F1第15戦アゼルバイジャンGPレビュー(後編)

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 フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は20周目、スロットルペダルを緩めてピットに戻り、自ら第15戦アゼルバイジャンGPの戦いに幕を下ろした。

 無線交信からもわかるとおり、パワーユニットに明確な問題が確認されていたわけではない。

ホンダの折原伸太郎トラックサイド・ゼネラルマネジャー兼チーフエンジニア(GM)は、レース後にこう説明した。

「データをすべてチェックしていますが、今のところエンジンに何も問題は見つかっていません。今後の残りのレースでも使用できると考えていますが、これからのメンテナンス作業のなかでさらに慎重に調査を進めていき、HRC Sakuraでもデータを詳しくチェックします」

【F1】アロンソの自主的リタイアに物申す ステアリングを投げ...の画像はこちら >>
 ランス・ストロールも、8周目にマシンを止めることになった。こちらは、冷却システムの異常による水圧の問題が原因だった。この週末を通して悩まされ続けたマイナートラブルだ。

「水漏れではなく、冷却系のシステムに異常がありました。今週末は何度か同じトラブルが出ていて、いろいろな部品を交換しながら改善しようとしたんですが、結局解決できず、レースでも同じトラブルが出てしまいました。今後はチームと協力しながら、トラブルの原因解析を進めていきたいと思っています」

 問題が起きたのは、パワーユニット本体ではなく、車体側の冷却システムだった。昨年まで組んでいたレッドブルやレーシングブルズでも、同様の事象はあった。物理的な水漏れではなく、センサーが異常値を拾ったり、ECUが計測値を基にエラーと判定したりするケースが時々あった。

 アストンマーティンの木曜の走り始めは、車体の挙動があまりに思わしくなかった。さらに、アロンソ車ではFP2中、特殊な条件下であるパーツにダメージが及び、オイル漏れの疑いが生じ、走行時間を失う場面もあった。

しかし、予選に向けてセットアップは大きく改善した。

 ところが、Q1最後のアタックでロックアップし、オーバーシュート。本来の実力を発揮しきれず、アロンソは予選19位、ストロールは21位に終わった。路面コンディションが急激に向上していたことを踏まえれば、前方のアウディ勢との実質的なギャップは、タイムに表れた0.794秒よりも小さかったはずだ。

 しかし、いずれにしても、2.2kmの超ロングストレートが存在するバクーで厳しい戦いを強いられることは、最初からわかっていた。

【ステアリングを投げ出してしまった】

 アロンソは、とかくパワーユニットだけを批判する。だがストロールは、車体もパワーユニットも、どちらもまだまだだと言いきる。

「マシンの状況は1年を通してずっと同じだ。パワーで負けていて、コーナーでも大きく足りていなくて、今日の予選でもポジティブな要素は特になかった。車体に関しても大きく後れを取っているし、ロックアップしまくりだし、マシンバランスも全然ダメで、あちこちで滑りまくっているし......今年はずっと、そういう状態だよ」

 苦戦することがわかりきっていたからこそ、この週末は2台ともに新規コンポーネントを投入した。オランダGPで投入した1基目と合わせ、2基のスペック2でシーズン後半戦を戦えるようにするためだ。この週末について、アロンソ自身も、リザルトを追い求めるのではなく、今後と来年に向けたテストセッションにすることが主目的だと語っていた。

 しかし、残念ながら、そうはならなかった。

彼はレースの途中で、ステアリングを投げ出してしまった。

 今シーズン中に、パワーユニットがこれ以上大きく進化することはない。それは、アロンソ自身もわかっていたはずだ。

 マシンに搭載されているのは、オランダGPで9位入賞した時と同じ仕様のパワーユニットだ。戦えるレースもあれば、イタリアGPや今回のアゼルバイジャンGPのように、まったく戦えないレースもある。

 ホンダも燃焼セッティングやエネルギーマネジメントで改善に注力しているとはいえ、それで得られるゲインは決して大きなものではない。できるのは、スペック2が持つポテンシャルを最大限に絞り出すことだけだ。

 車体も同様で、第11戦ハンガリーGPに投入した大型アップデート以降は、小規模の調整しか残されていない。今後は新造パーツの数も絞られ、既存パーツに補修を重ねていくことになるため、重量もかさんでいく。その重量増に備え、軽量化を進めるだけだ。

【どんなに競争力のないマシンでも】

 チーフトラックサイドオフィサー(CTO)のマイク・クラックはこう語る。

「エンリコ(・カルディーレ/チーフテクニカルオフィサー)が明言したように、今シーズンはもう大型アップデートの投入はない。

風洞で何か新しいアイディアが見つかれば小さな改善を投入する可能性はある。モンツァでフロアやバージボードなどに小さな変更を加えたようにね。こういった改善作業は今後も続けていくが、大きなアップデートパッケージの投入はないよ」

 ドライバーとしてフラストレーションを抱くことは、十分に理解できる。だが、目の前の結果に失望し、レースの途中でステアリングを投げ出すのであれば、最初から乗らなければよかったのではないか。

 どんなに競争力のないマシンでも、F1に乗って戦いたい。競争力を上げるために、1周でも多く走ってデータ収集に貢献したい──。そう考えるドライバーはいくらでもいる。

 もちろん、フェルナンド・アロンソがスペシャルな能力を持つドライバーであることは、誰もが認めるところだ。

 だからこそ、彼にしかできないドライビングでファンを魅了してほしい。彼にしかできないフィードバックとチームへの鼓舞によって、チームを成功へ導いてほしい。ファンが求めているのは、批判の矛先を誰かに向けることではない。勝利への執念と情熱、そして成功と感動だ。

 今いる場所が何位であろうと、2027年に目指す場所へ近づくために、全力を尽くす姿を見せてもらいたい。それがグレートドライバーというものだ。

米家峰起●取材・文 text by Mineoki Yoneya

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