しく、特に3km過ぎからは1km以上に渡って急激な上りが続く。黒田は見事にこの難コースを攻略してみせた。

「自分の強みを生かして、チームに貢献したいと思っているので、箱根駅伝では上りのある区間、2区、5区、8区あたりを狙って、ここから強化していきたいと思っています」

 過去3回、箱根5区を担った"若の神"こと若林宏樹が卒業した今季、ひょっとしたらその後継者に黒田が名乗りを上げるかもしれない。

 青学大は、今年の箱根駅伝優勝メンバーのうち半数以上の6人が卒業した。その穴を埋めるのは決して簡単ではないが、今年の箱根を走っていない折田、黒田然、安島らの成長は、今季のチームにとって大きなプラス材料となっている。

【2年連続箱根8区区間賞の塩出は「別の区間でもいい」】

 ホクレンDC網走大会では塩出が5000mに出場した。

「前期最後の自分のレースだったので、噴かせて終われたらなと思っていました」

 今季の塩出は5月の関東インカレでは2部ハーフマラソンで6位入賞し、6月には5000mで13分51秒38、10000mで28分55秒81と両種目で自己新記録を打ち立てるなど、好調をキープ。マルチな活躍を見せてきた。

 当然網走でも好記録が期待されたが、ここでは会心の走りとはならず、14分18秒17で組15着に終わった。

「天候にも恵まれず、ちょっと苦しいレースになりました」

 北海道らしからぬ蒸し暑さも大きな理由だったが、実は大会の数日前に体調を崩し、万全な状態で臨むことができなかった。

「ポイント練習(強度の高い重要な練習)も1回しかできていない状況だったので、出るか迷ったんですけど......。

 冬に向けて長い距離の練習にシフトしていくなかで、疲れが残って扁桃炎になってしまいました。練習に対して自分のコンディションの持っていき方がまだまだ全然できていない。まだまだ弱い」

 反省を口にする一方で、調子を合わせられなかったレースを前向きにも捉えていた。

「まだまだ学べることはありますし、伸びしろがあると思っています」

 こんな考え方ができるのも、青学大の選手の強さの秘訣なのだろう。

「出雲はつなぎ区間でもいいので走って、全日本と箱根はチームの優勝に貢献できるように主要区間を走りたいと思っています」

 駅伝シーズンでの活躍を誓う塩出。箱根駅伝ではこれまで2年連続で8区区間賞に輝いているが、最後の箱根で希望する区間は......。

「自分は別の区間でもいいかなと思っているんですけど、そこはもう戦略なので、(原晋)監督に任せようと思っています」と、チームが優勝するために献身的な姿勢を貫くつもりだ。

箱根路で堅実な走りを見せてきただけに、もちろん今季も3連覇のキーマンとなるだろう。

 また、塩出の言葉で驚かされたのは、まだトラックシーズンの真っただ中だったにもかかわらず、青学大がすでに長い距離の練習にシフトしているという点だ。

 青学大は駅伝、とりわけ箱根駅伝で力を発揮してきたチームだ。今季はトラックシーズンも勢いを感じさせたが、むしろ本領を発揮するのはこれから。着々と準備を進めているところだろう。今季も抜かりないチームに仕上がってきそうだ。

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