9月28日、広島。森保一監督率いるサッカー日本代表は南米のベネズエラと戦い、結果はウルグアイ戦に続いて終盤に得点を奪い、2-1と逆転勝利を収めた。

サッカー日本代表のベネズエラ戦は前後半で何が違ったのか 上田...の画像はこちら >>
 しかし、この日は判定が物議を醸すことになった。

 主審は、ややベネズエラに対して厳しかった。たとえばアタッカーがポストワークのところで潰されても、ほとんどファウルを取っていない。それらは白に近いグレーだったが、終盤にGK鈴木彩艶が抜け出してきたベネズエラの選手と正面衝突したシーンは、「ペナルティ!」とスタンドのベネズエラ人記者は大声で叫んだように、危険度も高く、黒に近いグレーだった。

 とどめに、カウンターの攻め上がりから抜け出したベネズエラの選手がエリア内で日本人選手をかわしたところで足をかけられ、ようやくPKの笛が吹かれた。しかし、驚くべきことにVARでひっくり返った。それも「PKなし」ではなく、一連のプレーをさかのぼり、久保建英がベネズエラのエリア内で足を踏まれた場面にPKが与えられたのだ。

「(レアル・ソシエダのチームメイトであるジョン・)アランブルに『本当に踏まれたの?』と訊かれて、『踏まれたけど、微妙だよね』と返しました」

 久保本人がそう振り返っているように、これはグレーに近い黒だった。ベネズエラ陣営としては「これが取られるなら、日本のGKのアクションのほうがPKだ」という主張だった。

「Fuera!」(出ていけ!)

 ベネズエラ人記者は審判に向かって怒号を飛ばしていた。試合終了直後、スタジアムが勝利に熱狂する一方、ベネズエラの選手たちは審判団に詰め寄って一触即発。動画を検証すると、誤審ではないものの、判定が日本側に吉と出ていたのは確かだ。

 はたして森保ジャパンは勝利に値するチームだったのか?

 前半、森保ジャパンはまるで鎌田大地に丸投げしたような陣容だった。北中米ワールドカップのブラジル戦で先発した選手は鎌田のみ。控え組を試す形だったが、3、4人を入れ替えるならまだしも、実戦で組んでいない選手をごっそり送り込んでも無理がある。人材は試すべきだが、これではチームの継承でも何でもない。ビルドアップもままならず、むしろ相手にペースを奪われていた。

【「相手のラインを押し下げる必要があった」】

「余裕がないと動きすぎちゃうし、冷静にプレーができないんだと思います。そこは慣れだったり、経験だったり、これから上げていかないと......」(田中聡)

 時間が経つにつれ、日本は同じくウイングバックを用いる相手に対し、活路を見出す。日本がブラジルなどにやられたようなウイングバックの裏を狙うパスからのクロスで、何度かゴールには迫った。大外から相馬勇紀がクロスを入れるなど、反撃も仕掛けた。

「仕掛けのところは、何回か自分のよさは出せたと思います。FKや抜け出したところなど、2点くらいはチャンスがあったと思うんで、そこは仕留めきらないと......」(相馬)

 ただ、バックラインはなかなか相手のプレスを外せなかった。嵌められ、蹴らされ、回収される。

その繰り返しで押し込まれて、手詰まり感があった。打開するためには、たとえば前線でワントップの後藤啓介は、ボールを収めるか、うまくファウルを誘うか、あるいは駆け引きで裏を狙って相手のラインを下げるか、などといった工夫が必要だったはずだ。

「今日は前半を見ていて、"自陣のビルドアップのところでスペースがないな"と思っていました」

 上田綺世は、冷静にそう振り返っている。前半は"温存"されてベンチから見ていたが、ウルグアイ戦に続いてゴールを挙げ、この日は2得点を決めた上田の言葉は重みがあった。

「(前線は)相手のラインを押し下げることが必要で、スペースを作るとタケ(久保)と(伊東)純也くんが生きてくるかな、と意識してやりました。(後藤)啓介と僕は身長やサイズが違うんで、できることは違うし、同じことをするにもスタイルは違うと思っています。啓介は体の生かし方のところで、足が長いし、足もとの技術もあるし、今日のようにタフでずる賢い相手に対し、自分のスタイル、型をいろいろ試し、できるようになったらストレスなくできるはず。代表で求められるだけに、ワールドカップ前から彼もそこは課題で取り組んでいたはずで、自分もここ4年向き合ってきたことだから、共有し、手助けもできれば」

 メンツを変えすぎたことで、こうした何気ない違いが"漏電"のような不具合を引き起こしていた。

 そこで後半、森保監督は次々に主力をピッチに送り込んでいる。しかし立ち上がりは、人を多く替えたことによる混乱があったか。ウイングバックに抜擢されていた中野就斗が股抜きで突破を許し、入れ替わられてからのクロスを左足で叩き込まれた。その後は主力組の久保、上田、伊東純也の躍動で相手ラインを押し下げ、すぐに1点を返したが......。

 チームは持ち直したが、試合に入れていない選手もいた。たとえば後半からゴールマウスに立った鈴木彩艶はケガ明けもあったのだろうが、2024年のアジアカップを思い出させる不安定さだった。なんでもないクロスをファンブルし、正面のミドルシュートを取り損ね、こぼれ球への反応も鈍く"あわや失点"というシュートを許した。また、裏への縦パスに出遅れ、相手と交錯した場面はPK判定でもおかしくなかった。

 鈴木はプレミアリーグ、アストン・ヴィラに移籍し、名手ティボー・クルトワ(ベルギー代表、レアル・マドリード)のような超一流GKと同列に語られることがある。確かに一瞬の反応、キックの精度、パンチング力などは世界トップクラスだろう。しかし、キャッチの判断と精度は相変わらず不安要素で、率直に言って過大評価されている。

 そして、もし鈴木が準備できていない状況だったら、起用する必要はあったのかという疑問もある。試合途中でGKが出場し、流れに適応するのは簡単ではない。この交代のせいではないが、ケガをした渡辺剛がベンチに下がると、最後は10分間、ひとり少ない状態でプレーを余儀なくされた。

 北中米ワールドカップ後の森保ジャパンは、新たな船出で人材を入れ替えようとしている。その不安定さはGKに一番色濃く出ているかもしれない。

ウルグアイ戦でも早川友基が安定感に欠けるプレーを見せていた。

 最後にPKを決めきり、またも勝利の殊勲者になった上田は"勝って兜の緒を締めた"。

「結果はすばらしいですね。アジアカップに向けてもシビアな展開は予想されるし、90分で勝ちきることができてよかったです。ただ、ゲームのなかで完成度を高めていかないといけないし、全部が全部、いいわけではないですね」

 日本が勝利に値しなかったとは言わない。しかし、現状は「勝てば官軍」と言ったところか。主力選手が状況を冷静に把握しているのは救いだ。

 次戦は10月1日、横浜。南米の伏兵エクアドルとの対戦が待っている。

小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

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