開幕戦でフラムをホームに招き、1-1で引き分けた三笘薫所属のブライトン。第2節ではエバートンと対戦する。

 昨季の8位のブライトンにとって昨季11位のフラム、13位のエバートンは、ホームでは勝利を、アウェーでは最悪、引き分けを狙いたい相手だ。となると、フラムにホーム戦で引き分けたという事実は、いいスタートを切れなかったことを意味する。

 プレミアリーグの移籍市場が閉じるのは9月2日(日本時間、以下同)だ。この先の選手の出入り次第で、見通しが変わる可能性があるとはいえ、フラム戦のブライトンを見る限り、今季、大きな飛躍を遂げるようには見えなかった。チャンピオンズリーグ圏内に飛び込みそうな勢いは感じられなかった。

 パッと見、戦力は大きく変わっていない。特にチェルシーに放出したFWジョアン・ペドロ(ブラジル代表)の代役を現状では獲得できていないことが大きい。攻撃的サッカーのチームが攻撃に迫力不足を招くことは根本が揺らぐことを意味する。

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 フラム戦では4-2-3-1を敷くブライトンの前方には次の4人が並んだ。三笘(左ウイング)、マット・オライリー(デンマーク代表/1トップ下)、ヤンクバ・ミンテ(ガンビア代表/右ウイング)、ジョルジニオ・ルター(元U-21フランス代表/1トップ)。

 このなかで序盤から最も精力的に動いていたのは右ウイングのミンテだ。対峙するフラムの左SB、カルビン・バッシー(ナイジェリア代表)と、1対1の攻防を展開した。

当初はミンテが優勢だったが、次第にバッシーにやり返されるようになる。となると今度はバランス的に左ウイングの出番になる。

 ところが三笘は前半6分、14分、23分と、対峙する相手の右SB、ケニー・テテ(オランダ代表)と1対1になっても仕掛けようとしなかった。失敗覚悟のミンテに対し、飄々と、淡々と、慎重にプレーした。悪く言えば消極的なプレーである。

 三笘を下支えする左SBには、ブライトンのスタメン11人のなかで唯一の新顔、クラブ・ブルージュから移籍してきたベルギー代表、マキシム・デ・カイパーが起用された。この左利きの左SBはよく攻め上がった。三笘を近距離でサポートした。すると三笘は相手のSBと1対1の状況が出来上がっているにもかかわらず勝負を避け、傍らのカイパーに戻すのだった。

【縦方向への意識に欠けていた】

 よく言えば、バランスを保とうとしたとなるが、その動きはウイングと言うより、中盤フラット型4-4-2のサイドハーフ的だった。"歌を忘れたカナリア"ではないが、アタッカーであることを忘れてしまったかのようなプレーだった。

 後半に入ると、1分、7分、18分と、三笘にパスが出るやカイパーはインナーラップを繰り返した。

大外に開いて構えるウイングの内側をSBに走り込むプレーといえば、2010年代にバイエルン&ドイツ代表で、フィリップ・ラームとトーマス・ミュラーが魅せた関係が走りとなる。

 このパス交換が決まり、SBがゴール近距離の深い位置からボールを折り返せば、その瞬間、得点への期待感が高まる。モダンなサイド攻撃ではあるが、判で押したように、このプレーを続けると決まるものも決まらなくなる。

 カイパーが内側を走ると、三笘は右足のアウトでパスを突くように送るのだが、縦への仕掛けが全くない状態でこのプレーに及べば、相手に読まれるのは当然だ。

 フラム戦の三笘は結局、83分に交代でピッチをあとにするまで、1度も縦勝負を敢行しなかった。慎重なプレーは昨季あたりから目につくようになっているが、トライせず縦勝負ゼロで終わった試合は記憶にない。

 この日、最大の見せ場となったのは後半21分のプレーだった。カウンターから1トップ、ラターのパスを受けた瞬間になる。場所はゴール正面。縦方向へのトラップが決まれば、次の瞬間シュートも打てそうな、決定的なチャンスを迎えそうなシーンである。

 三笘はそこでトラップミスをしてしまう。正確にはトラップミスと言うより、止める方向を間違えたという感じだ。

右足のアウトで内側に止めてしまった。左足のインサイドで縦に持ち出すように止めることができなかったのだ。左ウイングで繰り返してきたボールの止め方を、真ん中でつかんだ決定的なシーンでもやってしまった。縦方向への意識に欠けることを象徴する、アタッカーとして残念なプレーだった。

 三笘は左ウイング専門の選手だ。ミンテは左右ともにプレーできる。昨季までブライトンに所属したシモン・アディングラ(現サンダーランド、コートジボワール代表)や、この試合、ミンテと交代で右ウイングの位置に入ったフェルディ・カドゥオール(トルコ代表)も同様だ。そうした多機能性が三笘にはない。その分、スペシャリストとしての魅力を発揮する必要がある。さらに上のクラブを狙う上でも欠かせないテーマになるが、フラム戦では左ウイングらしさを発揮する機会がなかった。心配になるぐらいおとなしいプレーに終始した。

 そのプレーを独断で採点すれば10点満点で甘めにつけても5.5。

イエローカードを受けているので、5と言われても仕方がない。

 それはそのまま、24日22時に行なわれるエバートン戦の見どころになる。三笘は果敢さを取り戻すことができるか。

 エバートンの監督はデビッド・モイーズだ。けっして攻撃的な指揮官ではない。リーズに0-1で敗れた開幕戦でも、攻撃的な昇格チームを相手に、支配率で劣るサッカーを展開している。攻撃的なブライトンに対し、ホーム戦でありながら引いて構える可能性は高い。

「引いて守る相手はサイドから崩せ」というセオリーに従えば、ブライトンの攻撃は三笘のウイングプレーがカギになる。対峙するエバートンの右SBジェイク・オブライエンは197センチの長身だ。柔よく剛を制すではないが、ステップワークの細かいドリブルで、このアイルランド代表選手を混乱させることができるか。縦突破にどれほどトライし、何本抜ききることができるか。左足で決定的な折り返しを決めることができるか。

目を凝らしたい。

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