蘇る名馬の真髄
連載第30回:ファインモーション

かつて日本の競馬界を席巻した競走馬をモチーフとした育成シミュレーションゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)。2021年のリリースと前後して、アニメ化や漫画連載もされるなど爆発的な人気を誇っている。

ここでは、そんな『ウマ娘』によって再び脚光を浴びている、往年の名馬たちをピックアップ。その活躍ぶりをあらためて紹介していきたい。第30回は、デビューからGⅠ2勝を含む6連勝で一気に牝馬の頂点に立った"才女"ファインモーションを取り上げる。

『ウマ娘』ではアイルランドからの留学生 無傷の6連勝でGI2...の画像はこちら >>
 アイルランドからやって来た留学生で、実は「ある国の王族の末裔」かもしれないキャラクター。それが『ウマ娘』のファインモーションだ。

 このウマ娘のモチーフとなった競走馬・ファインモーションは、サラブレッドの生産、所有を行なうオーナーブリーダーとして世界有数の規模を誇るクールモアグループ(アイルランド)の出身。また、彼女の血統を見ても、兄には世界中のGⅠを6勝したピルサドスキーがいる良血だった。こうした背景がウマ娘のキャラクターを作っているのだろう。

 ファインモーションはアイルランドで生まれて、クールモアの牧場で幼少期を過ごしていた。その時、のちにこの馬を管理する伊藤雄二元調教師の目に留まり、日本に連れてこられた。

 こうして日本でデビューしたファインモーションは、伊藤師の慧眼に違わぬ才能を見せた。いや、それ以上の強さを発揮していった、と言っても過言ではない。

 2001年12月のデビュー戦を4馬身差で圧勝すると、休養を挟んだあと、翌年夏の条件クラスを連勝。いずれも5馬身差の楽勝だった。続いて、重賞のGⅡローズS(阪神・芝2000m)に挑戦。同じ3歳世代のライバル牝馬を相手に3馬身差をつける余裕の勝利を決めた。

 次に挑んだのは、GⅠの舞台だった。3歳牝馬の三冠最終戦、GⅠ秋華賞(京都・芝2000m)である。

 ファインモーションは外国産馬のため、当時、春の二冠として行なわれる桜花賞とオークスへの出走権がなかった。それにより、同世代牝馬とGⅠで相対するのはこれが初めてだった。

 デビューから4連勝で勝ち進んできた"才女"は、この舞台でどんな走りを見せるのか。ファンは大いに沸いたが、彼女はそれらの期待に十二分に応える圧巻の強さを披露した。好位5番手を追走し、直線入口で悠々と先頭に立つと、後続に3馬身半差をつけてフィニッシュ。格の違いを見せつけるレースぶりで、難なくGIのタイトルを手にしたのだった。

 一体、どこまで連勝を重ねるのか。この馬に壁はないのか。周囲の期待がさらに高まるなか、5連勝中のヒロインは古馬牝馬との対戦に挑んだ。2002年11月のGⅠエリザベス女王杯(京都・芝2200m)である。

 歳上の強豪が相手となれば、これまでのようにはいかない可能性もある。そんな不安もあったが、それまでと同様、ファインモーションが強さを見せつけるだけの一戦になった。

 スタートから2、3番手につけた同馬は、リズムよくレースを進めていく。そして4コーナー、鞍上の武豊騎手が軽く仕掛けると、一気に加速。早々と先頭に立ち、瞬く間に後続を引き離した。

 ダイヤモンドビコーやレディパステルなど、古馬の強豪牝馬が後ろから追いかけるが、その差は詰まらない。軽く追っただけのレースぶりで、2馬身半差の完勝を決めた。

 驚くべきは、ファインモーションが記録した上がり3ハロンのタイムだ。

33秒2というその数字は、メンバー最速。2番手からこの上がりを繰り出されたら、後続馬にとっては成す術がない。まさしく異次元の強さだったと言える。

 こうして6連勝を決めたファインモーションは、次戦でGⅠ有馬記念(中山・芝2500m)を選択。3歳牝馬ながら1番人気に推されたが、さすがに歴戦の牡馬相手には及ばず、5着に終わった。

 初の黒星を喫したあとは、苦難のレースが続いた。気性の難しさが仇となり、レースではなかなか力を発揮できなくなったのである。

 それでも重賞をふたつ勝つなど、能力の高さを垣間見せるレースもあった。アイルランドからやって来た才女。その優雅な走りは、日本の競馬ファンの心に今も残っている。

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