ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――下半期の「牝馬最強決定戦」となるGIエリザベス女王杯(京都・芝2200m)が11月16日に行なわれます。現役時代、同レースで思い出に残っている一戦などはありますか。

大西直宏(以下、大西)自分自身、エリザベス女王杯に騎乗したことは一度もないのですが、まだ4歳(現3歳。※2001年度から国際化の一環として、数え年から満年齢に変更)牝馬限定で距離も2400mで行なわれていた時代に、思い出深いレースがあります。

 メジロラモーヌが勝って、中央競馬史上初の牝馬三冠を達成した時(1986年)です。ふたつ上の先輩で仲がよかった柏崎(正次)騎手が、同馬のキャリア前半に騎乗していたこともあって、強く印象に残っています。

――当時の「牝馬三冠」最終戦と言えば、秋華賞ではなく、エリザベス女王杯でしたね。メジロラモーヌについて、柏崎騎手と何かお話されたりしたのでしょうか。

大西 東京だったか、中山だったかは忘れてしまいましたが、競馬場から美浦へ帰るハイヤーに柏崎騎手と同乗させてもらったことがあったんです。その際、(柏崎騎手が)「あの馬、クラシック獲るんじゃない」といった話をされていました。

 その後、河内洋騎手に乗り替わりましたが、本当にメジロラモーヌは桜花賞とオークスを制覇。さらに、エリザベス女王杯も勝って三冠牝馬に輝きました。身近で懇意にしていた騎手が乗っていて、注目していた馬でしたから、今でもエリザベス女王杯と言うと、真っ先にあの馬のレースが思い浮かびます。

――さて、1996年に出走資格が変更になって(施行距離も2200mに変更)、現在は3歳以上の牝馬によって争われるエリザベス女王杯。

今年の出走メンバーをご覧になっての率直な印象を聞かせてください。

大西 GI2勝馬のレガレイラ(牝4歳)が実績的には1枚も2枚も上の存在と言えますね。この馬がいるのといないのとでは、レースのレベルも全然違ってきます。そういう意味では、"レガレイラvs他の15頭"と言っても過言ではない構図になっており、レガレイラの取捨が最大のポイントになるでしょう。

――大西さんは、今回のレガレイラをどう見ていますか。

大西 中山でのすばらしいパフォーマンスに比べて、ここまで他の競馬場では期待されたほどの走りが見られないのは確かです。ただこの秋初戦の前走、GⅡオールカマー(9月21日/中山・芝2200m)ではレース運びに進境がうかがえ、"大人の馬"へとひと皮むけた強さも感じられました。

 昨年のレースでは直線で馬群をスムーズにさばくことができず、悔しい5着。今回はその敗戦も糧にして、陣営は調整を工夫して対策を練って臨んでくるでしょう。それも含めて、今回の相手であれば、昨年の雪辱を晴らす可能性は高いと思っています。

――では、そのレガレイラをおびやかすような存在、"打倒レガレイラ"という視点において、面白そうな伏兵候補などはいますか。

大西 GI秋華賞(3着。

10月19日/京都・芝2000m)でも個人的に注目し期待していたパラディレーヌ(牝3歳)と、夏の北海道のGIIIクイーンS(8月3日/札幌・芝1800m)で2着、GⅡ札幌記念(8月17日/札幌・芝2000m)でも2着と好走し地力強化をアピールしたココナッツブラウン(牝5歳)。この2頭をレガレイラの相手候補として有力視しています。

 そしてもう1頭、気になる馬がいます。フェアエールング(牝5歳)です。同馬は侮れない力を秘めており、穴馬としてマークしたいと考えています。

【競馬予想】エリザベス女王杯で「打倒レガレイラ」を果たす馬は...の画像はこちら >>
――具体的に、フェアエールングのどういった点に魅力を感じているのでしょうか。

大西「マイネル軍団」のゴールドシップ産駒に多いのですが、この馬もキャリアを重ねつつ、じわじわと力をつけてきた叩き上げタイプ。昨秋から重賞戦線で差のない競馬を見せ続けてきて、特に牝馬限定重賞における安定感には目を見張るものがあります。

 前走のオールカマーではレガレイラを筆頭とした強敵相手に、3コーナー手前からまくっていって早め先頭に立つ積極的な競馬を披露。あわやの4着という結果を残しました。新しい戦法にも戸惑うことなく、しっかりと対応。同レースのメンバー構成、内容や結果を踏まえると、今回のエリザベス女王杯でも侮れない存在になる、という見立てです。

 悲願のGI制覇がかかる丹内祐次騎手へのエールも込みで、エリザベス女王杯の「ヒモ穴」には、このフェアエールングを指名したいと思います。

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