ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――今年の東京開催を締めくくる大一番、GIジャパンカップ(東京・芝2400m)が11月30日に行なわれます。大西さんは現役時代、第1回(1981年、ゴールドスペンサー5着)、第7回(1987年、サニースワロー10着)と2回騎乗されています。

大西直宏(以下、大西)ゴールドスペンサーに騎乗したときのことは、記念すべき第1回ということもあって、よく覚えています。

 まだデビュー2年目だったので、競馬全体の仕組みやレースの価値など完全に理解していない時期だったのですが、たまたま所属厩舎に地方から移籍してきたゴールドスペンサーが在籍していて、鞍上を任せてもらえたのはラッキーでした。

――実際のレースにおいて、印象深い出来事などはありましたか。

大西 レースに向けてはそこまで感触があったわけではないのですが、ゴールドスペンサーは終(しま)いの末脚が堅実なタイプ。同じ枠に生粋のスプリンター、サクラシンゲキがいたので、「流れは絶対速くなる。この馬に展開が向くかも」とは考えていました。

 結果は、当時のレコード決着で勝ち馬からコンマ5秒差の5着。日本馬最先着だったこともあって、レース後にスタンドの上のほうに連れていかれてインタビューを受けた記憶があります。

 それと、参加賞が豪華で、革のバッグに入った高価なカメラセット一式が関係者全員に贈られました。あれは、うれしかったですね。

――ジャパンカップ創成期の貴重なお話ですね。さて、今年のメンバーをご覧になっての印象を聞かせてください。

大西 まずは何より、久しぶりに「大物」と呼べる外国馬カランダガン(せん4歳)が参戦。日本の軽い芝への適性は未知数ですが、欧州の年度代表馬の来日ですから盛り上がりますよね。

 対する日本勢は、マスカレードボール(牡3歳)とクロワデュノール(牡3歳)という3歳世代の"2トップ"がエントリー。いろいろな角度から楽しめる好メンバーがそろったと言えるのではないでしょうか。

――現時点で大西さんが有力視している馬を教えてください。

大西 今年の3歳世代はかなりレベルが高いと思っています。なかでも、先にも触れたGI日本ダービー(6月1日/東京・芝2400m)でしのぎを削った1、2着馬、クロワデュノールとマスカレードボールは一枚上の存在と見ています。

 ただ、クロワデュノールはGI凱旋門賞(14着。10月5日/パリロンシャン・芝2400m)帰りで、出否の判断が今週まで持ち越される微妙な状態にありました。結局、最終追い切りを終えて(出走への)GOサインは出ましたが、この中間の調整過程を考えると「万全のデキではない」と見るのが妥当でしょう。

 となると、目下の充実ぶりと順調さからして中心視できるのは、マスカレードボール。東京コースも4戦3勝、2着1回。

唯一の負けがダービーの2着ですから、舞台適性の高さも魅力です。

 デビュー当初に見せていた粗削りな面も目立たなくなり、鞍上のクリストフ・ルメール騎手との初タッグとなった前走のGI天皇賞・秋(11月2日/東京・芝2000m)でも古馬相手に完勝。好相性の舞台ですから2400mの距離もまったく不安はありませんし、メンバー的に瞬発力勝負になりそうな展開も、この馬にはおあつらえ向きだと思います。

――では、そんなマスカレードボールを脅かすような馬、馬券的な妙味のある伏兵候補などはいますでしょうか。

大西 休み明けの前走・天皇賞・秋では7着に敗れましたが、勝ち馬とはコンマ4秒差と見どころのあるレースを見せたセイウンハーデス(牡6歳)が面白いのではないか、と思っています。

【競馬予想】ジャパンカップはマスカレードボールが有力も、超人...の画像はこちら >>
 天皇賞・秋では、前半1000m通過が62秒という超スローペースのなか、道中はいつもより後ろの位置からの競馬となりました。おかげで、最後は詰めてきたものの、能力を完全に出しきるまでには至りませんでした。

 不利な外枠(7枠12番)発走ということもあって、前半から競馬に参加できなかった印象でしたし、今回はそこからの巻き返しがあるのではないか、と見ています。

――ここ最近は2000m前後のレースを使われてきて、2400m戦は3歳時のダービー(2022年)以来です。その点で不安などはありませんか。

大西 その3歳時にはGI菊花賞(阪神・芝3000m)にも出走したくらいですから、道中の折り合いにはまったく問題のない馬。今回、目ぼしい先行馬はサンライズアースくらいでそこまで速いペースにはならないでしょうし、鞍上が流れを的確に読める津村明秀騎手というのは心強い限りです。

 屈腱炎による長期休養から復帰した3戦目の前々走、GⅢエプソムC(5月10日/東京・芝1800m)では鮮やかなレコード勝ち。うまくかみ合えば、相当なパフォーマンスを発揮できることは証明されています。

 今回はある程度前目の位置で運んで、いい脚を長く使える長所を存分に生かせるプランで臨んでくるはず。ということで、爆発力を秘める6歳馬セイウンハーデスの一発に期待して、同馬を今回の「ヒモ穴」に指名したいと思います。

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