昨年9月、フィリピンのマニラで行なわれた世界バレーボール選手権。バレーボール男子代表は失意のうちに大会を終えている。

日本はメダル候補に挙げられていたが、グループリーグでカナダ、トルコにストレート負け。リビアにはストレート勝利したものの、早々と敗退した。

「来年(2026年)は、強くなって帰ってきます!」

 大阪ブルテオンのエバデダン ラリー アイケー(25歳)は、グループリーグ最後のリビア戦後、そう努めて明るく言った。リビア戦ではクイックやブロックなどで11得点の髙橋藍に次ぐ10得点。ミドルブロッカーとして攻守を回し、どうにか溜飲を下げていた。

 2025-26シーズンのラリーはSVリーグを戦って、マニラで誓っていたように"強くなった姿"を見せている。ブルテオンのチャンピオンシップ制覇に貢献することで、約束を果たした。

 9月までの新たな日本代表のシーズンが始まる。6月10日に開幕するネーションズリーグで各地を転戦、そしてロサンゼルス五輪アジア予選を戦うのだ。彼がキーマンのひとりであることは間違いない―――。

【男子バレー】エバデダン ラリーが「日本を代表するミドル」へ...の画像はこちら >>
 ラリーはファンキーな髪型に似つかわしい、ダイナミックなプレーを持ち味としている。身長195cmは、ミドルとしては決して高い部類には入らない。
しかし、瞬発力、跳躍力は群を抜いて優れており、ブロックのポイントに入る速さや高さはワールドクラスだ。

 たとえば今シーズンのSVリーグ、チャンピオンシップファイナル3日目の勝負を決める3セット目、身長218cmのレギュラーシーズンMVPドミトリー・ムセルスキー(サントリーサンバーズ大阪)のスパイクをシャットアウトしたシーンは痛快だった。

「(ムセルスキーを止められたのは)戦術的にやり続けた結果ですね。ひたすら(ブロックに)つき続けて、ラインを締めながら。ついていく場面では感覚を信じてよかったです」

 ラリーはそう語ったが、クイックも速く高く打ち込んでいた。シーズンを通じてのアタック決定率はなんと57.7%。フランス代表のセッター、アントワーヌ・ブリザールとのコンビが冴えた。

【生まれついてのミドル?】

「決定率はブリザールの功績ですよ。クイックでの得点は90%近くがセッターのおかげ。ただ、セッターはまずミドルの動きを見るし、ミドルなくして攻撃は成り立たないので、セッターの右腕"ウエポン"としてやっていけたらいいですね」
 
 そう語るラリーが、ネット際でそびえ立つ姿は頼もしい。

 その受け答えからも伝わるように、手柄を誇るような厚かましさはいっさいない。生真面目で謙虚。慎ましく、むしろ前に出るのを嫌っているように映る。

取材エリアで話すのも、プロ選手としての義務感に駆られるのと、"声をかけてくれた人に誠意を尽くして接しよう"という人のよさからだろう。その点、"生き馬の目を抜く"プロの世界では優しすぎるようにも見えた。

「たぶん、自分の性格はバレーに合っていない。というか、スポーツに合っていません。思い描くアスリート像と自分の性格は違うんです」

 今年1月のインタビューで、ラリーは自身の本質に迫る言葉を口にしていた。

「たとえばチームメイトの西田(有志)さんやブリザールは闘志に溢れているじゃないですか? "この1本に集中する"という、でかい炎が燃え立っています。それに比べて僕の炎はちっちゃいし、燃え盛ることはない。アスリートとしては明るくないし、眩しくないです。でも、『だからこそ』と前向きにも捉えていて。僕はミドルブロッカーというポジションなので隠れていきたい。ブロックも、クイックも、いきなり現れて決める。"目立たなさ"を売りにしたいんです」

 ラリーは低いが、よく通る声で言った。

「自分はネガティブな性格」という言葉は予防線ではなく、本音だろう。そうやって人一倍、自分自身と向き合い、然るべき生きる道を見出しているのだ。

 言い換えれば、ラリーは「生まれついてのミドル」とも言えるかもしれない。ミドルというポジションは、おとりになるような地味な動きを何度でも繰り返すなど、縁の下の力持ちになる献身性が求められる。彼は目立つことを望まない。ほとんど生来的な実直さや犠牲精神の持ち主だ。

【「まずはやるべきことを精一杯...」】

 だからこそ、その時のインタビューの最後に彼が見せた強気は、彼が何者かに変わろうとしているサインだったかもしれない。

「これからは"日本バレーの顔"になるのは絶対条件だなって思っています。できなくても、それは口に出さないといけない。西田さんも『口にして責任感を持つのは大事』って言っていますよね。だから、自分もちゃんと言います。日本バレーのミドルの顔になります! (そんなこと)今、初めて言いました」

 彼はそう言って相好を崩していたが、世界でブレイクスルーするには奮起も必要だろう。

「目立たない」ことは、活躍しないことではない。一念発起したことで、ブルテオンをチャンピオンシップで王座に導き、すばらしい数字にもつながったのかもしれない。

 そんな仮説を立てて、チャンピオンシップを戦ったあとの彼に「話していた日本を代表するミドルになれそうですか?」と問いかけたが......。

「正直、毎日、毎試合、自信がない状態で入っています(笑)。もともとネガティブな性格なので、そこは変えないと......。ただ、他人と比べるのは好きじゃない。コンスタントにやった結果、その気持ちがまた生まれてきたらいいなって。普段はあまり考えず、こうやって話す機会があったときに(今の自分の位置を)確かめながら、まずは、そのときにやるべきことを精一杯できるように......」

 ラリーは真っ直ぐな思いを語っている。彼らしい信条だった。開幕するネーションズリーグでは、隠形(おんぎょう)の身ながら災難を祓い、代表チームを「必勝」に導くミドルになるはずだ。

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