2年連続でクライマックスシリーズ(CS)に挑む日本ハム。昨年はCSファーストステージでロッテを下しながら、ファイナルステージでソフトバンクに3連敗を喫し敗退。

今季は伊藤大海、北山亘基、達孝太ら先発陣が揃い、リーグ屈指の投手力を誇る。はたして、今年はCSを突破し日本シリーズへと進出できるのか。OBである鶴岡慎也氏がその可能性について語る。

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【エース伊藤大海の起用法は?】

── 日本ハムは昨年もシーズン2位でCSに進出し、ファーストステージでロッテを下しましたが、ファイナルステージでソフトバンクに3連敗を喫しました。

鶴岡 昨年の日本ハムはロッテに18勝6敗1分と相性がよかったため、エースの伊藤大海投手を温存して、ソフトバンクとのファイナルステージ初戦に当てました。しかし、その初戦を落とし、ズルズルと3連敗してしまったわけです。

── 今年はCSファーストステージでオリックスと対戦しますが、初戦の投手は誰になりますか。

鶴岡 「ああしておけばよかった」という後悔がないように、正攻法で伊藤投手を初戦に持ってくると思います。今季、2位の日本ハムと3位のオリックスは9ゲーム差ありましたが、対戦成績は12勝12敗1分と五分です。チーム力は拮抗しています。どちらに勝利の女神が微笑むかわからないですし、日本ハムにとっては厳しい戦いになるのは間違いないです。

── 特にファーストステージは3試合制(2戦先勝)の超短期決戦です。

鶴岡 日本ハムは9月5日から京セラドームでオリックスに3連敗するなど、嫌なイメージが残っているかもしれません。

ただ、今回はホームのエスコンフィールドでできるのは、日本ハムにとっては大きな強みだと思います。

── 日本ハムのCSの先発陣はどうなりそうですか。

鶴岡 伊藤投手、北山投手、達投手、加藤貴之投手、福島蓮投手、そして高卒1年目の柴田獅子投手の6人で回すのではないでしょうか。

── 柴田投手ですか?

鶴岡 柴田投手は"将来性"というより、チームの"戦力"として考えています。山﨑福也投手と金村尚真投手は「第2先発」として、早い回からのリリーフも可能です。

【日本ハム打線のキーマンは?】

── 一方のオリックスの先発陣はいかがですか。

鶴岡 ファーストステージ初戦は山下舜平大投手と予想します。山下投手は10月5日のシーズン最終戦に調整登板をしています。つづいて、宮城大弥投手、九里亜蓮投手の順番になるのではないでしょうか。宮城投手も九里投手も日本ハムに対して相性がよく、いい勝負になると思います。

── オリックスは2021年からリーグ3連覇を達成しましたが、先発、リリーフとすばらしい投手陣を形成していたイメージがあります。

鶴岡 山本由伸投手がメジャーに移籍して、投手陣の顔ぶれは少し変わった印象がありますが、それでも力のある選手が揃っています。また野手陣も、頓宮裕真選手、杉本裕太郎選手をはじめ、経験者が残っています。

そういう意味でも、日本ハムにとっては手強い相手だと思います。

── オリックス打線でカギを握りそうな選手は誰でしょうか。

鶴岡 今シーズン開幕当初、1番に座って快打を連発した太田椋選手の印象が強いですね。パンチ力があるし、つなぎもバッティングもできる。それこそ2022年のヤクルトとの日本シリーズ第7戦で、史上初の「初回・初球・先頭打者本塁打」を放ってチームを勢いづけ、26年ぶり日本一の立役者となりました。太田選手は勝負強さもあり、日本ハムにとっては徹底マークしたい選手でしょうね。

── オリックスに不安があるとすれば?

鶴岡 リリーフ陣だと思います。ルイス・ペルドモやアンドレス・マチャドのリリーバーは、どうしても打てないというわけではありません。日本ハムとしては、いかにしてオリックス先発陣をマウンドから引きずり降ろせるか。そこがカギになりそうですね。

── 日本ハム打線のカギを握るのは。

鶴岡 本塁打、打点の二冠王を獲得したフランミル・レイエス選手です。

ただ、レイエス選手は間違いなくマークされるでしょうから、そのあとの打者が重要になってきます。そこで期待したいのが、郡司裕也選手です。一発もありますし、勝負強さもある。郡司選手が打つと、レイエス選手と勝負せざるを得なくなる。そういう状況をつくりたいですね。

── ほかにもいますか?

鶴岡 レイエス選手と郡司選手がポイントゲッターになるだけに、1番を打つ水谷瞬選手の出塁率も大事ですね。日本ハムとしては、上位でしっかり得点できるか。そこがポイントになりそうですね。

【ソフトバンクの強力投手陣にどう挑む?】

── シーズン1位のソフトバンクですが、今年はことごとく主力が離脱し、山川穂高選手が不振に陥りました。

鶴岡 その代わりに、野村勇選手、柳町達選手といった若手が台頭しました。また、ベテランの中村晃選手が一時は4番を務めるなど存在感を発揮し、プロ15年目の牧原大成選手が首位打者に輝きました。あらためてソフトバンクの選手層の厚さを見せつけられたシーズンでしたね。

── ソフトバンクの投手陣はいかがですか。

鶴岡 まず先発はリバン・モイネロ投手、有原航平投手、大関友久投手、上沢直之投手の4人が2ケタ勝利をマークするなど盤石でした。リリーフ陣は、ロベルト・オスナ投手とダーウィンゾン・ヘルナンデス投手が不振だったのですが、代わりにクローザーを務めた杉山一樹投手がセーブ王のタイトルに輝き、松本裕樹投手、藤井皓哉投手のセットアッパー陣もいい働きを見せました。

── 開幕直後は最下位に沈むこともありましたが、終わってみれば貯金35で連覇を達成しました。

鶴岡 新庄剛志監督の「83勝しても優勝できないのか」という言葉には、実感がこもっています。日本ハムはソフトバンクに対して12勝13敗とほぼ互角ですが、チーム防御率1位のソフトバンク投手陣を打ち崩すのは容易ではありません。

── 日本ハムは、どこに勝機を見出せばいいでしょうか。

鶴岡 昨年のCSで得た経験、そして今季のレギュラーシーズンでの戦いを通じて、若い選手たちが最も大きな成長を遂げたのは日本ハムだと思います。その経験値と勢いをCSで発揮してほしいですね。ソフトバンクと戦う前に、まずオリックスに勝たないといけないわけですが、ここでしっかり自分たちの野球をしたいところです。日本ハムとしては、相手の先発投手を打ち崩し、必勝パターンに持ち込ませないことが大事です。常にリードしている状態で試合を進めたい。

加えて、エース・伊藤投手の大車輪の活躍にも期待したいところです。

── 最後に、日本ハムが日本シリーズに進出する可能性は何パーセントですか。

鶴岡 う~ん......50パーセントとしておきましょうか。


鶴岡慎也(つるおか・しんや)/1981年4月11日、鹿児島県生まれ。樟南高校時代に2度甲子園出場。三菱重工横浜硬式野球クラブを経て、2002年ドラフト8巡目で日本ハムに入団。2005年に一軍入りを果たすと、その後、4度のリーグ優勝に貢献。2014年にFAでソフトバンクに移籍。2014、15年と連続日本一を達成。2017年オフに再取得したFAで日本ハムに復帰。2021年オフに日本ハムを退団し、現在は解説者として活躍中

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